成年後見制度の質問(Q&A)~申立てと手続の流れ~

成年後見制度でよくある質問について、分かりやすい解説と関連記事の案内をしています。

この記事で解説している質問は、以下のとおりです。

  • 後見開始の審判を申し立てた後の手続きの流れはどうなるのですか?
  • 後見開始の審判は、誰が申し立てることができますか?
  • 後見開始の審判は、どこに申し立てればいいのですか?
  • 本人の住民登録地と実際に住んでいる場所が違う場合は、どこに申し立てればいいのですか?
  • 後見開始の審判では、どのような書類や資料の提出を求められますか?
  • 申し立ての前に、弁護士や司法書士などに相談した方が良いですか?
  • 後見開始の審判の申し立てを弁護士や司法書士に依頼した方が良いですか?
  • 診断書の書式は決まっていますか?
  • 診断書が準備できないと申立てはできませんか?
  • 本人の財産や収支に関する資料を提出しないとどうなりますか?

後見開始の審判を申し立てた後の手続きの流れはどうなるのですか?

後見開始の審判を家庭裁判所に申し立てた後の手続きの流れは、以下の図のとおりです。

成年後見制度 申立て 手続 流れ

一般的に、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立ててから審判が出るまでの期間は、1ヶ月~2ヶ月程度です。

ただし、本人の判断能力が申し立てた類型と合っていない、書面や資料に不備・不足がある、親族間の対立が激しい、家庭裁判所の審理に協力しないなどの事情があると、期間が長くなる可能性があります。

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後見開始の審判は、誰が申し立てることができますか?

後見開始の申し立てができる人については、民法、任意後見契約法、老人福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法などに定められています。

民法7条

  • 本人
  • 本人の配偶者
  • 4親等内の親族
  • 未成年後見人
  • 未成年後見監督人
  • 保佐人
  • 保佐監督人
  • 補助人
  • 補助監督人
  • 検察官

任意後見契約法の第10条2項

  • 任意後見受任者
  • 任意後見人
  • 任意後見監督人

老人福祉法32条、知的障害者福祉法28条、精神保健福祉法51条の11の2など

市区町村長

後見開始の審判は、どこに申し立てればいいのですか?

民法上、後見開始の審判を申し立てるのは、本人の住所地を管轄する家庭裁判所と定められています。

住所地は、生活の本拠となる場所のことで、原則、住民登録地(住民票を置いている地域)です。

管轄のない家庭裁判所に申し立てた場合、原則、管轄のある家庭裁判所に事件が送られることになります(移送)。

また、後見開始の審判の取消しを求める審判や、後見人の辞任の審判、報酬付与の審判については、後見開始の審判をした家庭裁判所(本人の住所地の家庭裁判所)です。

施設入所や転居などにより本人の住所が変更された場合であっても、原則、後見開始の審判をした家庭裁判所が管轄です。

ただし、申立てがあった時点で本人が住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に移送されることもあります。

本人の住民登録地と実際に住んでいる場所が違う場合は、どこに申し立てればいいのですか?

原則、後見開始の審判を申し立てるのは、本人の住所地(住民票を置いている地域)を管轄する家庭裁判所です。

しかし、家族方への転居や施設入所などで本人の住民登録地と実際に住んでいる地域が異なり、実際に住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に申立てたい場合、本人がその地域に実際に住んでいることを証明する必要があります。

例えば、施設入所契約書、公共料金の領収書等、家族や親族の事情説明書などを提出することが考えられます。

なお、管轄の基準となるのは、申立ての時点です。

そのため、他地域へ転出する予定があっても、申立て時点で住所地となっている地域を管轄する家庭裁判所に申し立てることになります。

後見開始の審判では、どのような書類や資料の提出を求められますか?

