成年後見制度の質問(Q&A)~複数選任、申立ての変更・取下げ、審判前の保全処分~

成年後見制度でよくある質問について、分かりやすい解説と関連記事の案内をしています。

この記事で解説している質問は、以下のとおりです。

  • 成年後見人が複数選任されるのはどのような場合ですか?
  • 保佐類型や補助類型でも保佐人や補助人が複数選任されることがありますか?
  • 後見開始の審判・保佐開始の審判、補助開始の審判の申立てを取り下げることができますか?
  • 申立ての変更とはどのような手続きですか?
  • 審判前の保全処分とは何ですか?

成年後見人が複数選任されるのはどのような場合ですか?

家庭裁判所が、後見事務が適切に行われるためには複数の成年後見人を選任することが相当だと考えた場合です。

具体的には、以下のような場合に複数の成年後見人が選任されることがあります。

  • 親族のみの複数選任:親族一人では負担が大きすぎる後見事務について、複数の親族が分担する場合など
  • 親族と専門職の複数選任:後見制度支援信託を利用する場合(信託手続き終了後は専門職が辞任)、事務を分掌する場合(親族が身上監護、専門職が財産管理)など
  • 専門職のみの複数選任:親族に後見人のなり手がない場合に、多職種の専門職が後見事務を分掌する場合など

成年後見人が複数選任されることの課題

  • 責任の所在があいまいになる
  • 事務を分掌した場合、各後見人が定められた範囲内でしか後見事務をこなせない
  • 後見事務を共同して行うこととした場合、各後見人が協力して動く必要がある

特に、親族のみの複数選任や、親族と専門職の複数選任において問題となりやすい傾向があります。

保佐類型や補助類型でも保佐人や補助人が複数選任されることがありますか?

あります。

ただし、成年後見人の複数選任に比べると件数は少なくなっています。

後見開始の審判、保佐開始の審判、補助開始の審判の申立てを取り下げることはできますか?

後見開始の審判、保佐開始の審判、補助開始の審判の申立てについては、家庭裁判所の許可がないと取り下げることはできません。

任意後見監督人選任の審判についても同様です。

成年後見制度は「精神上の障害により判断能力が低下した人の保護」を目的とした制度であり、申立ての取下げを無条件に認めることは本人保護の観点からも公益性の観点からも相当ではないという理由から、申立ての取下げが許可制となっています。

例えば、判断能力が低下した本人について後見開始の審判を申し立てられたにも関わらず、成年後見人の候補者として挙げた人が選任されそうにないという理由で申立ての取り下げを認めてしまうと、本人保護が実現できません。

取下げには理由が必要

後見開始の審判などを取り下げるには、取下げの理由を家庭裁判所に伝える必要があります。

取下げが許可される可能性がある理由としては、以下のものが考えられます。

  • 本人の能力が回復した(医師の診断書などから能力の回復が明らかな場合など)
  • 申立人以外の人が申立てを行った(市町村長が申し立てた後、親族が見つかって同人が申し立てた場合など)
  • 補助類型で本人が補助を開始されることに反対した

一方で、取下げが許可されない理由としては、以下のものが考えられます。

  • 申立人が候補者に挙げた人(申立人本人を含む)が成年後見人に選任されそうにない
  • 第三者の専門職が選任される見込みである
  • 成年後見制度を利用すると、本人の財産を自由に使えないことが分かった

取下げの許可・不許可に対する不服は言えない

申立ての取下げを許可するか否かについては、家庭裁判所の裁量にゆだねられています。

つまり、家庭裁判所が申立ての取下げを許可したまたは不許可にしたことに不服を申し立てることはできません。

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申立ての変更とはどのような手続きですか?

申立ての変更とは、申立ての趣旨や理由を変更する手続です。

例えば、後見開始の審判を申し立てたものの、鑑定結果が保佐相当であった場合に、保佐開始の審判(代理権付与の審判)に変更するのが申立ての変更です。

通常、申し立てた類型と鑑定結果が異なる場合、家庭裁判所から趣旨変更を行うよう促され、趣旨変更に応じないと申立てを却下されます。

鑑定とは

鑑定とは、医学的な観点から本人の判断能力を判定する手続です。

法定後見では、申立て時に本人の判断能力などについて記載された診断書を提出します。

しかし、診断書の情報のみでは判断できない場合などは、家庭裁判所が医師に鑑定を依頼し、その結果に基づいて本人の判断能力を判断することがあります。

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審判前の保全処分とは何ですか?

審判前の保全処分とは、後見開始の審判などが申し立てられてから審判が確定する(審判の効力が生じる)までの間に、本人の財産保全や身上監護のために必要な事務を臨時で行えるようにする手続きです。

後見開始の審判などに関する保全処分としては、財産の管理者の選任、本人の財産管理や身上監護に関する事項の指示、後見命令(保佐命令、補助命令)があります。

例えば、後見開始の審判の確定までに、本人の財産が親族などに引き出される、本人の生命や身体が危険にさらされるなどのおそれがある場合に、財産の管理者を選任して本人の財産を保全したり、本人に後見を受けるよう命令したりすることができます。

審判前の保全処分の要件

審判前の保全処分が出されるには、後見開始の蓋然性と保全の必要性という2つの要件を満たすことが必要です。

後見開始の蓋然性とは、本人の判断能力が後見レベルまで低下していることの確からしさです。

審判前の保全処分を申し立てる人が、医師の診断書などの資料を提出して後見開始の蓋然性を示さなくてはなりません。

また、保全の必要性とは、後見開始の審判の確定を待っていては、本人の身体や財産が侵害されるおそれがあり、迅速に対応すべき事情のことです。

例えば、日常生活全般に介助を要する高齢者が独居生活を続けて衰弱している、本人の財産を親族が引き出す可能性があるなどの場合、保全の必要性があると認められることが多くなっています。

財産の管理者の選任

財産の管理者の選任とは、本人の代わりに本人の財産を臨時で管理する人を選任することです。

本人の財産が侵害されるおそれがある場合に選任され、本人の財産を管理する役割を担います。

保全処分によって選任される財産の管理者には、本人の財産の保存・管理行為を行う権限がありますが、財産を処分する権限はありません。

預貯金の払い戻しや解約については、保存行為であり財産の管理者の権限内で行うことができますが、不動産や有価証券の処分など保存・管理を超える行為が必要な場合は、家庭裁判所に権限外行為の許可を求めることになります。

後見命令・保佐命令・補助命令

後見命令(保佐命令・補助命令)とは、財産に関する行為について財産の管理者の後見を受けるよう、本人に対して命令する処分です。

財産の管理者が選任されただけでは、本人の財産処分権は残っており(本人が自由に財産を処分できる状態)、詐欺被害に遭うなどして本人の財産が侵害される危険性があります。

そのため、本人が自身に不利益が及ぶような財産処分をする危険性が高い場合には、後見命令の保全処分が出されることになります。

後見命令が出されると、財産の管理者と本人は、財産上の行為を取り消すことができるようになります(日用品の購入を除く。)。

なお、保佐命令は、民法13条1項に規定された行為、補助命令は、同意権付与の審判の申立てで付与を希望した行為が対象となり、取消権もその範囲だけに発生します。

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