認知症による尿失禁・排尿障害とは?原因と対応は?

尿失禁(排尿障害)は、加齢による身体機能の低下や脳の障害など様々な原因で起こります。

認知症が原因として起こることもあり、認知症の周辺症状(BPSD)とされています。

この記事では、尿失禁(排尿障害)の概要と、認知症による尿失禁の原因と対応について解説します。

尿失禁(排尿障害)とは

尿失禁とは、本人の意思とは関係なく尿がもれてしまう症状です。

排尿障害の一つで、様々な原因によってトイレ以外の場所で排尿できなくなった状態を尿失禁と呼んでいます。

排尿障害には、尿がもれる「尿失禁」の他、尿が出にくい「排尿困難」、尿が出る回数が多い「頻尿」、排尿時に痛みを伴う「排尿時痛」などがあります。

いずれも、尿失禁と同じく、様々な原因によって症状が生じている状態を指す言葉です。

加齢に伴って排尿に関わる機能が低下し、尿失禁をはじめ尿に関する問題が起こるようになりますが、認知症を発症すると尿失禁が起こりやすくなると考えられています。

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尿失禁(排尿障害)の種類と原因

尿失禁は、原因によって4つの種類に分類されています。

  • 腹圧性尿失禁
  • 切迫性尿失禁
  • 溢流性尿失禁
  • 機能性尿失禁

認知症による尿失禁は「機能性尿失禁」ですが、それぞれの尿失禁についても見ておきましょう。

腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁とは、お腹に力が入った時に尿がもれる尿失禁です。

くしゃみや咳、ジャンプ、排便時のいきみ、重いものを持ち上げるなどしてお腹に力が入り、尿道括約筋など骨盤底の筋肉(骨盤底筋群)が緩むことによって起こります。

妊娠・出産がきっかけで始まることが多く、程度の差はあるものの日本人女性の約40%が腹圧性尿失禁を抱えていると言われています。

切迫性尿失禁

切迫性尿失禁とは、突然尿意をもよおして我慢できずに尿がもれる尿失禁です。

脳血管障害などにより排尿をうまく制御できなくなることが原因で起こることもありますが、多くの場合、これと言った原因なく暴行が収縮して強い尿意をもよおし、失禁してしまいます。

女性の場合は子宮脱や膀胱瘤、男性の場合は前立腺肥大症が原因で切迫性尿失禁が起こることもあります。

溢流性尿失禁

溢流性尿失禁とは、自分の意思ではうまく排尿できない一方で、少量ずつ尿が溢れ出る尿失禁です。

前立腺肥大症や膀胱周囲の神経の機能低下(子宮がん手術後など)によって起こります。

機能性尿失禁

機能性尿失禁とは、排尿機能に異常がないにも関わらず、身体機能の低下などが原因で起こる尿失禁です。

例えば、場所の見当識障害によってトイレの場所が分からなくなり、探しているうちに我慢できずに尿がもれてしまうことがあります。

また、歩行障害によって、尿意を感じてもトイレに辿り着けず失禁してしまうのも機能性尿失禁です。

排尿機能には異常がないため、生活環境のバリアフリー化や介護によって対応する必要があります。

認知症による機能性尿失禁

機能性尿失禁は、日常生活動作(ADL)の低下によるものと、認知症の中核症状によるものに分類することができます。

日常生活動作(ADL)の低下による尿失禁

日常生活動作(ADL)とは、食事、入浴、排泄、着替え、移動など、日常生活を送る上で必要な基本的行動のことです。

英語では「activities of daily living」と表記され、頭文字を並べてADLと呼ばれています。

例えば、歩行が困難またはゆっくりになり、尿意を感じてからトイレに辿り着くまでに時間がかかり、我慢できず失禁してしまうことがあります。

認知症の中核症状による尿失禁

認知症の中核症状とは、脳の神経細胞が壊れることにより、ほとんどの認知症高齢者に見られる症状のことです。

認知症の中核症状には、記憶障害、見当識障害、理解力や判断力の障害、失語・失行・失認識などがあり、時間の経過とともに症状が進行していきます。

例えば、トイレに行きたいことを周囲の人に伝えられない、トイレの場所や使い方が分からなくなる(見当識障害)、尿意を感じてトイレに行こうとしたことを忘れてしまう、尿意を認識することが出来ない、排尿をどこですべきか分からなくなるなどにより、尿失禁が起こります。

