リバースモーゲージとは?メリットとデメリット、認知症高齢者の制度利用の条件は?

近年、老後資金が不十分で生活に不安を抱える高齢者が増加しています。

身体が健康で判断能力も保たれていれば、働いて給与収入を得ることもできますが、認知症を発症すると就職は困難になって治療費などが余計にかかってしまい、老後資金が不足して安定した生活を送りにくくなる傾向があります。

リバースモーゲージは、老後資金の不足を解決する方法の一つとして注目されている制度で、認知症高齢者の老後資金を確保するために利用することもできます。

しかし、まだ新しい制度で、リバースモーゲージとという言葉すら聞いたことがないという人も多く、制度利用の検討すらされないケースが多いのが現状です。

この記事では、リバースモーゲージ制度の概要、メリットとデメリット、認知症高齢者が制度を利用する方法について解説します。

リバースモーゲージとは

リバースモーゲージとは、自宅(自分名義の家)を所有する高齢者が、自宅を担保に設定して老後の生活費を借り入れる制度です。

リバースモーゲージは、英語では「reverse-mortgage」と表記し、日本でもそのままリバースモーゲージと呼ばれています。

リバース(reverse)は「逆」、モーゲージ(mortgage)は「抵当」という意味で、直訳すると「逆抵当」となります。

リバースモーゲージ制度の運営主体

リバースモーゲージの運営主体は、民間の金融機関と社会福祉協議会(国)です。

民間の金融機関が運営するリバースモーゲージは、老後の生活にゆとりを持たせるために利用できる制度です。

一方で、社会福祉協議会が運営するリバースモーゲージは、老後資金に困るような高齢者の支援を目的としてします。

この記事では、民間の金融機関が運営するリバースモーゲージについて記載しています。

リバースモーゲージ制度の特徴

リバースモーゲージ制度の特徴は、以下のとおりです。

  • 元金の返済は契約者が死亡した後
  • 毎月の返済は金利だけ(元金に含めることができることもある)
  • 契約者の年齢が限定されている(金融機関により55歳~65歳以上)

自宅を担保にして金融機関から資金を借り入れる

リバースモーゲージは、自宅を担保にして老後の生活費を借り入れます。

これは通常の住宅ローンなどと同じです。

リバースモーゲージ制度と通常のローンなどとの違いは、仮り入れた元金の返済方法です。

通常のローンでは、個人が銀行などの金融機関から金銭を借り入れる場合、不動産に抵当を設定することを求められます。

元金を返済できなくなったときに、金融機関が不動産を競売にかけて売却金額を融資残高に充当するためです。

そして、借り入れた個人が月々の返済をすることで債務額を減らしていきます。

一方で、リバースモーゲージ制度では、契約者が死亡した後に担保にした自宅を売却することで一括返済します。

毎月の返済は金利だけ(元金に含めることができることもある)

リバースモーゲージでは、元金の返済が契約者の死亡後となっており、毎月返済するのは金利のみ(金利も元金に含めることができる銀行もあります。)で元金を返済しなくて済みます。

そのため、仮り入れた金銭を最大限生活費に使用することができます。

当然、契約してから月日が経つにつれて契約者の債務額は増え続けますが、生きている間に返済を求められないので、老後資金をすり減らすことはありません。

契約者の年齢が限定されている(金融機関により55歳~65歳以上)

リバースモーゲージには、契約者の年齢制限が設けられています。

金融機関によって異なりますが、若くても55歳以上となっています。

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リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージのメリットは、以下のとおりです。

  • 自宅に住み続けたまま、老後資金を借り入れることができる
  • 返済が金利のみで済むため、月々の支出を抑えることができる
  • 借り入れた金銭の使途が限定されていないことが多い

自宅に住み続けたまま、老後資金を借り入れることができる

リバースモーゲージでは、契約時に定めた返済時期まで住宅に住み続けたまま、老後資金を借り入れることができます。

返済時期が契約者の死亡後であれば、死亡するまで自宅に住み続けて生活費も借入金でまかなえるため、住む場所にもお金にも困らず落ち着いた生活を送ることが可能になります。

なお、夫婦の一方がリバースモーゲージを契約した後に死亡した場合、自宅が売却され、自宅を担保にした借り入れもできなくなり、残された夫婦の一方の生活が脅かされるのではないかと心配になるかもしれません。

しかし、金融機関の中には、リバースモーゲージ契約を死亡した夫婦の一方からもう一方に引き継ぐ契約を整備しているところがあります。

返済が金利のみで済むため、月々の支出を抑えることができる

リバースモーゲージでは、元金の返済が契約者の死亡後になるため、月々の返済は金利分のみで済み、月々の支出を抑えることができます。

通常のローンでは、生活費のために金銭を借り入れても、月々の返済に追われて借り入れた金銭を生活費に使えないということが多いことを考えると、月々の返済が金利分のみで済むところはリバースモーゲージのメリットと言えます。

