成年後見制度の質問(Q&A)~事情聴取、調査面接、親族照会、鑑定~

成年後見制度でよくある質問について、分かりやすい解説と関連記事の案内をしています。

この記事で解説している質問は、以下のとおりです。

  • 家庭裁判所の面接(事情聴取)では何を聞かれますか?
  • 親族照会とはどのような手続きですか?
  • 親族の同意書とは何ですか?
  • 鑑定とはどのような手続きですか?
  • 鑑定費用の相場はいくらくらいですか?
  • 鑑定にはどのくらいの期間がかかりますか?
  • 鑑定は誰が行うのですか?
  • 親族の反対で鑑定が実施できない場合はどうすればいいのですか?
  • 後見開始の審判を申し立てましたが、鑑定の結果が補佐相当だった場合はどうすればいいですか?
  • 鑑定を行わないのはどのような場合ですか?
  • 本人にはどのようなことを聞くのですか?
  • 親族に調査が入ることはあるのですか?

家庭裁判所の面接(事情聴取)では何を聞かれますか?

後見開始の審判の申立てが受理されると、家庭裁判所の職員が申立人や成年後見人の候補者から事情を聴取します。

面接(事情聴取)を行うのは家庭裁判所調査官または参与員で、最近は参与員が事情聴取を行うことが多くなっています。

面接(事情聴取)は、申立て日の当日に行われることもあれば、予約した日に改めて家庭裁判所を訪問するよう求められることもあります。

申立人が説明を求められる内容

  • 後見開始の審判の申立てに至る事情
  • 本人の生活状況
  • 本人の判断能力(生活における支障の程度)
  • 本人の財産と収支の状況
  • 申立てに対する本人の親族等の意向

申立て時に提出した申立書、申立事情説明書、親族関係図、財産目録、収支目録などを見ながら、把握できている範囲で説明します。

申立書などに書いていない事情を面接で話すと、その根拠となる追加の資料などの提出を求められることがあります。

成年後見人の候補者が説明を求められる内容

  • 本人との関係と関わりの程度
  • 候補者になった事情
  • 欠格事由の有無
  • 成年後見人に選任されることへの意見

申立て時に提出した後見人等事情説明書の項目に沿って、候補者が把握できている範囲で説明を求められます。

申立人と候補者が異なる場合、申立人と同時に面接を受けることもあれば、別期日に呼び出されて面接を受けることもあります。

関連記事

成年後見の手続の流れ!申立てから面接調査、鑑定、審判までの期間は?

親族照会とはどのような手続きですか?

家庭裁判所は、申立人や候補者から事情を聞いた後、本人の親族に対して書面などで照会を行うことがあります。

これが親族照会です。

親族照会では、申立ての概要や成年後見人等の候補者の氏名などを伝え、本人について後見を開始することや候補者を成年後見人に選任することに対する親族の意向を確認します。

照会の対象となるのは、本人が死亡した時に相続人になる親族(推定相続人)が多いですが、その他、本人と同居している人(内縁の夫または妻、親族など)、本人の財産を管理している人なども対象になります。

一方で、父母や祖父母(直系血族)や兄弟姉妹以外で、本人との関係性も希薄な推定相続人に対しては、家庭裁判所の判断で親族照会が省略されることもあります。

親族の同意書とは何ですか?

親族の同意書とは、本人の親族が、①本人について後見が開始されることと②候補者が成年後見人に選任されることに同意する場合に作成する書面です。

申立人が、申立ての前に本人の親族に作成を依頼し、申立て時に申立書などと一緒に家庭裁判所に提出します。

家庭裁判所では、同意書が提出された親族については親族照会を行わない取扱いをしています。

同意書がなくても手続きは進みますが、申立て時に本人の推定相続人、本人と同居している人、本人の財産を管理している人などの同意書が提出されていれば、親族照会が省略されるため、手続きが早く進みます。

鑑定とはどのような手続きですか?