その他の機能性尿失禁

施設入所やデイサービスの利用開始など自宅以外の場所で過ごすようになった当初は、トイレの場所が分からず尿失禁することがあります。

また、環境の変化に伴う不安や緊張、自宅のリフォーム、夜間の無灯火状態などが原因で尿失禁するケースも少なくありません。

認知症による機能性尿失禁の対応

認知症による機能性尿失禁については、尿失禁が起こる原因を特定した上で対応する必要があります。

  • トイレまでの動線を整備する
  • トイレの表示を分かりやすくする
  • トイレ内の環境を整える
  • 決まった時間にトイレに行く習慣をつける
  • 夜間は照明をつけておく
  • 脱ぎやすいズボンを履かせる
  • 本人の尿意に気づく

いずれの対応でも、本人が自力でできることはできる限り自力でしてもらい、助けを求められたり、危険があったりした場合に手を貸すようにしましょう。

また、本人にとって、尿をもらすことは恥ずかしいことです。

本人が尿失禁してしまっても怒ったりため息をついたりせず、明るく話しかけながら後始末をしてあげましょう。

尿失禁の対応:トイレまでの動線を整備する

トイレまでの動線が分かりにくいと、辿り着くまでに失禁してしまうことがあります。

本人が普段過ごす場所からトイレまでの廊下に線を引く、行く手を阻む物を取り除く、手すり設置するなど、トイレに辿り着きやすくする工夫をしてみましょう。

尿失禁の対応:トイレの表示を分かりやすくする

見当識障害によってトイレの場所が分からなくなる、、トイレまでたどり着いてもトイレだと認識できなくなるなどした場合は、トイレだと一目で分かるような目印をつけておく方法が有効です。

例えば、トイレのドアに「トイレ」と大きく朱書きしたり、便器やトイレットペーパーの写真を貼り付けたりしておく方法があります。

尿失禁の対応:トイレ内の環境を整える

トイレまでたどり着いても、すぐ排尿できる環境が整っていないと、便器外で失禁してしまうことがあります。

照明をつけておく、便座をあげておく、トイレ内に手すりを設置するなど、トイレに入ればすぐ排尿できる環境を整えておきましょう。

尿失禁の対応:決まった時間にトイレに行く習慣をつける

「尿意をもよおしているか否かに関わらず、毎日、何時になったらトイレに行く。」と決めておく方法も尿失禁対策として効果を発揮します。

本人が尿意を感じてもトイレに行きたいと意思表示できない、尿意を感じない、排尿の仕方が分からないなどの場合には、トイレに行く習慣をつけておき、介護する人が付き添ってあげることで尿失禁の回数を抑えることが出来ます。

朝起きた後、昼食後、寝る前など、本人の生活習慣に合わせてトイレに行く習慣をつけておきましょう。

尿失禁の対応:夜間は照明をつけておく

暗いとトイレの場所やトイレまでの距離が把握しづらいため、本人が過ごす場所からトイレまで続く廊下の証明は、夜間でもつけたままにしておきましょう。

尿失禁の対応:脱ぎやすいズボンを履かせる

トイレまで辿り着いても、ズボンを脱ぐのに手間取って失禁してしまうことがあるため、本人の能力でも無理なく脱ぐことができるズボンを履かせておくことも大切です。

尿失禁の対応:本人の尿意に気づく

認知症の症状が進むと、トイレに行きたくても周囲にうまく伝えることが困難になりますが、尿意をもよおした時に何らかの兆しは見せることが多いものです。

本人の様子をこまめに確認し、尿意をもよおした兆しを見つけたら、トイレに連れて行ってあげましょう。

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