せん妄とは?原因、症状、対応は?せん妄と認知症の違いは?

せん妄は、認知症と混同されやすい障害です。

認知症と似た症状が多く、また、認知症の症状との一つとして起こることもあります。

この記事では、せん妄の概要(せん妄と認知症の違い、種類)、原因、症状、対応について解説します。

せん妄とは

せん妄とは、何らかの原因で意識障害が起こり、様々な精神症状が出る状態です。

錯覚、幻覚、妄想などの精神症状に伴って暴言暴力、異常な行動、意味不明な発話、見当識障害、興奮などが見られます。

認知症と似た症状が多く、認知症と混同されやすいものです。

せん妄の特徴

せん妄は、意識障害が見られることが大きな特徴です。

また、症状が突然かつ急激に現れるため、発症時期を「いつから、いつまで」と特定することが容易です。

日中は落ち着いているのに夕方以降に症状が悪化するなど症状の日内変動が大きいことや、数時間から数週間程度と比較的短時間で症状が治まることもせん妄の特徴です。

せん妄と認知症の違い

せん妄と認知症の違いは、5つあります。

  • 意識障害:せん妄は意識障害があるが、認知症は意識がはっきりしている
  • 発症時期:せん妄は特定しやすいが、認知症は特定が困難
  • 症状の変化:せん妄は変化が急激だが、認知症は緩やか
  • 症状の継続期間:せん妄は一過性だが、認知症は一度発症すると基本的にはなくならない
  • 症状の日内変動:せん妄は激しいが、認知症は緩やか

せん妄と認知症では、意識障害の有無、発症時期が特定できるかどうか、症状の変化・期間・日内変動に違いがあり、比較的簡単に見分けることができます。

ただし、認知症の人がせん妄を発症することもあり、その場合は、一時的に認知症が悪化したように見えますが、せん妄の症状は短期間のうちに治まり、認知症の症状だけが緩やかに進行を続けます。

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せん妄の症状

せん妄の主な症状は、以下のとおりです。

  • 睡眠障害
  • 幻覚・妄想
  • 見当識障害・記憶障害
  • 情動・気分の障害
  • 神経症状(不随意運動など)

せん妄の症状:睡眠障害

不眠や昼夜逆転など生活リズムの乱れが見られます。

また、起きている時は寝ぼけた状態でボーっとしていることが多い一方で、寝ている時は落ち着きがなく動き回ります。

せん妄の症状:幻覚・妄想

幻覚とは、現実には存在しない刺激を五感で知覚することです。

せん妄の症状としての幻覚は、存在しない人、虫、動物などが見える幻視が多くなっています。

妄想とは、訂正することが困難な誤った信念や思い込みのことです。

せん妄の症状:見当識障害・記憶障害

時間・場所・人との関係が正しく認識できなくなる見当識障害や、最近のことを記銘する(覚える)ことができなくなる記憶障害が起こります。

せん妄の症状:気分・情動の障害

興奮、錯乱、イライラ、落ち着きが無くなる、攻撃性の高まり、活動性の異常な高まり、不安、眠気、活動性の異常な低下など、気分や情動にも様々な症状が現れます。

せん妄の症状:神経症状(不随意運動など)

アルコール性のせん妄の場合、手の震えなどの不随意運動が見られることがあります。

せん妄の症状の3分類

せん妄の症状は、過活動型、低活動型、混合型の3つに分けられることもあります。

せん妄の症状:過活動型

  • 興奮して落ち着きが無くなる
  • 感情的になって大声を出したり暴れたりする
  • 幻覚(幻視:存在しないものが見える)
  • 妄想(根拠のない思い込み)に基づく会話
  • 声が極端に大きくなる
  • 睡眠障害(不眠)
  • 生活リズムの乱れ

普段と比べて異常に活動的になり、大声を出す、暴れるなど問題行動を起こすタイプです。

せん妄の症状:低活動型

  • 発話が乏しくなる
  • 反応が薄くなる
  • 無気力・無表情
  • 食欲がなくなる
  • すぐに寝る
  • 見当識障害

普段よりも目に見えて発話や行動が少なくなり、周囲への興味関心や周囲の働きかけに対する反応も乏しくなるなど、精神的な混乱は生じているものの問題行動は少ないタイプです。

時間や場所の見当識障害が見られることもありますが、全体的に言動が少なくなるため見過ごされやすいものです。

せん妄の症状:混合型

過活動状態と低活動状態が行ったり来たりするタイプです。

せん妄の原因

せん妄の主な原因は、以下のとおりです。

  • 病気
  • 加齢
  • 生活リズムの乱れ
  • 環境の変化

せん妄の原因:病気

せん妄は、認知症をはじめとする病気が原因で発症します。

せん妄の原因となる病気としては、脳血管障害、脳腫瘍、脳炎など脳の病気、心不全、肝不全、腎不全など臓器の病気、がん、呼吸器の病気、甲状腺疾患、糖尿病、パーキンソン病などを挙げることができます。

