認知症の診断基準と診断方法・テストは?何科を受診する?

認知症にはいくつもの原因やタイプがあり、タイプによって中核症状が異なります。

また、中核症状に本人の性格、生活環境、生活歴などが絡み合って生じる周辺症状や、日常生活への支障も一人ひとり差があります。

そのため、的確な診断を受け、必要に応じた治療や介護・ケアを受けることが重要になります。

しかし、認知症と診断されることを恐れたり、病識がなかったりして病院の受診を拒否する人も少なからずいます。

この記事では、認知症の診断を受ける意味、診断までの流れ、診断基準、診断方法、使用するテストについて解説します。

認知症の診断を受ける意味

認知症は、原因やタイプによって症状が異なり、症状によって必要な治療や介護・ケアを日常生活における注意点も異なります。

根治療法は見つかっていませんが、症状の進行を遅らせたり、症状を緩和したりする治療はたくさん開発されているため、診断を受けることで、認知症の症状による日常生活への支障を緩和し、本人が人間らしく生活できる期間をできるだけ長く保つための治療や介護・ケアを決め、実践することができます。

また、認知症の症状は、原因によっては治療で回復することもあります。

例えば、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などは、手術による治療で症状が回復する可能性があります。

認知症の診断までの流れ

認知症の診断までの流れは、以下のとおりです。

  1. 本人の症状や日常生活の様子を書きとめる
  2. 本人に受診を勧める
  3. 受診する病院を決める
  4. 受診・検査
  5. 診断

本人の症状や日常生活の様子を書きとめる

医師が的確に診断するには、本人の家族が、本人の症状や日常生活の様子をできるだけ詳しく、そして正しく伝えることが大切です。

しかし、全てを記憶しておいて口頭で伝えるのは無理があります。

そのため、「本人は認知症かもしれない。」と思い始めたら、以下のポイントを参考に、本人の症状や日常生活の様子をノートに書きとめるようにしましょう。

  • 症状が始まった時期(いつから)
  • 症状の内容(どのような)
  • 症状の頻度(どれくらい)
  • 日常生活への支障
  • 病歴と服薬歴

日記のように本人の毎日の様子を書きとめ、特徴的な症状や症状などに変化が見られた時期など、意思に伝えたいポイントをチェックしておくと分かりやすいです。

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本人に受診を勧める

認知症を発症した本人は、はっきりとした病識はなくても、以前はできたことができなくなった、周囲の人と話がかみ合わなくなったなどの変化を敏感に感じ取り、誰よりも強い不安や焦りを抱いています。

そのため、家族などから受診を勧められると、不安や焦りに耐え切れなくなったり、自尊心を大きく傷つけられたりして、受診を拒否することがあります。

旅行や外出を装って受診させる人もいますが、本人の気持ちを傷つけて関係が悪くなってしまい、その後の介護やケアに悪影響を及ぼします。

本人に受診を勧めるときの万能な方法はありませんが、本人の気持ちに寄り添い、できる限り本人が納得できるかたちで受診できるようにしてあげましょう。

必要であれば、地域包括支援センターなど第三者に介入してもらうこともできます。

受診する病院を決める

「認知症の診断は何科を受診すれば良いのか。」という質問をよく受けます。

認知症で受診するのは、精神科、心療内科、神経内科、脳外科などが一般的です。

また、「物忘れ外来」という専門の外来を開設している病院でも診てもらうことができます。

ただし、いきなりこれらの科を受診することに抵抗がある本人も多いので、まずはかかりつけ医へ相談するのが一般的です。

かかりつけ医が何科でも問題ありません。

かかりつけ医は、家族の次に本人の状態を把握しており、自ら認知症の検査や診断ができる場合は検査や診断をしてくれますし、専門外の場合は認知症の専門医を紹介してもらえます。

かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターなどに相談し、専門の病院を紹介してもらう方法があります。

セカンドオピニオンについて

セカンドオピニオンとは、医師の診断や治療が適切なものであるか否かを判断するために、複数の医師に意見を求めた場合の所見や診断のことです。

認知症の診断は、専門医でも難しいことが多く、誤診も少なくありません。

適切な治療や介護・ケアを受けるためには、セカンドオピニオンを受けることは大切です。

セカンドオピニオンは患者側の当然の権利であり、医師に遠慮する必要はありません。

当初の診断とセカンドオピニオンが異なる場合は、そのことを医師に伝えて説明を求め、必要に応じて治療や介護・ケアの方針を修正することもできます。

受診・検査

医師の問診、身体検査、脳検査、心理テストなどが行われます。

詳しい内容は、後の項目で詳しく解説します。

診断

医師は、家族からの聞き取りや本人の検査やテストの結果などを総合して診断を行います。

認知症と診断された場合は、その後の治療や介護・ケアの方針を話し合うことになります。

認知症ではなかった場合も、症状の原因や治療等について説明を受け、必要に応じて別の病院や専門機関を紹介してもらいます。

認知症の診断基準

認知症の診断基準は複数あり、日本においては以下の診断基準が使用されています。

  • DSM‐5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版/米国精神医学会)
  • ICD-10(国際疾病分類第10版/世界保健機関)
  • NIA‐AA(National Institute on Aging-Alzheimer s Association)

