認知症のリハビリ療法!音楽療法、芸術療法、アニマルセラピーとは?

認知症の治療には薬物療法と非薬物療法(リハビリテーション療法)があります。

このうちリハビリテーション療法には、作業療法、リアリティ・オリエンテーション、回想法などたくさんの種類があり、認知症高齢者の残存能力、興味関心、治療目標などに応じて実践されています。

この記事では、認知症のリハビリテーション療法のうち、音楽療法、芸術療法、アニマルセラピーについて解説します。

認知症のリハビリテーション療法(非薬物療法)とは

認知症のリハビリテーション療法とは、薬を使用しない治療・ケアです。

リハビリテーション療法では、本人に残された認知機能や身体能力を踏まえて個別に治療目標やプログラムを立てて実践します。

認知症のリハビリテーション療法は、世界中でいくつも開発されており、薬物療法と組み合わせて認知症の治療に活用されています。

日本における主なリハビリテーション療法は、以下のとおりです。

  • 作業療法
  • リアリティ・オリエンテーション
  • 回想法
  • 音楽療法
  • 芸術療法
  • アニマルセラピー

作業療法(OT、occupational therapy)

作業療法とは、認知症の人、精神・身体障害者、慢性疾患を抱えた人などを対象に、作業や活動を通して治療・ケアを行う非薬物療法(リハビリテーション療法)です。

農作業、手芸、工作、習字などの作業や活動によって脳が刺激されるとともに、達成感、喜び、他人と一緒に作業する楽しさを感じ、認知症の周辺症状(BPSD)の改善する効果があるとされています。

また、周囲の人に褒められると自尊心が高まり、集団プログラムに参加することで対人交流や日常生活を前向きに送る意欲も高くなります。

リアリティ・オリエンテーション(RO)

リアリティ・オリエンテーションとは、認知症の症状の一つである見当識障害の改善・症状の進行遅延を目的とする訓練です。

日常生活に不可欠な情報(人、場所、時間など)を本人に繰り返し提示したり、本人が日常生活の中で当たり前にしてきた動作に注意を向けたりして、見当識障害の改善・症状の進行遅延、対人関係や協調性の向上を図ります。

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回想法

回想法とは、写真や音楽、生活用品など本人になじみが深いものに触れながら昔の経験を語り合う、精神的な病気などがある人を対象とした心理療法の一つです。

過去の記憶を想起して話したり、相手の回想を聞いたりする体験によって、脳が活性化されて集中力、活動性、自発性が向上し、認知症の症状の改善または進行遅延に効果があるとされています。

また、話を聞いてもらうことによって自尊心を向上し、気持ちが安定するという効果も報告されています。

音楽療法とは

音楽療法とは、音楽が持つ特性を利用したリハビリテーション療法です。

音楽には人の気持ちを落ち着かせる、気分を良くさせる、リラックスさせるなどの効果があります。

音楽療法は、こうした音楽の効果を踏まえ、対象者の心身の不調の改善、健康の維持・増進、問題行動の改善、脳の活性化による認知機能の改善などを目的として行われます。

「ただ音楽を聞かせれば良い。」というものではなく、対象者の状態やニーズを把握し、音楽を治療として活用する経験や技術が求められます。

音楽療法の種類

音楽療法には、受動的音楽療法と能動的音楽療法があります。

  • 受動的音楽療法:音楽鑑賞により、認知症高齢者の気持ちを落ち着かせたり、抵抗感を和らげたりする
  • 能動的音楽療法:対象者が歌を歌う、楽器を鳴らす、手拍子を打つなど能動的に参加する

音楽療法の方法

対象者の状態、ニーズ、興味関心、好み、心身の障害の有無や程度、認知機能などに応じて、個別に音楽療法のプログラムを決めます。

音楽療法の具体的な方法としては、音楽鑑賞(受動的音楽療法)、歌を歌う、楽器を鳴らす、手拍子を打つなどがあります。

歌詞と合致する写真や絵を選ぶ、歌詞から思い浮かぶエピソードを話す、音楽に合わせて運動するなど、簡単な作業を織り交ぜて実践することも多いものです。

また、グループで音楽療法を行う場合は、複数の対象者がカラオケをする、異なる楽器を鳴らす、順番に歌ったり演奏したりするなど、対象者が交流できるような工夫も行います。

音楽療法の効果

音楽療法の主な効果は、心理的なものと身体的なものがあります。

  • 心理的な効果:不安・悩み・焦り・ストレスの軽減、妄想・幻覚の改善、気持ちの安定、うつ症状の改善、感情や表情が豊かになる、脳が活性化される、協調性・自発性の向上など
  • 身体的な効果:徘徊・粗暴な言動・睡眠障害・過食・拒食の改善、