なお、金利も元金に含む契約を締結できる金融機関もあり、その場合はさらに月々の支出が少なくなります。

借り入れた金銭の使途が限定されていないことが多い

リバースモーゲージは、高齢者が老後の生活費を得るための制度として注目されていますが、借り入れた金銭の使い道を限定していない金融機関が多いものです。

そのため、生活費だけでなく、自宅のリフォーム、趣味、教育資金などのために借入金を使用することもできます。

リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージのデメリットは、以下のとおりです。

  • 長生きにより融資限度額を超えることがある
  • 金利上昇により月々の支払額が増える
  • 不動産価値の下落により融資限度額が下がることがある
  • マンションでは利用条件が厳しくなる
  • 推定相続人の承諾を得る必要がある
  • 制度利用できないことがある

長生きにより融資限度額を超えることがある

リバースモーゲージ契約では、担保にする不動産の価値に応じて融資限度額が設定され、その範囲内で金銭を借り入れます。

融資限度額を超えると、リバースモーゲージ契約ではそれ以上の借り入れができなくなります。

借り入れができなくなっても金利の支払いは継続されるため、生活費が足りなくなるリスクがあります。

比較的若いうちにリバースモーゲージ契約を締結した場合、想定以上に長生きして死亡前に融資限度額を借り入れてしまい、その後の生活費に困るというケースが少なからずあります。

金利上昇により月々の支払額が増える

金融機関の多くは、リバースモーゲージ契約で変動金利を採用しています。

つまり、金融情勢に応じて適用される金利が変動するため、契約当時から金利が上昇するリスクがあるのです。

金利が上昇すれば、その分だけ月々の支出が増え、生活に使える金銭が減ることになります。

不動産価値の下落により融資限度額が下がることがある

リバースモーゲージ契約では、担保とする自宅不動産(土地)の価値を路線価(宅地の評価額の基準となる価格)ベースで算出しますが、路線価は常に変動します。

路線価が下落すると、金融機関が融資限度額の見直しを行い、限度額が下げられてしまうことがあります。

融資限度額まで借り入れた状態で限度額が下げられた場合、差額の返済を求められることになります。

マンションでは利用条件が厳しくなる

日本における不動産評価額は、建物ではなく土地に準じて決められています。

リバースモーゲージ契約でも土地の評価額が重要視されており、その対象は一軒家を自宅としている高齢者が想定されています。

マンションを自宅としている人もリバースモーゲージを利用することはできますが、一軒家を自宅としている人より条件が厳しくなることが多いのが現状です。

推定相続人の承諾を得る必要がある

リバースモーゲージ契約を締結するには、契約者の推定相続人の承諾を得る必要があります。

推定相続人とは、現時点において、ある人が死亡した場合に相続人になる権利を有する人です。

例えば、父、母、息子の3人家族において、父の推定相続人は母と息子、母の推定相続人は父と息子です。

リバースモーゲージでは、契約者の自宅(財産)を担保にして融資を行う上、契約者が死亡すると自宅が売却される(財産が処分される)ことになります。

そのため、契約者の死亡後に推定相続人と金融機関の間でトラブルにならないよう、あらかじめ推定相続人の承諾を書面で得ることになっているのです。

制度利用できないことがある

金融機関の多くは、リバースモーゲージ契約で担保設定する不動産を自身の営業区域内に限っています。

したがって、金融機関の営業区域内に自宅がある場合、リバースモーゲージが利用できません。

また、営業区域内であっても立地が悪いと担保設定ができないこともあります。

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認知症高齢者がリバースモーゲージ制度を利用する方法

リバースモーゲージ制度を利用するには、契約者が金融機関と契約を締結する必要があります。

しかし、認知症高齢者は、認知症の影響により判断能力が低下しており、自力でリバースモーゲージ契約を締結するだけの能力が残っていないことがあります。

認知症高齢者が自力で契約できない場合、成年後見制度を利用して家庭裁判所に後見人を選任してもらい、後見人が認知症高齢者のために金融機関とリバースモーゲージ契約を締結することになります。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症など精神上の障害によって判断能力が低下した人について、後見人を選任することにより、その人の権利や財産を保護する制度です。

成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、法定後見制度は後見、保佐、補助の3類型に分類されます。

通常、リバースモーゲージ契約を目的として成年後見制度を利用する場合、法定後見制度によって家庭裁判所に後見人を選任してもらいます。

家庭裁判所に後見開始の審判の申立てを行い、成年後見人を選任してもらって、成年後見人が認知症高齢者の代わりに金融機関とリバースモーゲージ契約を締結することになります。

ただし、既に解説したとおり、リバースモーゲージには少なからずデメリットが存在します。

成年後見制度は、保護を受ける本人が落ち着いた生活を送ることを援助する制度であり、家庭裁判所は、本人の生活に悪影響を与える可能性があることは極力控えるよう成年後見人に指導します。

そのため、後見が開始した認知症高齢者についてリバースモーゲージ制度を利用するか否かについては、その人の年齢、財産や収支、推定相続人の同意の有無などを考慮し、成年後見人と家庭裁判所が協議して決めることになります。

現状、後見が開始した認知症高齢者について、民間の金融機関が運営するリバースモーゲージの利用に至ったという報告はありません。

一方で、社会福祉協議会が運営するリバースモーゲージを利用するケースは散見されるようになってきました。

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