成年後見の手続の流れ!審判で後見人になれる人は?確定までの期間と登記は?

すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申立てをすることになります。

成年後見の申立て手続きの流れは、大きく①申立ての準備と②申立て後の手続(家庭裁判所の審理と審判)に分けることができます。

この記事では、申立て後の手続(審判、後見等の開始、成年後見人等の選任、審判書の受領、審判の確定、後見登記)について解説します。

成年後見の申立て手続きの流れ

成年後見 審判 確定 後見人になれる人

  1. 後見等の開始
  2. 成年後見人等の選任
  3. 審判書の受領
  4. 審判の確定
  5. 後見登記

0.家庭裁判所の審判とは

家庭裁判所の審判とは、申立てがあった内容について、家庭裁判所が判断を(決定)をする手続です。

家庭裁判所は、成年後見の申立てがあると、必要な審理をした上で審判を行い、①後見等の開始の審判をするとともに、②成年後見人等を選任します。

保佐開始や補助開始の申立てについては、同意権や代理権についても審判で決められます。

1.後見等の開始

法定後見 後見 保佐 補助

後見等の開始(後見開始、保佐開始、補助開始)とは、判断能力が低下した本人の権利や財産の保護を法律上開始することです。

家庭裁判所は、審理の結果から本人が後見等の状態であると判断した場合には、後見等の開始(後見開始、保佐開始、補助開始)の審判をします。

後見等が開始した本人のことは、後見開始なら成年被後見人、保佐開始なら被保佐人、補助開始なら被補助人と呼びます。

申し立てた類型とは異なる類型になることもある

本人の判断能力は、申立人の意見だけでなく、医師の診断書、鑑定、親族の情報などによって慎重に判断されます。

家庭裁判所は、本人について後見開始の申立てがされていても、本人の判断能力が保佐や補助のレベルだと判断した場合には、後見ではなく保佐開始や補助開始の審判をします。

2.成年後見人等の選任

家庭裁判所は、後見等が開始された本人の権利や財産を保護するために、成年後見人等を選任します。

後見開始なら成年後見人、保佐開始なら保佐人、補助開始なら補助人を選任します。

成年後見人等になれる人となれない人

申立て時には、成年後見人等の候補者を選びますが、誰を成年後見人等に選任するかは、家庭裁判所が審理の結果を踏まえて判断します。

そのため、候補者ではなく、弁護士、司法書士、税理士、社会福祉士などの専門職に就いている人が選任されることもあります。

専門職が選任されると、事務に対して本人の財産から報酬を支払うことになります。

家庭裁判所が候補者以外を成年後見人等に選任するのは、①候補者に法律上の欠格事由がある場合と、②その他の問題がある場合のどちらかです。

候補者に法律上の欠格事由がある

法律上の欠格事由がある人は、成年後見人等になることができません。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所に解任された人
  • 破産者(復権していない人)
  • 本人に対して裁判をしたことがある人、その配偶者または直系親族
  • 行方不明の人

その他の問題がある

以下のいずれかに当てはまる場合、候補者以外が成年後見人等に選任される可能性があります。

  • 親族間に争いがある(候補者が他の親族と仲が悪いなど)
  • 本人の財産(流動資産)が多い
  • 本人の収支の変動が大きく、定期的に収支を確認する必要がある
  • 申立て時の情報のみでは、本人の財産が明らかでなく、調査が必要である
  • 申立て時に提出する財産目録や収支目録の記載から、候補者の財産管理能力に不安がある
  • 申立ての理由が重大な法律行為(生命保険金の受領、預貯金の解約、不動産の売買など)である
  • 本人と候補者との間で利益相反が生じる可能性がある(遺産分割協議など)
  • 本人と候補者との間に多額の金銭の貸し借りがある
  • 本人と候補者の家計が同一である
  • 本人と候補者が疎遠であった
  • 候補者が、本人の財産を、自分や親族のために使用することを希望している
  • 候補者が、本人の財産を投機的に運用したいと希望している
  • 候補者の健康状態が悪く、成年後見人等の職務遂行に不安がある
  • 候補者が多忙で、成年後見人等の職務遂行に不安がある
  • 候補者にはなっているが、実質は別の人が本人の財産管理等を行う予定がある

後見人になれる人

誰を成年後見人等に選任するかは、家庭裁判所が審理の結果を踏まえて判断することで、必ずなれる資格や条件はありません。

成年後見人等になれそうにないことを理由とする取下げ

家庭裁判所の審理の中で、担当する職員から、誰を成年後見人等に選任するかについての見通しを伝えられることがあります。

しかし、成年後見の申立ての取下げには、家庭裁判所の許可が必要になっているため、仮に候補者以外の人が選任される可能性が高いとしても、それを理由として申立てを取り下げることはできません。