鑑定とは、本人の判断能力の程度について医学的な視点から判定する手続です。

申立てを受理した家庭裁判所が、審理の中で医師に鑑定を依頼します。

本人の精神状態を把握している主治医に鑑定を依頼することが多いですが、主治医に鑑定を依頼できないケースや依頼を引き受けてもらえないケースについては、家庭裁判所から、主治医から他の医師の紹介を受けたり、鑑定を引き受ける医師を探したりするよう指示されることがあります。

そのため、家庭裁判所に提出する診断書を本人の主治医に作成してもらう際に、鑑定を引き受けることができるか否か、鑑定にかかる費用などを確認しておくと手続きが早く進みやすくなります。

鑑定費用の相場はいくらくらいですか?

鑑定費用の相場は、5万円~10万円程度かかります。

鑑定費用は鑑定を行った医師への報酬で、鑑定のために費やす時間や手間を踏まえて決められるというのが建前ですが、実際は、鑑定を引き受ける医師の言い値で決まります。

特に、主治医以外の医師が鑑定を引き受ける場合は、鑑定費用が高く設定される傾向があります。

鑑定費用については、家庭裁判所から鑑定を実施する旨の連絡があってから鑑定が実施されるまでに、申立人が予納する必要があります。

鑑定にはどのくらいの期間がかかりますか?

2週間~1ヶ月程度のことが多いですが、鑑定を引き受けた医師によってまちまちです。

鑑定は、後見開始の審判を申し立てた後、申立人と候補者の事情聴取後に行われることが多くなっています。

鑑定が実施される場合、実施されない場合に比べて、申立てから審判までの期間が約1ヶ月程度長くなります。

鑑定は誰が行うのですか?

本人の主治医、主治医から紹介を受けた医師、その他の精神科の医師などです。

本人の主治医が引き受けることが多いですが、親族の紛争が激しい場合などには引き受けを拒否されることもあり、その場合は他の医師に鑑定を依頼することになります。

親族の反対で鑑定が実施できない場合はどうすればいいのですか?

本人の親族が鑑定に反対している場合、無理やり鑑定を実施することはできません。

鑑定が必要なケースで鑑定が実施できない場合、家庭裁判所は後見開始の審判を却下する決定を出します。

つまり、本人に後見が開始されず、成年後見人も選任されません。

却下を避けるためには、鑑定に反対する親族を説得するか、本人の精神状態を記載した診断書などを準備した上で、審判前の保全処分を検討することになります。

後見開始の審判を申し立てましたが、鑑定の結果が補佐相当だった場合はどうすればいいですか?

申し立てた法定後見の類型と鑑定結果の類型が異なる場合、申立てを変更する必要があります。

後見開始の審判を申し立て、鑑定結果が補佐相当だった場合は、保佐開始の審判の申し立てに変更することになります。

申立人が自主的に変更しない場合、家庭裁判所から変更するよう求められ、それでも変更を拒否した場合は、申立てが却下されます。

鑑定を行わないのはどのような場合ですか?

診断書や申立人の陳述などから本人が後見状態であることが明らかな場合には、鑑定が省略されることがあります。

例えば、認知症による記憶障害や見当識障害が著しく、長谷川式認知症スケールなど検査結果の点数が低く(実施不能の場合も含む)、後見相当の状態であることが診断書に明記されている場合は、申立人の陳述なども踏まえた上で鑑定を省略して手続が進められることがあります。

本人にはどのようなことを聞くのですか?

