市民後見人とは?なるには養成講座や資格が必要?役割と報酬は?

日本では、認知症などによって判断能力が低下した人(本人)を支援する制度として「成年後見制度(旧禁治産制度)」が整備されています。

基本的に、弁護士などの専門職や親族が後見人に選任されて本人を支援しますが、身寄りがなく財産もない高齢者などの場合には、市民後見人が選任されることがあります。

この記事では、市民後見人の概要、役割、市民後見人になる方法、養成講座、報酬、問題点について解説します。

市民後見人とは

市民後見人とは、親族以外の「一般市民」による後見人のことです。

市民後見人は、市区町村等が実施する市民後見人養成講座を受講するなどして、後見人として活動するために必要な知識や技術、姿勢を学習した人の中から、家庭裁判所が選任します。

市民後見人が選任されるのは、判断能力が低下した高齢者に親族後見人になってくれる身寄りがなく、専門職後見人を選任するだけの財産もないなど、専門職や親族に後見人になる人がいない場合です。

原則、後見制度を利用する高齢者と同じ地域に住む一般市民が選任され、市民感覚を活かした細やかな後見活動の実践とともに、地域における相互支援活動にも主体的に参画していくことが期待されています。

市民後見人の人数

市民後見人として家庭裁判所に選任された人数は、2011年度は92人だったところ、2012年は118人、2013年は167人、2014年は213人、2015年は224人と少しずつ増加しています。

しかし、2015年時点で、後見人全体に占める市民後見人の割合は約4%にとどまっています。

市民後見人の役割

市民後見人に期待される主な役割は、以下のとおりです。

  • 後見事務の新たな担い手となること
  • きめ細かい後見活動を行うこと
  • 身寄りがなく財産もない人の後見人となること

後見人の新たな担い手となること

高齢化が進むにつれて認知症高齢者は増え続け、それに伴って成年後見制度の利用者数も増加しています。

身寄りがない一人暮らしの高齢者や、親族と疎遠または支援を拒否された高齢者も増えており、専門職(第三者)後見人の需要が増えています。

また、今後は、高齢者の介護サービスの利用契約等を目的として後見制度が利用されるケースが増えるなど、制度の需要や用途が拡大していくと予想されています。

一方で、本人の財産の横領など不正が相次いだことを受けて親族が後見人に選任されにくくなり、親族がいても専門職が後見人に選任されるケースが多くなっています。

こうした状況下、増え続ける後見制度の需要に専門職の供給が追い付かないと予想されており、一般市民を活用した市民後見人に期待が集まっています。

きめ細かい後見活動を行うこと

専門職後見人は、報酬の発生する仕事として後見事務を行うため、身上監護面の対応が不十分になりがちな上、財産がなく報酬が見込めないケースを敬遠する傾向があります。

一方の市民後見人は、原則、本人と同じ地域に住んでいる一般市民が選任されます。

そのため、地域の社会資源を活用した後見活動が可能になりますし、同じ地域に暮らす市民として同じ目線に立ってきめ細かい身上監護を行い、信頼関係を築くことができます。

身寄りがなく財産もない人の後見人となること

市民後見人は、社会貢献に高い意欲を持つ人が相互支援活動として後見活動を行っており、報酬が見込めないケースでも対応することができます。

一方で、法律など専門知識が不十分な人も多く、遺産分割、不動産の売買、多額の財産の管理、複雑な収支の把握や整理など難しい事務が求められるケースで選任されることはほとんどありません。

また、必要に応じて成年後見センター、社会福祉協議会、弁護士などの専門職が支援したり、成年後見監督人が選任されたりするなど、不正や不適切な事務を予防するための対策が講じられています。

市民後見人になるには

市民後見人になるのに特別な資格は必要なく、家庭裁判所に選任されることで市民後見人となります。

ただし、後見人として適切に活動するには、市区町村が開催する市民後見人養成講座を受講するなどして、後見事務に関する知識、技術、姿勢などを身につけておく必要があります。

原則、無報酬の活動であるため、社会貢献に高い意欲を有していることが求められており、また、家庭裁判所から選任され、他人の代わりに契約を結んだり他人の財産を管理したりするため、倫理観や責任感も必要になります。

市民後見人の欠格事由

なお、以下の欠格事由に当てはまる場合は、市民後見人には選任されません。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人、補助人
  • 破産者
  • 被後見人に対して訴訟をし、またはした者及びその配偶者並びに直系親族
  • 行方のしれない者
  • 利益相反関係にある者(本人の入所施設の関係者など)

市民後見人が選任される可能性のあるケース

市民後見人が選任されるケースの主な特徴は、以下のとおりです。

  • 財産が少なく、負債もない
  • 自宅や施設など住む場所が確保されている
  • 日常生活に大きな支障がなく、基本的には見守りで足りる
  • 親族間に争いがない
  • 市民後見人以外にも本人を支援する人がいる

市民後見人養成講座

各地域の成年後見センター(地域によって名称は異なります。)などが市民後見人養成講座を開催しています。

細かい内容や期間は地域によって異なりますが、一般的な養成講座の流れは以下のとおりです。

  1. オリエンテーション
  2. 基礎講習(4~5日程度)
  3. 実務講習(8~10日程度)
  4. 施設実習・ヒアリング研修(2~4日程度)

