リアリティ・オリエンテーションとは?方法の例と認知症への効果は?

リアリティ・オリエンテーションは、認知症のリハビリテーション療法の一つです。

認知症の症状の一つである見当識障害を改善させ、認知症の症状の進行を遅らせる効果があると期待されています。

この記事では、リアリティ・オリエンテーションの概要、方法、具体例、認知症への効果について解説します。

リアリティ・オリエンテーションとは

リアリティ・オリエンテーションとは、認知症の症状の一つ「見当識障害」の改善または症状の進行遅延を目的として行う非薬物療法(リハビリテーション療法)です。

本人の個人情報、周囲の人、今日の年月日、今いる場所などの情報を繰り返し示したり、日常生活で繰り返してきた動作に注意を向けさせたりして、見当識障害の改善を図ります。

また、リアリティ・オリエンテーションの訓練を繰り返す中で、本人が対人関係への意欲や協調性を取り戻し、支援者も本人への理解や態度が変化するという効果も期待されています。

英語では「reality orientation」と表記し、日本では現実見当識訓練と訳されていました。

現在は、リアリティ・オリエンテーションと表記される機会が増えており、頭文字をとって「RO」と呼ばれることもあります。

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リアリティ・オリエンテーションの歴史

リアリティ・オリエンテーションは、行動修正法と環境療法を組み合わせた治療法で、アメリカの精神科医James.C.Folsomらによって1968年に提唱され、アメリカ合衆国アラバマ州に設置された退役軍人管理局病院において開始されました。

当時は、ベトナム戦争などの後遺症に悩む退役軍人の治療法として開発・活用されてきましたが、その後、認知症の見当識障害の治療に用いられるようになりました。

現在は、認知症の非薬物療法(リハビリテーション療法)の一つとして、病院や施設などで実践されています。

リアリティ・オリエンテーションの対象

そのため、リアリティ・オリエンテーションの対象となるのは、認知症初期の人です。

もう少し具体的にいうと、短期記憶には軽度の障害があるものの、長期記憶が保たれていて、言語機能にも障害が見られない人です。

リアリティ・オリエンテーションでは、言葉で現実認識の機会や基本的情報を言語で提供するため、長期記憶や言語機能が障害されていると効果が期待できないのです。

認知症を発症すると、記憶障害や見当識障害などの中核症状が現れます。

記憶障害では、まず最近の出来事を記銘(刺激を情報として脳にインプット)できなくなり、症状の進行に伴って長期記憶(過去の記憶)も障害されていきます。

見当識障害では、まず「今日の年月日」や「今いる場所」が分からなくなり、症状が進行すると「目の前の人との関係性」なども分からなくなります。

また、認知症の症状が進行すると言語機能が障害され、発話や会話の理解が困難になっていきます。

認知症の症状は緩やかですが確実に進行する上、現時点では一度失われた認知機能を回復させる術はないため、認知症だと気付いた時にはとリアリティ・オリエンテーションができないくらい症状が進んでいることもあります。

リアリティ・オリエンテーションの実施機関

リアリティ・オリエンテーションは、認知症の非薬物療法(リハビリテーション療法)として、医療機関のリハビリテーション施設やケアハウスなどで実践されています。

しかし、全ての認知症関連機関が実施しているわけではないため、希望する場合は事前確認する必要があります。

リアリティ・オリエンテーションの種類と具体例

リアリティ・オリエンテーションには、2つの種類があります。

  • 24時間リアリティ・オリエンテーション
  • クラスルームリアリティ・オリエンテーション

それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

24時間リアリティ・オリエンテーション

24時間リアリティ・オリエンテーションとは、日常的な関わりやコミュニケーションの中で、施設職員などが本人に対して「自分が誰なのか(氏名など)」、「自分は今どこにいるのか(場所)」、「今は何日、何曜日、何時なのか(時間)」などに対する現実認識の機会を提供する方法です。

入浴、食事、トイレなど毎日の介助場面において、本人の注意や関心を年月日、時間、曜日、天気に向けさせたり、窓の外に見える季節の花や木、食事の味やにおい、施設外の音などを利用して、本人の見当識を補う手掛かりを与えます。

例えば、食事の介助をしながら「お豆さんだ。今日は何の日でしたっけ?」、着替えの途中で窓の外に注意を向けさせて「桜が咲いているから春ですね。」などと声をかけます。

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クラスルームリアリティ・オリエンテーション

クラスルームリアリティ・オリエンテーションとは、あらかじめ決められた方法に基づいて、小グループを対象として氏名、場所、時間、年月日などの情報を繰り返し提供する方法です。

施設職員などがファシリテーターになり、参加者個人の情報や時間、場所に関する情報を提供することにより、見当識の改善を図ります。

24時間リアリティ・オリエンテーションよりも場面が構造化され、対象者の残存能力に応じた対応がなされるなど、限られた時間の中で見当識障害が改善できるようなプログラムが準備されています。

リアリティ・オリエンテーションの効果

リアリティ・オリエンテーションの効果は、認知症の症状の進行を遅らせることと、本人と施設職員などのコミュニケーションによって対人関係を持つことへの意欲や協調性を取り戻すことです。

治療を行っている現場では、後者の効果をより期待して実践することが多くなっています。

認知症の症状の進行を遅らせる

氏名などの個人情報、今いる場所、現在の時間などに関する質問を繰り返したり、日常生活の中で現実認識の機会を繰り返し提供したりすることにより、見当識障害を改善させ、認知症の症状の進行を遅らせる効果があると考えられています。

ただし、効果が認められているのは認知症初期の一部の人であり、全ての認知症の人に効果があるものではありません。

対人関係への意欲や協調性を取り戻す

リアリティ・オリエンテーションは、施設職員などと本人のコミュニケーションが必要不可欠です。

施設職員などが本人に氏名などを質問し、思い出せない場合はヒントを与え、思い出せない葛藤を共有するなど、治療の中で様々なコミュニケーションが生まれます。

その結果、認知症の人に対人関係への意欲や協調性を取り戻させる効果があります。

認知症の人は、他人とうまく関われない不安から対人関係への意欲が低下し、対人関係が減ることで認知症の進行が早まるという悪循環に陥りがちですが、リアリティ・オリエンテーションを継続することで悪い流れを断ち切ることができると考えられています。

一方で、治療を行う側についても、本人への理解が進み、本人に対する態度が変化する効果があります。

リアリティ・オリエンテーションの限界

リアリティ・オリエンテーションは、長期記憶や言語機能が障害された人には効果がなく(薄く)、失われた認知機能を回復させるものでもありません。

あくまで、認知症の症状の進行を遅らせるとともに、本人の対人関係への意欲や協調性を取り戻すための治療法であり、それ以上の効果は望めません。

また、リアリティ・オリエンテーションに関する資格制度があるわけではなく、専門のインストラクターがいるわけでもない(経験者が講義や実演するなどして指導することはある)ため、内容が実施機関や実践する職員などによって異なることがあるのが現状です。

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