認知症の人の詐欺被害の防止法は?取消すには成年後見制度が必要?
最近は、「オレオレ詐欺」を筆頭に高齢者を標的とした詐欺が横行しており、社会問題となっています。
認知症により判断能力が低下すると、記憶力、見当識、理解力、判断力などが低下し、判断能力が正常に保たれている人に比べて詐欺被害に遭うリスクが高いとされています。
認知症高齢者の家族や支援者は、認知症の対する詐欺を未然に防止するとともに、詐欺被害に遭った際の手当てをする方法を知っておくことが大切です。
この記事では、認知症高齢者が被害に遭いやすい詐欺、認知症高齢者に対する詐欺を予防する方法、詐欺被害に遭った際の対応について解説します。
認知症高齢者が被害に遭いやすい詐欺
認知症高齢者が被害に遭いやすい詐欺は、以下のとおりです。
オレオレ詐欺
オレオレ詐欺とは、身内、警察官、弁護士などを装って高齢者に電話をかけ、会社で横領した金銭の補てん、交通事故や対人トラブルの示談金などをだまし取る詐欺です。
銀行口座に現金を振り込ませる手口が主流ですが、ゆうびんや宅急便などで送金させる手口も増加しています。
また、銀行員、警察官、弁護士などを装って電話をかけた上で、高齢者の自宅へ現金やキャッシュカードを受け取りに来る手口もあります。
架空請求詐欺
架空請求詐欺とは、架空の事実を口実に料金などを請求する詐欺です。
インターネットで高額な登録料や利用料の支払いを求めるページを表示する、偽の訴状や請求に関する書面を郵送する、メールで架空の請求を送信するなどの方法により、現金を預金口座に振り込ませたり、郵便や宅配便で送金させたりして金銭をだまし取ります。
融資保証金詐欺
融資保証金詐欺とは、実際には実行しない融資を持ち掛けて現金をだまし取る詐欺です。
低金利で融資をする旨の文書を送信したり、インターネット上に広告を出したりして偽の融資を持ち掛け、融資の申込者に現金を振り込ませるなどして金銭をだまし取ります。
貸します詐欺と呼ばれることもあります。
還付金等詐欺
還付金等詐欺とは、還付等のために必要な手続を装って連絡し、高齢者に電話で指示しながらATMを操作させて、口座間の送金によって現金をだまし取る詐欺です。
返します詐欺とも呼ばれます。
加害者は、社会保険庁、税務署、市区町村役場、電力会社、ガス会社、電話会社などの職員をかたり、保険料、税金、医療費、利用料金などを還付すると嘘をつくことが多いものです。
金融商品等取引詐欺
金融商品等取引詐欺とは、架空の有価証券などを必ず儲かると信じ込ませて購入させ、現金をだまし取る詐欺です。
架空の有価証券、外国為替などの購入をネット広告やダイレクトメールなどで斡旋した上で、「買えば必ず利益が出る。」、「購入後は必ず高値で買い取る」などと電話などで嘘をついて、被害者に「利益が出る」と信じ込ませ、架空の有価証券などの購入代金をだまし取ります。。
情報提供詐欺
情報提供詐欺とは、虚偽の情報を売りつけて現金をだまし取る詐欺です。
例えば、「必ず月10万円稼げる」「日給3万円」などとネット広告などで勧誘し、登録料などとして現金を振り込ませます。
また、「競馬必勝法」、「必ず勝てるFX」などの名目で虚偽情報を提供し、情報の代金として現金をだまし取るのも情報提供詐欺です。
リフォーム詐欺
リフォーム詐欺とは、耐震リフォーム、シロアリ、上下水道の点検などを名目に点検を行った後、不要なリフォームなどを持ち掛けてその代金をだまし取る詐欺です。
加害者は、高齢者の自宅を訪問して無料点検や無料査定を申し出て、形だけの点検などを行い、適当な理由をつけてリフォームが必要だと嘘をついて、高齢者がリフォームを依頼すると高額な代金をだまし取ります。
断ると引き下がることが多いですが、中には高圧的な態度でリフォームを迫る加害者もいます。
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認知症高齢者の詐欺被害を予防する方法(家庭内でできること)
認知症高齢者の詐欺被害を予防する方法には、家庭内でできることと、成年後見制度を利用する方法があります。
家庭内でできる認知症高齢者の詐欺被害の予防法は、以下のとおりです。
- 本人の財産や現金をこまめに確認する
- 電話を留守番電話にする
- カメラ付きインターフォンを導入する