各段階の講習が一定の期間を置いて実施されるため、全体では6ヶ月程度かかることが多くなっています。

養成講座終了後は、市民後見バンクに登録します。

その後、家庭裁判所から後見人等推薦依頼(後見人にふさわしい人を家庭裁判所に推薦するようにとの依頼)があり、家庭裁判所が後見人を決定します。

なお、市民後見バンクに登録した後も、フォローアップ研修や専門職への相談などが行われ、市民後見人としての技術や知識を保持し続けられるような仕組みが整備されてきています。

市民後見人の活動形態

市民後見人の活動形態は、個人で活動する場合と、法人で活動する場合に分類することができます。

個人で活動する

まず、住んでいる地域市区町村が開催する市民後見人養成講座(養成研修)を受講・修了して市民後見バンク(地域によって名称は異なります。)に登録します。

その後、登録者は、法人として後見人に選任された社会福祉法人などと労働契約などを交わし、後見支援員や生活支援員として後見事務に関わります。

つまり、家庭裁判所が法人を後見人に選任し、登録者はその法人と契約を交わして後見事務を行うということです。

一方で、市区町村が登録者を家庭裁判所に推薦し、家庭裁判所が登録者を後見人に選任することもあります。

ただし、その場合も市民後見人だけに任せきりになるのではなく、社会福祉協議会などが監督人に選任される、市民後見人と専門職が複数選任されて事務分掌される、市区町村の支援を得るなど、適切な後見事務が担保されるよう態勢が整えられます。

市区町村が親族に代わって後見制度の申し立てを行う「首長申立て」によって本人に後見が開始した場合に多い活動形態です。

法人で活動する

一般市民が設立した一般社団法人やNPO法人などを家庭裁判所が後見人に選任し、市民が後見活動を行う形態です。

法人の会員などになることで後見事務を行います。

市民後見人の仕事

後見人の仕事について見ていきましょう。

財産管理と身上監護

市民後見人の仕事は、通常の後見人と同じく財産管理と身上監護に関する法律行為です。

財産管理とは、本人の現金、預貯金、不動産などの管理、収入・支出の管理、確定申告や納税など税金の処理など本人の財産全般を適切に管理することです。

身上監護とは、本人の生活や状態に配慮しながら、医療、介護、施設入所に関する契約などの法律行為を行うことです。

勘違いされがちですが、市民後見人の仕事は「身上監護に関する法律行為」です。

本人の身の回りの世話、介護、家事を自らこなすのではなく、本人の生活に必要な介護や福祉のサービスについて行政機関やサービス提供事業者と契約を結ぶことなどが後見人の仕事です。

市民後見人の仕事内容の例

市民後見人の実際の仕事内容については、後見、保佐、補助の類型や本人の状態によって異なります。

一般的な仕事内容の例は、以下のとおりです。

  • 本人の財産の調査と財産目録の作成
  • 本人の日常生活における収支の調査と収支予定表の作成
  • 生活状況の把握と必要な介護・福祉サービスなどの利用契約締結
  • サービス内容について行政機関やサービス提供事業者との調整・対応
  • 後見事務の家庭裁判所への報告

なお、本人の意思によってのみなされる行為(結婚や養子縁組など)や、医療行為に関する承諾については権限がないので、注意してください。

後見人の仕事内容について詳しく知りたい場合は、関連記事を読んでください。

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成年後見人の仕事内容は?療養監護と財産管理、家庭裁判所への報告とは?

市民後見人の報酬

成年後見制度では、「家庭裁判所が、本人の財産などの事情を考慮して、本人の財産の中から相当額を後見人に与えることができる。」と定められており、後見人が報酬を得るには、家庭裁判所に報酬付与の審判を申し立てて、裁判所に報酬を支払う決定をしてもらう必要があります。

専門職後見人は、本人に一定以上の財産がある場合に選任されているため、一定期間ごとに報酬付与の審判を申し立てて、後見事務の内容に応じて報酬を受け取っています。

しかし、市民後年人が選任されるのは、本人の財産が少なく報酬を支払う余裕がないケースが多く、報酬付与の審判を申し立てたとしても、専門職後見人より金額が少ない、または、報酬付与が認められないことがあります。

また、市民後見人が個人で受任している場合、市民後見人の活動に報酬の支払いは行わない(報酬付与の申立ては行わない)運用をしている地域もあります。

市民後見人の仕事はいつまで続く?

市民後見人の仕事は、基本的に本人が亡くなるまで続きます。

本人が亡くなる以外で市民後見人の仕事が終了するのは、以下の事情がある場合です。

  1. 本人の判断能力の回復:本人の判断能力が回復し、本人に代わって財産や権利の保護を行う必要がなくなった場合(後見開始の審判の取消しの審判を申し立てる)
  2. 辞任:後見人自身の判断能力の低下、治療に長い期間を要する病気やケガ、遠方への転居など、後見事務を適切に行うことが困難になった場合(後見人辞任の審判を申し立てる)
  3. 解任:後見人に不正な行為、著しい不行跡、その他後見の任務に適さない事由がある場合(家庭裁判所が解任の手続きをする)

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