成年後見制度は、本人の権利や財産の保護を目的とする制度ですが、後見が開始された本人は権利や地位・資格などが制限されることになります。

本人の意思を尊重して手続きを進めるため、本人の陳述聴取ができないことが明らかでない場合、家庭裁判所が本人の陳述を聴取します。

特に、本人の判断能力について親族の間で争いがある、本人の監護状況を把握する必要があるなどの場合は、家庭裁判所調査官が本人と面接し、本人の意向や状況を聴取します。

原則、家庭裁判所に本人が出頭することになりますが、本人の体調等によっては、家庭裁判所調査官が本人の入院先や入所施設を訪問して話を聞いてくれることもあります。

なお、補助開始や保佐開始(代理権付与)の申立ての場合は、本人の同意が必要になるため、必ず本人の面接調査が行われます。

関連記事

成年後見制度とは?わかりやすい説明と図で解説

ピックアップ記事

  1. 認知症 離婚
    配偶者が認知症になると、介護負担、経済的困窮、夫婦関係の変化、老後の不安など様々な課題や問題が生じる…
  2. 認知症かなと思ったら,気づく,ポイント,チェック
    認知症を根治させる方法は見つかっていませんが、症状の進行を遅らせたり、日常生活の支障を和らげたりする…
  3. 障害者手帳 精神障害者保健福祉手帳 認知症
    認知症の人は、障害者手帳を取得することができます。 障害者手帳を取得していると、税金の控除・減免、…
  4. 認知症は、高齢者だけの病気ではなく、若いうちから発症することがあります。 65歳未満で発症した認知…
  5. 認知症カフェ
    認知症を発症すると、日常生活の様々な場面で支障が出て不安や焦りが募り、孤立しがちです。 また、認知…
  6. 新オレンジプラン 認知症施策推進総合戦略
    厚生労働省は、65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人が2012年時点で約462万人おり、20…
  7. 認知機能の減衰
    軽度認知障害(MCI)は、認知症予備軍やグレーゾーンと呼ばれる状態です。 放置すると症状が進行して…
  8. 認知症による物忘れと加齢による物忘れ
    認知症の主な症状の一つである記憶障害(物忘れ)は、加齢による物忘れと混同されやすいものです。 しか…
  9. 認知症の中核症状と周辺症状
    認知症の症状は、中核症状と周辺症状の2種類に分類されます。 認知症の中核症状と周辺症状は、起こる原…
  10. 認知症 基礎知識
    最近、認知症という名前はよく見聞きするようになりました。 しかし、認知症がどのような病気なのか、何…

特集記事

  1. 遺産分割 認知症

    認知症と遺産分割!相続人に認知症の人がいると成年後見人が必要?

    遺産分割は、亡くなった人(被相続人)の財産を相続人に移す法律行為であり、相続人には意思能力が備わって…
  2. 成年後見 申立て 申立人 申立費用 必要書類

    成年後見の申立て準備!申立人(申立権者)、申立費用、必要書類は?

    すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申…
  3. 成年後見 申立て 審判 鑑定

    成年後見の手続の流れ!申立てから面接調査、鑑定、審判までの期間は?

    すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申…
  4. 成年後見 審判 確定 後見人になれる人

    成年後見の手続の流れ!審判で後見人になれる人は?確定までの期間と登記は?

    すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申…
  5. 成年後見登記制度 登記されていないことの証明書

    成年後見登記制度とは?登記事項証明書の申請と手数料は?登記されていない証明は?

    成年後見制度では、ある人が制度を利用しているかどうかについて、第三者が知ることができるよう登記の制度…
  6. 成年後見人 報酬 基準 相場

    成年後見人の報酬付与申立ての方法は?申立書・事情説明書の書き方、基準、相場は?

    成年後見人等は、本人の権利や財産を守るため、療養監護や財産管理の事務を行った報酬を受け取ることができ…
  7. 後見人 仕事 いつまで

    成年後見人の仕事はいつまで?辞める場合の条件と手続は?解任もある?

    成年後見人等は、一旦選任されると、当初の目的を達成しても仕事を続けることになっており、仕事を終えるこ…
  8. 後見 保佐 補助 呼び方

    成年後見監督人とは?職務と報酬、選任手続は?

    本人の親族等が成年後見人等に選任された場合、家庭裁判所が成年後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人…
  9. 成年後見人 仕事

    成年後見人の仕事内容は?療養監護と財産管理、家庭裁判所への報告とは?

    成年後見制度では、本人の財産や権利を守るために、家庭裁判所が成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人…

Facebookページ

ページ上部へ戻る