- 銀行には同行する
本人の財産や現金をこまめに確認する
詐欺予防として確実なのは、認知症高齢者の財産を家族が管理することです。
しかし、財産は自分で管理したいと希望する認知症高齢者は多く、その場合は、家族がこまめに財産や現金を確認するようにしてください。
1週間~1ヶ月に1度は手持ちの現金を確認し、通帳の記帳を行う習慣をつけておくと、本人の財産の変動に早く気づき、対応することができます。
電話を留守番電話にする
認知症高齢者を標的とする詐欺の多くは、訪問または電話によって行われています。
そのため、まず、自宅の電話を留守番電話にしておき、認知症高齢者が受話器を取らずに済むようにしておきます。
知らない電話番号からの着信があれば、かけなおすかネットで番号を検索し、不審な点がある場合は念のため警察署に相談することも検討しましょう。
カメラ付きインターフォンを導入する
訪問系の詐欺を防止するには、カメラ付きインターフォンの導入が効果的です。
認知症高齢者が玄関先に出ず来訪者を確認することができますし、加害者はカメラで姿を捉えられるのを嫌がるため、抑止力にもなります。
銀行には同行する
認知症高齢者を対象とした詐欺は、銀行で現金を振り込ませてだまし取る手口が多いものです。
そのため、認知症高齢者が銀行へ行く時は同行し、ATMを操作する様子を見守ってあげましょう。
銀行へ同行することが難しい場合は、少額の現金を預け入れた口座の通帳やキャッシュカードだけ預けておくことで、詐欺の被害を最小限に食い止めることができます。
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認知症高齢者の詐欺被害を予防する方法(成年後見制度の利用)
成年後見制度とは、2000年から開始された、精神上の障害により判断能力が低下した人の財産や権利を保護するための制度です。
成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度に分類され、法定後見制度はさらに後見、保佐、補助の3つの類型に分けられます。
法定後見では3つの類型に応じて成年後見人、保佐人、補助人が選任され、それぞれ付与された権限に応じて判断能力が低下した人を援助します。
例えば、成年後見人には包括的な代理権や取消権が付与されており、判断能力の低下した人の財産行為全般を代わりに行い、日常生活に関する行為以外の行為を取り消すことができます。
つまり、本人がリフォーム詐欺に遭い、リフォーム代金を支払う契約書を交わしたとしても、成年後見人がその契約を取り消すことができます。
また、本人に代わって詐欺加害者を訴える権限も有しています。
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認知症高齢者が詐欺被害に遭った場合の対応
認知症高齢者が詐欺被害に遭った場合、警察へ行って事情を説明して被害届を提出するのが基本ですが、だまし取られた金銭を取り戻したり、被害を最小限に抑えたりするために取るべき対応があります。
振り込め詐欺などの対応
振り込め詐欺に遭った場合、金融機関に連絡して口座凍結などの措置をしてもらいます。
また、2008年に振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)が施行されています。
この法律が施行された後にオレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺などの振り込め詐欺に遭った場合、必要な手続きを行うことにより、だまし取られた金額の一部が被害回復分配金として戻ることがあります。
リフォーム詐欺などの対応
リフォーム詐欺や訪問販売などの場合は消費者生活センターに相談します。
クーリングオフ期間内であれば、センターの職員に加害者(販売者)と掛け合ってもらい、契約の解除や申込みの撤回ができます。
ただし、クーリングオフが適用されるのは、契約を結んでから8日以内です。
成年後見人がついていれば、消費者センターに相談せず、直接加害者と話し合って契約の解除や申込みの撤回をさせることもできます。
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