弄便とは?認知症の弄便の原因と対策・対応は?

弄便は、認知症の周辺症状(BPSD)の一つです。

認知症高齢者介護の専門家でも対応が難しい症状で、親などを介護する家族にとっては強いストレスの原因となることが多いものです。

この記事では、認知症の弄便の概要、原因、対策・対応について解説します。

弄便とは

弄便とは、便を弄ぶ(もてあそぶ)という名前のとおり、便を触ったり投げたりする症状です。

本人は便で遊んでいるわけではありませんが、介護する人からは便をいじって遊んでいるように見えるため「弄便」と呼ばれています。

認知症高齢者のよく見られる周辺症状(BPSD)で、症状が悪化したり繰り返されたりしやすく、介護者が重い負担感やストレスを感じやすい症状の一つです。

弄便の読み方と意味

弄便と書いて「ろうべん」と読みます。

「弄ぶ」は「(他人を)思い通りに操る。」、「(女性を)なぐさみものにする。」などの意味で使われることが多い言葉ですが、「持って遊ぶ」という意味もあり、弄便の「弄」は後者の意味で使われています。

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弄便でよく見られる行動

弄便でよく見られる行動は、以下のとおりです。

  • 便を手でいじる
  • 便を自分の身体、衣服、壁、ベッドなどに擦りつける
  • 便を口に入れる

便を手でいじる

排便した後、オムツの中に手を入れて便を取り出し、触ったり、投げたりします。

触る、投げるなどの行動から遊んでいるように見えますが、本人は便を便だと認識していないと考えられています。

便を自分の身体などに擦りつける

便をオムツから取り出して自分の身体、衣服、部屋の壁、ベッドなどに擦りつけることがあります。

お尻に不快さを感じて便を取り出してみたものの、取り出した物が便であることを認識できず、対処に困って汚れた手を拭こうとしていると考えられています。

また、便を隠そうとしたり、大切にしまい込んだりすることもあります。

便を口に入れる

手に持った便を口に入れることもあります。

便を便だと認識できず、色や形から食べ物だと認識して口に入れると考えられています。

認知症高齢者の弄便の原因

認知症高齢者の弄便の主な原因は、以下のとおりです。

  • 排便感覚の低下
  • 不快感
  • 認知障害
  • 羞恥心

排便感覚の低下

加齢に伴って腸の機能が低下すると、排便感覚(便が出る感覚)がなくなり、いつ排便したか自分で認識できないことが多くなります。

また、腸機能低下による便秘を緩和するために便秘薬を継続的に服用することで、慢性的に便が緩くなって排便感覚がなくなることもあります。

不快感

排便感覚が低下すると、排便しても「便が出た」という感覚はありません。

しかし、便がお尻に付いたり、オムツの中が蒸れたりすることによる不快さは感じます。

そのため、不快さの原因が便であることに気づかないままオムツの中に手を入れて、手で便を取り出したり、オムツを外したりします。

認知障害

排便感覚がなく「便が出た」ことに気づかないものの排便による不快さは感じ、不快さを取り除こうとして便を取り出します。

しかし、オムツから取り出した便を便だと認識できず、興味を持っていじったり、対処に困って身体などに擦りつけたりします。

便だと認識していないので、衛生面の問題も考えることなく弄便を繰り返します。

便を口に入れることがあるのも、便を食べ物などだと認識していることで起こると考えられています。

羞恥心

便だと認識できていなくても、「何か恥ずかしいことをしてしまった。」と思い、羞恥心から便を隠そうとすることもあります。

しかし、うまく対処できずに混乱し、身体などに擦りつけたり投げたりしてしまう可能性も指摘されています。

弄便の対策・対応

適切な対策と対応により弄便の症状が和らぎ、介護の負担を軽くすることができることがあります。

  • できるだけトイレで排泄する習慣をつける
  • オムツ交換をこまめに行う
  • オムツの中に手を入れにくくする
  • 便秘薬の使用を控える
  • 後始末の準備をしておく
  • 介護サービスを利用する

できるだけトイレで排泄する習慣をつける

弄便の原因となる不快感は、オムツの中に便を出し、便がお尻に触れたり、おむつの中が蒸れたりすることで生じます。

トイレで排泄する習慣をつけることで、排便による不快さを感じなくなり、弄便が解消されることがあります。

足腰が悪いなどの理由で、排泄の度に自宅や施設に備え付けのトイレへ行くことが困難な場合は、ポータブルトイレを活用する方法も検討してください。

排便感覚がなくても、排泄にはある程度のリズムや間隔があり、また、排便前に何らかの兆しが見られることもあります。

例えば、毎朝決まった時間に排便する、排便前は力んだりもじもじしたりするなど、何らかのリズムや兆しが見られます。

本人の排泄リズムや排便前の兆しをキャッチし、トイレに連れて行ってあげましょう。

また、起床後、昼食後、就寝前などトイレに行く時間を決めておく方法も効果があります。

オムツ交換をこまめに行う

排泄の度にトイレまで移動することができず、ポータブルトイレの使用も困難な場合は、オムツで排泄することになります。

本人の排泄リズムや排泄前の兆しを把握し、便が出たら本人が不快さを感じる前にオムツを交換してあげることで、弄便の症状が消失または改善されることがあります。

また、本人の身体に合ったオムツを選ぶことや、オムツのギャザーを立てて便漏れを予防することも大切です。

オムツの中に手を入れにくくする

一度、弄便の症状が見られるようになると、症状を消失させるには時間がかかります。

また、毎回、トイレの付き添いや排便直後のオムツ交換ができるとも限りません。

そのため、本人がオムツの中に手を入れて便を取り出せないようにする方法も検討してください。

例えば、つなぎを着せる、手袋やミトンをはめるなどすると、自力でオムツの中に手を入れるのが難しくなります。

ただし、オムツの中の不快さに耐えかねて暴れだしたり、暴言を吐いたりすることもあるため、できるだけ早くオムツを交換して不快感を取り除いてあげる必要はあります。

また、本人の行動を制限する方法なので、必要最小限の範囲で実践するようにしてください。

便秘薬の使用を控える

下剤など便秘の薬によって排便感覚がなくなっていると考えられる場合は、医師に相談した上で薬の使用を中断してみましょう。

薬の中断と同時に、消化の良い食べ物を食べる、十分に水分を補給する、適度なストレッチや運動などにより、自然な排便を促す対応も必要です。

後始末の準備をしておく

弄便の対応で苦慮するのが、後始末です。

衣類や布団なら洗濯することで足りますが、畳の目の中に便が入ったり、壁に便が擦りつけられたりすると取れなくなることがあります。

本人が便を擦りつけたり投げたりする場所をビニールシートやカバーなどで保護しておくと、後始末の手間が少なくなります。

介護サービスを利用する

弄便の症状は、介護する人に大きなストレスを与えます。

対応に疲弊してしまう前に、市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談し、必要に応じてデイサービス、訪問介護、ショートステイなどの活用を検討してください。

「本人がかわいそう。」、「何とか家族だけで面倒を見てやりたい。」と思うかもしれません。

しかし、弄便は、不快さなどが原因で起こると考えられており、本人もつらい状態にあることが少なくありません。

そのため、介護の専門家に対応してもらうことは、家族の負担が軽減されるだけでなく、本人にとっても生活の改善につながります。

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