取下げを希望することはできますが、家庭裁判所が認める可能性は高くはありません。

候補者以外が成年後見人等に選任された場合

候補者以外が成年後見人等に選任された場合、家庭裁判所の判断に不服を申し立てる方法はありません。

また、審判後に申立てをなかったことにすることもできません。

3.審判書の受領

審判の後、家庭裁判所から、審判の結果を記載した審判書の謄本が申立人と成年後見人等に送られてきます。

申立人と成年後見人等は、審判書を受領し、①本人について後見等の開始がされたこと、②成年後見人等に選任された人を確認します。

審判の結果に不服がある場合は、成年後見人等に審判書が届いてから2週間以内に、審判をした家庭裁判所に対して即時抗告(不服申立て)を行うことができます。

即時抗告ができるのは、審判の結果に不服がある本人、配偶者、4親等内の親族(申立人以外)です。

4.審判の確定

成年後見人等に審判書が届いてから2週間以内に即時抗告がされなかった場合、審判の法的な効力が確定します。

審判が確定した後は、即時抗告ができなくなり、成年後見人等としての仕事に本格的に取り組むことになります。

5.後見登記

後見登記とは、成年後見人等の権限(代理権や同意権など)を東京法務局(貢献登録課)のコンピュータに登記する制度です。

後見登記の手続は、審判の確定後、家庭裁判所が、東京法務局へ審判の内容を登記するよう依頼します。

登記にかかる費用は、申立て時に登記用の収入印紙を家庭裁判所に提出しているので、審判後に請求されることはありません。

東京法務局の登記が完了すると、成年後見人等は、東京法務局や地方法務局本局で、「登記事項証明書(成年後見人等に選任されたことの証明書)」を取得することができます。

審判から後見登記が完了するまでの期間

後見登記が完了し、登記事項証明書を請求できるようになるのは、審判書が成年後見人等に届いた後、1ヶ月前後経ってからです。

登記事項証明書が必要になる場面

登記事項証明書は、成年後見人等が成年被後見人等(本人)の代わりに法律行為を行う場合に、相手から提出を求められます。

例えば、以下のような場面では、手続や契約に必要な書類の一つとして登記事項証明書を提出することになります。

  • 預貯金の引出し
  • 不動産の売買・賃貸契約
  • 介護サービス提供契約
  • 施設入所契約

登記事項証明書の交付を請求する方法

東京法務局または地方法務局本局の窓口に申請書と添付資料を提出することによって請求します。

申請書は、東京法務局や地方法務局(本局または支局)の窓口でもらえる他、法務省のサイトからダウンロードすることもできます。

郵送で請求する場合は、申請書と添付資料を東京法務局あてに送ります。

登記事項証明書を請求できるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等です。

関連記事

成年後見制度とは?わかりやすい説明と図で解説

ピックアップ記事

  1. 認知症 離婚
    配偶者が認知症になると、介護負担、経済的困窮、夫婦関係の変化、老後の不安など様々な課題や問題が生じる…
  2. 認知症かなと思ったら,気づく,ポイント,チェック
    認知症を根治させる方法は見つかっていませんが、症状の進行を遅らせたり、日常生活の支障を和らげたりする…
  3. 障害者手帳 精神障害者保健福祉手帳 認知症
    認知症の人は、障害者手帳を取得することができます。 障害者手帳を取得していると、税金の控除・減免、…
  4. 認知症は、高齢者だけの病気ではなく、若いうちから発症することがあります。 65歳未満で発症した認知…
  5. 認知症カフェ
    認知症を発症すると、日常生活の様々な場面で支障が出て不安や焦りが募り、孤立しがちです。 また、認知…
  6. 新オレンジプラン 認知症施策推進総合戦略
    厚生労働省は、65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人が2012年時点で約462万人おり、20…
  7. 認知機能の減衰
    軽度認知障害(MCI)は、認知症予備軍やグレーゾーンと呼ばれる状態です。 放置すると症状が進行して…
  8. 認知症による物忘れと加齢による物忘れ
    認知症の主な症状の一つである記憶障害(物忘れ)は、加齢による物忘れと混同されやすいものです。 しか…
  9. 認知症の中核症状と周辺症状
    認知症の症状は、中核症状と周辺症状の2種類に分類されます。 認知症の中核症状と周辺症状は、起こる原…
  10. 認知症 基礎知識
    最近、認知症という名前はよく見聞きするようになりました。 しかし、認知症がどのような病気なのか、何…

特集記事

  1. 遺産分割 認知症

    認知症と遺産分割!相続人に認知症の人がいると成年後見人が必要?

    遺産分割は、亡くなった人(被相続人)の財産を相続人に移す法律行為であり、相続人には意思能力が備わって…
  2. 成年後見 申立て 審判 鑑定

    成年後見の手続の流れ!申立てから面接調査、鑑定、審判までの期間は?

    すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申…
  3. 成年後見 審判 確定 後見人になれる人

    成年後見の手続の流れ!審判で後見人になれる人は?確定までの期間と登記は?

    すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申…
  4. 成年後見登記制度 登記されていないことの証明書

    成年後見登記制度とは?登記事項証明書の申請と手数料は?登記されていない証明は?

    成年後見制度では、ある人が制度を利用しているかどうかについて、第三者が知ることができるよう登記の制度…
  5. 成年後見 申立て 申立人 申立費用 必要書類

    成年後見の申立て準備!申立人(申立権者)、申立費用、必要書類は?

    すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申…
  6. 成年後見人 報酬 基準 相場

    成年後見人の報酬付与申立ての方法は?申立書・事情説明書の書き方、基準、相場は?

    成年後見人等は、本人の権利や財産を守るため、療養監護や財産管理の事務を行った報酬を受け取ることができ…
  7. 後見人 仕事 いつまで

    成年後見人の仕事はいつまで?辞める場合の条件と手続は?解任もある?

    成年後見人等は、一旦選任されると、当初の目的を達成しても仕事を続けることになっており、仕事を終えるこ…
  8. 後見 保佐 補助 呼び方

    成年後見監督人とは?職務と報酬、選任手続は?

    本人の親族等が成年後見人等に選任された場合、家庭裁判所が成年後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人…
  9. 成年後見人 仕事

    成年後見人の仕事内容は?療養監護と財産管理、家庭裁判所への報告とは?

    成年後見制度では、本人の財産や権利を守るために、家庭裁判所が成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人…

Facebookページ

ページ上部へ戻る