認知症高齢者の場合、歌を歌う、音楽を聴く、楽器を鳴らすなどによって脳が活性化され、身体の動きや発声なども促されてADLが改善することがあります。

音楽療法を繰り返すうちに、自発的に楽器を鳴らしたり、リズムに合わせて身体を揺らしたりする人も少なくありません。

芸術療法とは

芸術療法とは、絵を描くなどの芸術(表現手段)を活用したリハビリテーション療法です。

芸術療法は、以前は絵画療法と呼ばれることもありましたが、絵を描く以外の芸術も取り入れられているため、最近は芸術療法と呼ばれています。

言葉で表現しにくい気持ち、感情、願望、欲求などを芸術として表現することにより、心の不調を改善させることを目的として行われます。

もともとは精神的な疾患を抱える人の治療法の一つとして始まり、実践されてきましたが、認知症の治療・ケアにも効果があると考えられるようになり、リハビリテーション療法の一つとして取り入れられるようになっています。

芸術療法で活用される芸術(表現手段)

芸術療法で活用される芸術(表現手段)は、絵を描くこと以外にもたくさんあります。

例えば、粘土細工、折り紙、彫刻、陶芸、写真、俳句、詩吟、心理劇、ダンスなど様々です。

芸術療法の方法

芸術療法のプログラムは、対象者の状態、ニーズ、興味関心、好み、心身の障害の有無や程度、認知機能などに応じて、活用する芸術(表現手段)や目標を個別に決めることになります。

芸術療法では、「上手に作ること」ではなく、「作るプロセスを楽しむこと」、「五感をフル活用すること」、「過去の記憶を想起すること」が重要とされています。

そのため、治療を行う人には、芸術療法を実施するための知識や経験に加え、対象者が楽しみながら自発的に芸術療法に取り組めるよう配慮や工夫をすることが求められます。

また、作るプロセスで見る、聞く、触る、においを嗅ぐ、味わうなど五感が刺激され、そこから過去の記憶を想起させるようなプログラムを考えることも大切です。

芸術療法の効果

芸術療法によって五感が刺激される、身体を動かして作業する、過去の記憶が想起されることで脳が活性化され、認知機能の維持・症状の進行遅延の効果があるとされています。

また、気持ちが落ち着いて不安や焦りが軽減されたり、うつ症状が改善したりするという報告もあります。

納得できる作品ができたり、作品を褒められたりすることにより、自尊心が向上し、気持ちが前向きになることもあるでしょう。

アニマルセラピー

アニマルセラピーとは、動物に触れあうことにより、不安・焦り・悩み・ストレスなどを緩和させ、気持ちを落ち着かせるリハビリテーション療法です。

アニマルセラピーという言葉が登場したのは少し前ですが、動物が人の心を癒すことは昔から知られており、世界各地で動物を介在させる治療・ケアが実践されてきました。

医療現場で行われるアニマルセラピーは「動物介在療法」と呼ばれており、専門的な知識や経験を有する医療関係者の手動で行われます。

アニマルセラピーの方法

医療現場で行われる動物介在療法は、医師や医療関係者がチームを組み、アニマルセラピーと薬物療法や他のリハビリテーション療法を組み合わせたプログラムを立てた上で、計画的に行われます。

動物介在療法では「セラピードッグ」という、セラピー用に訓練されて一定の基準を満たした犬が用いられます。

原則、セラピー中は一人の対象者が一匹のセラピードッグと一緒に過ごし、担当者がその様子を観察し、必要に応じて介入します。

アニマルセラピーの効果

認知症を発症すると、記憶障害や見当識障害などによって家族や周囲の人と話がかみ合わなくなり、できないことが増える上、施設入所やデイケア通所、ヘルパー訪問など環境も大きく変化します。

認知症高齢者は、こうした変化に対する不安、焦り、苛立ちなど負の感情を抱え、対人関係や日々の生活に対する意欲を喪失し、より一層認知機能が低下してしまう傾向にあります。

アニマルセラピーは、セラピードッグと触れ合う中で対象者の不安や焦りなどが緩和・軽減され、気持ちを落ち着かせる効果があるとされています。

また、対人関係では自発性や意欲が見られなくても、セラピードッグには積極的に関わる対象者は多く、意欲や自発性が向上したり、身体機能の改善が見られたりするケースも報告されています。

セラピードッグの話題を通して他人とのやりとりが生まれ、そこから対人交流の改善につながり、社会性を取り戻していく人もいます。

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