また、インフルエンザ、ビタミンB12欠乏症、尿路感染症などもせん妄の原因となることがあります。

せん妄の原因:加齢

年齢を重ねるにつれて、ちょっとした体調不良でもせん妄の症状が出るリスクが高まります。

例えば、脱水、栄養不良、便秘、睡眠不足、強いストレス、合っていない補助器具の使用でもせん妄が出ることがあります。

せん妄の原因:生活リズムの乱れ

高齢になると、生活リズムの乱れが原因でせん妄の症状が出ることがあります。

病気や明らかな体調不良が見られないにも関わらずせん妄が出た場合、生活リズムの乱れや環境の変化などを疑います。

せん妄の原因:環境の変化

リフォーム、部屋の模様替え、施設入所、ヘルパーの出入り、家族構成の変化などの環境の変化がせん妄の原因となることもあります。

また、ケガや病気などが原因で入院や手術をした場合もせん妄が出るリスクが高くなります。

特に、病院内の人の気配、雑音、証明、ICUの環境(外界からの情報が遮断され、機械音が響く環境)、手術で使用する薬、手術痕の痛み、将来に対する不安などがせん妄の原因となることがあります。

せん妄の現認:薬

薬の副作用によってせん妄が出ることがあります。

せん妄が出る可能性がある薬としては、抗うつ剤、向精神薬、鎮静剤、睡眠補助薬、抗コリン作用のある薬、パーキンソン病用薬(レボドパ)などを挙げることができます。

また、長期間にわたって飲んでいた薬を中断することもせん妄の原因となります。

せん妄と認知症の違い

時間や場所の見当識障害、幻覚、妄想、暴言や暴力などの症状が認知症と似ていることから、「せん妄=認知症」と思われることがありますが、せん妄と認知症は同じではありません。

ただし、認知症の症状の一つとしてせん妄症状が出ることがあり、また、認知症とせん妄を併発することもあります。

せん妄と認知症の違いは、以下のとおりです。

せん妄の診断

せん妄の診断は、問診、家族などからの情報収集、診察、検査の結果を総合して行われます。

せん妄の診断:問診・家族などからの情報収集

せん妄状態の本人は、医師の質問に適切な答えを返すことが難しいため、家族などが発症時期、症状の進行・変化、健康状態、既往歴、服薬歴などを説明します。

また、過去の診療記録や関係機関からの情報などを参考にしながら、本人の状態を確認します。

せん妄の診断:診察・検査

診察により、せん妄の原因となる病気や体調不良の有無を確認します。

また、MRI・CT・脳脊髄液検査(脳・脊髄・神経疾患の有無を調べる)、血液検査、心電図検査、レントゲン検査、尿検査などが行われます。

理解力・記憶力、計算力、文章を書く、図形を書き写す、空間認知などのテストを行い、本人の記憶力、判断力、見当識を検査します。

せん妄の診断基準

せん妄の診断基準は複数ありますが、日本ではアメリカ精神医学会の精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)が使用されることが多くなっています。

DSM-5の診断基準は、以下のとおりです。

  • A:注意の集中や維持に障害があり、意識に障害がある
  • B:短期間(障害は数時間から数日間)で発症して、1日を通して重症度が変動する傾向がある
  • C:認知(記憶・見当識・言語・視空間能力など)の障害がある
  • D:AとCの障害は、認知症ではしっかりと説明できない
  • E:身体疾患、アルコールや薬物といった物質中毒や離脱など、ひとつまたは複数の直接的な生理学的結果により引き起こされたという証拠がある

せん妄の治療

せん妄の治療では、薬物療法によってせん妄の原因を治療し、本人が落ち着いて過ごせる環境を整えます。

例えば、脱水が原因なら水分と電解質、感染症が原因なら抗生剤により治療を行います。

本人が落ち着くことができるよう、家族、医師、看護士などが状況を説明するとともに、室内を明るくするなど本人が安心できる空間づくりにも配慮します。

せん妄の対応

せん妄が出ている本人への対応は、以下のとおりです。

  • 病院を受診させる
  • 様子を見守る
  • 優しく声をかける
  • 規則正しい生活リズムを維持させる
  • 生活環境を維持する

病院を受診させる

せん妄の症状が見られたら、すぐ病院を受診させて医師に診てもらいましょう。

症状の日内変動が激しいため、症状が落ち着いても安心せず、早急に適切な治療を受けることが大切です。

様子を見守る

興奮している、大声を出している、暴れているなど過活動状態にある場合、家族だけで本人を落ち着かせるのは至難の業です。

声をかけたり身体に触れたりするとより一層興奮し、暴力を振るわれる危険があるため、本人の周りから危険物を取り除き、ひとまず様子を見守ってください。

身の危険を感じた場合は、ためらわずに110番通報しましょう。

優しく声をかける

本人に話しかける場合は、本人と同じ目線で、目を見て微笑みながら優しく声をかけてあげましょう。

本人が話し始めたら遮らずに聞いてあげることも大切です。

規則正しい生活リズムを維持させる

昼夜逆転や睡眠不足が原因でせん妄の症状が出ることを防ぐには、朝起きて夜寝る生活リズムを維持させることが大切です。

規則正しい生活リズムは健康維持にもつながります。

家族がうまくリードしてリズムを作ってあげましょう。

生活環境を維持する

転居、リフォーム、模様替え、施設入所などの環境の変化でせん妄の症状が出ることがあるため、できる限り生活環境を変えない工夫も大切です。

どうしても環境を変える場合は、事前に本人に説明し、理解や納得を得た上で実行するようにしましょう。

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