それぞれの診断基準の要約を確認しておきましょう。

DSM-5の診断基準

A. 1つ以上の認知領域(複雑性注意、遂行機能、学習及び記憶、言語、知覚、運動、社会的認知)において、以前の行為水準から有意な認知の低下があるという証拠が以下の内容に基づくものである。

 ⑴ 本人、本人をよく知る情報提供者、または臨床家による、有意な認知機能の低下があったという概念

 ⑵ 標準化された神経心理学検査、または、他の定量化された臨床的評価によって記録された、実質的な認知行為の障害

B. 毎日の活動において、認知欠損が自立を阻害する(請求書を支払う、内服薬を管理するなどの、複雑な手段的日常生活動作に援助を必要とするなど)

C. 認知欠損が、せん妄の状態でのみ起こるものではない

D. 認知欠損が、他の精神疾患によってうまく説明できない

ICD-10の診断基準

G1. 以下の項目を示す証拠がある

⑴ 記憶力の低下(新しい事業に関する著しい記憶力の減衰)

⑵ 認知能力の低下(判断と思考に関する低下や情報処理全般の悪化)

⑶ ⑴、⑵によって、日常生活活動や遂行能力に支障をきたす。

G2. 周囲に対する認識(意識混濁がないこと)が、基準G1.の症状をはっきりと証明するのに十分な期間保たれている(せん妄のエピソードが重なる場合は診断を保留)

G3. 以下の項目のうち1つ以上が認められる

⑴ 情報易変性

⑵ 易刺激性

⑶ 無感情

⑷ 社会的行動の粗雑化

G4. 基準G1.の症状が6ヶ月以上存在する

NIA-AAの診断基準

1. 仕事や日常活動に支障がある

2. 以前の水準に比べて遂行機能が低下する

3. せん妄や精神疾患によるものではない

4. 認知機能障害は、以下の組み合わせによって検出・診断される

 ⑴ 患者または情報提供者からの病歴

 ⑵ ベッドサイド精神機能評価または神経心理検査

5 認知機能または行動異常は、以下の項目のうち2領域異常を含んでいる

 ⑴ 新しい情報を獲得し、記憶にとどめておく能力の障害

 ⑵ 推論、複雑な仕事の取扱の障害や判断力の乏しさ

 ⑶ 視空間認知障害

 ⑷ 言語障害

 ⑸ 人格、行動またはふるまいの変化

認知症の診断方法

認知症の診断は、以下の検査やテストなどを行い、それらの結果を踏まえて行われます。

  • 医師による問診
  • 身体検査
  • 脳検査
  • 脳画像診断検査
  • 心理テスト(認知機能テスト)
  • その他

認知症の診断方法1:医師による問診

医師が本人と話をしながら、認知機能の低下について確認します。

また、家族など本人の状態を把握している人から話を聞き、具体的な症状や日常生活の支障などを確認します。

認知症の診断方法2:身体検査

  • 血液検査
  • 尿検査
  • 胸部X線検査
  • 心電図検査
  • 内分泌検査
  • 血清梅毒反応

認知症の診断方法3:脳検査

  • 脳波検査
  • 脳脊髄液検査
  • 神経学的検査(腱反射など)

認知症の診断方法4:脳画像診断検査

  • CT
  • MRI
  • SPECT
  • PET

脳の萎縮、脳梗塞、脳出血などの有無や程度を視覚的に確認します。

認知症の診断方法5:心理テスト(認知機能テスト)

  • 長谷川式認知症スケール(旧長谷川式簡易知能評価スケール)
  • ウェクスラー式知能検査
  • MMSE
  • アルツハイマーアセスメントスケール(日本版)

年月日、時間、物の名前や形の認識、計算、少し前に見たものの記憶など、認知機能を検査します。

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認知症の診断方法6:その他

必要に応じて遺伝子検査や病理検査を行うこともあります。

認知症の診断は、問診と検査結果の2つを総合して判断するものです。

問診のみ、検査のみでは診断できません。

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