成年後見制度の質問(Q&A)~保佐・補助、保佐人・補助人、同意権、代理権~

成年後見制度でよくある質問について、分かりやすい解説と関連記事の案内をしています。

この記事で解説している質問は、以下のとおりです。

  • 成年後見人、保佐人、補助人の権限はどう違いますか?
  • 保佐人が代理権を得るにはどうすればいいですか?
  • 補助人が代理権や同意権を得るにはどうすればいいですか?
  • 本人が保佐人や補助人の同意を得る必要がある「民法13条1項規定の行為」とはどのような行為ですか?
  • 保佐開始の審判と同時に代理権付与の申立てができますか?
  • 代理権付与の申立てでは希望する代理権をすべて認めてもらえますか?
  • 本人の預貯金口座のうち特定の口座の取引だけ代理権を得ることはできますか?
  • 保佐類型や補助類型で本人の同意が必要になるのはどのような場合ですか?
  • 本人が代理権の付与に反対したらどうなりますか?
  • 本人が補助開始に反対したらどうなりますか?
  • 保佐類型や補助類型で専門職が保佐人や補助人に選任されることはありますか?

成年後見人、保佐人、補助人の権限はどう違いますか?

成年後見人、保佐人、補助人の権限の違いは、以下の図のとおりです。

法定後見 申立て 手続き

成年後見人が包括的な代理権を有しているのに対して、保佐人や補助人は、「代理権付与の審判」を申し立て、家庭裁判所が審判で認めた範囲で代理権を行使できることになります。

また、保佐類型の場合、被保佐人が民法13条1項に規定された行為をするには保佐人の同意を得る必要がありますが、補助類型の場合、補助人の同意を必要とする行為について「同意権付与の審判」で定める必要があります。

保佐人が代理権を得るにはどうすればいいですか?

保佐類型の場合、保佐開始の審判によって本人に保佐が開始されるだけでは、保佐人に代理権は付与されません。

保佐開始の審判とは別に「代理権付与の審判」を申し立て、特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する決定を家庭裁判所にしてもらう必要があります。

代理権付与の審判の申立てには本人が同意する必要があり、本人が反対する場合は代理権付与は認められません。

なお、代理権付与の申立ては、保佐開始の審判と同時に行うのが一般的ですが、保佐開始の審判後の状況の変化を踏まえて申し立てることもできるようになっています。

補助人が代理権や同意権を得るにはどうすればいいですか?

補助類型の場合、補助開始の審判によって本人に補助が開始されるだけでは、補助人に代理権や同意権は付与されません。

補助開始の審判とは別に、「代理権付与の審判」や「同意権付与の審判」の申立てを行う必要があります。

保佐類型の場合、保佐開始の審判がなされると、本人が民法13条1項に定められた行為をする時は保佐人の同意を得る必要があることになりますが、補助類型の場合は補助人の同意を必要とする行為について、個別に審判で定めなくてはなりません。

いずれの審判も、本人が同意が得られないと、同意権や代理権の付与は認められません。

なお、補助類型では、補助開始の審判と同時に同意権付与の審判、代理権付与の審判、または両方を申し立てる必要があります。

いずれか一方を補助開始の審判と同時に申し立てていれば、審判後にもう一方を申し立てることもできます。

本人が保佐人や補助人の同意を得る必要がある「民法13条1項規定の行為」とはどのような行為ですか?

被保佐人は、民法13条1項に定められた行為の全てについて、保佐人の同意を得る必要があります。

また、被補助人は、民法13条1項に定められた行為のうち、「同意権付与の審判」で家庭裁判所が決定した行為について、補助人の同意を得る必要があります。

民法13条1項に定められた行為は、以下のとおりです。

  • 元本を領収し、又は利用すること:預貯金の払い戻しや弁済の受領、不動産の賃貸、利息付きの金銭の貸付など
  • 借財又は保証をすること:借金、他人の債務の保証人になることなど
  • 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること:不動産、有価証券、知的財産の売買、雇用契約、委任契約、介護契約、施設入所契約など
  • 訴訟行為をすること:人事訴訟の提起や応訴(原告の提起した裁判に応じ、被告として弁論などを行うこと)を除く訴訟行為
  • 贈与、和解又は仲裁合意をすること(贈与を受けることを除く)
  • 相続の承認若しくは放棄又は遺産分割
  • 贈与若しくは遺贈の拒絶又は負担付の贈与若しくは遺贈の受諾
  • 新築、改築、増築又は大修繕をすること(自ら行うことを除く)
  • 民法602条に定める期間を超える賃貸借(短期賃貸借(土地の賃貸借が5年、建物の賃貸借が3年)を除く)

保佐開始の審判と同時に代理権付与の申立てができますか?

できます。

保佐開始の審判の後に、代理権付与の審判を申し立てることもできます。

代理権付与の申立てでは希望する代理権をすべて認めてもらえますか?

保佐類型や補助類型で「代理権付与の審判」を申し立てる場合、代理権の対象となる行為を特定した上で、付与を希望する代理権を挙げる必要があります。

特定の程度については議論があります。

例えば、「本人の不動産に関する取引(売却)」という代理権の付与を希望する場合、売却予定の不動産の地番、地目、面積、評価額などを特定する必要があるのか、「本人名義の不動産を売却する」程度の特定で足りるのかについて、意見が分かれています。

実際に代理権付与の審判を求める時は、上の例でいうと「本人名義の不動産を売却する」程度の特定で足りるとされています。

なお、代理権の対象が特定されていたとしても、法律上、他人による代理が想定されていない婚姻、離婚、認知、遺言などについての代理権は認められません。

また、代理権を付与する相当性の観点からも、希望した代理権が付与されないことがあります。

本人の預貯金口座のうち特定の口座の取引だけ代理権を得ることはできますか?

本人が自分で財産を管理したいと希望した場合、本人の意思を尊重し、複数ある預貯金口座のうち特定の口座取引についてのみ代理権が付与される余地はあります。

ただし、本人保護や必要性の観点から、特定の口座取引のみで足りるか否かについて検討された結果、認められないこともあります。

保佐類型や補助類型で本人の同意が必要になるのはどのような場合ですか?

保佐類型や補助類型で本人の同意が必要になるのは、以下の場合です。

  • 補助開始の審判をする場合(本人に補助を開始することへの同意)
  • 同意権付与の審判をする場合(補助人に対して、民法13条1項規定の行為の一部について同意権を付与することへの同意)
  • 代理権付与の審判をする場合(保佐人や補助人に対して代理権を付与することへの同意)

補助開始の審判、同意権付与の審判、代理権付与の審判の審理において、家庭裁判所調査官が本人と面接し、本人の同意の有無を確認します。

本人が代理権の付与に反対したらどうなりますか?

代理権は付与されません。

代理権付与の審判の申立てを取り下げない場合、却下されます。

本人が補助開始に反対したらどうなりますか?

本人に補助を開始するには本人の同意が必要です。

そのため、本人が反対している場合、補助開始の審判を取り下げるよう促され、取り下げないと却下されます。

保佐類型や補助類型で専門職が保佐人や補助人に選任されることはありますか?

あります。

専門職が選任されるか否かの基準は後見開始の審判と同じです。

保佐類型や補助類型では後見制度支援信託が利用できないこともあり、不正トラブル防止の観点から、本人の財産によっては専門職が選任されるケースは多くなっています。

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