後見開始の審判で提出を求められる書類や資料は、以下のとおりです。

  • 申立書
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 本人の財産目録
  • 本人の収支目録
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 親族の同意書
  • 成年後見制度用の診断書・診断書付票
  • 各種費用(収入印紙、収入印紙(登記用)、郵便切手、鑑定料など)
  • 本人の戸籍謄本・住民票
  • 後見人等候補者の戸籍謄本・住民票
  • 本人の登記されていないことの証明書 (「成年被後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がない。」欄にチェックして取得)
  • 本人の財産や収支についての資料のコピー
  • 療育手帳のコピー
  • 認印(書類等を訂正する場合に必要)

本人の状態や成年後見人候補者の状態、財産の状況などに応じて、追加資料の提出を求められることがあります。

なお、公的機関で発行される書類については、発行日から3ヶ月以内のものを提出しなければなりません。

申し立ての前に、弁護士や司法書士などに相談した方が良いですか?

成年後見制度についての知識が乏しい場合、弁護士や司法書士などに相談することも考えられます。

ただし、弁護士などに相談すると、暗に依頼するよう勧められることがあるので注意が必要です。

後見開始の審判の申し立てを弁護士や司法書士に依頼した方が良いですか?

後見開始の審判を個人で行おうとすると、書類作成や資料の準備、親族間の調整など時間と手間がかかります。

そのため、弁護士や司法書士などの専門家に任せてしまおうと考える人が少なくありません。

しかし、後見開始の審判の申し立てを弁護士などに依頼すると、10~30万円程度の費用を請求されます。

また、弁護士の繁忙度によっては申立てまでに相当な期間を要することがありますし、成年後見制度に詳しくないのに依頼を受けてしまう弁護士なども少なからずいます。

そのため、費用対効果や制度利用の緊急性などを考えて慎重に判断してください。

診断書の書式は決まっていますか?

後見開始の審判で提出する診断書の書式は、家庭裁判所が定型のものを作成しています。

家庭裁判所では、診断書と診断書付表の定型書式を作成しており、どの医師が作成しても本人の判断能力の程度が過不足なく記載されるようになっています。

窓口で受け取るか、裁判所ウェブサイトでダウンロードしてプリントアウトし、精神科の医師や本人の主治医などに渡して記載してもらいます。

定型外の診断書(病名、入院の要否、期間、身体の状態だけを記載したものなど)を提出すると、再提出を求められることがあるため、注意が必要です。

診断書が準備できないと申立てはできませんか?

診断書が準備できなくても後見開始の審判を申し立てることはできます。

本人について後見を開始するには、本人が判断能力を欠く常況にある必要がありますが、家庭裁判所が本人の判断能力を認定するには、「明らかにその必要がないと認める場合を除いて」鑑定という手続を経なければなりません。

現在は、診断書の記載から「明らかにその(鑑定の)必要がない」と認められれば鑑定が省略される運用が浸透していますが、診断書が準備できない場合は、原則どおり鑑定の結果を踏まえて本人の判断能力を判断することになります。

ただし、申立て時に、受付で診断書が提出できない事情を聞かれます。

また、親族の反対や経済的な事情より鑑定が実施できない場合は、申立てが却下されることがあります。

本人の財産や収支に関する資料を提出しないとどうなりますか?

後見開始の審判では、本人の財産や収支に関する資料を提出するよう求められます。

家庭裁判所が作成した財産目録と収支目録に本人の財産や収支を記載するとともに、記載内容を証明する資料を提出しなければなりません。

例えば、預貯金通帳の写し、不動産登記事項証明書、年金振込通知書、各種領収書などを提出することになります。

家庭裁判所は、申立人から提出された資料を確認して、後見開始の審判後に成年後見人が管理する財産や収支を事前に把握することにより、本人の保護を適切に行うことができる成年後見人を選任したり、後見事務の見通しを立てて後見監督の方針を決めたりします。

本人の財産や収支に不明瞭なところがある場合は、後見開始後に成年後見人に適切な調査や報告を求めることになります。

そのため、申立て時に家庭裁判所が必要だと考える資料が揃っていない場合は、後日、追完するよう指示されます。

審判までに十分な資料が揃わない場合、親族の候補者ではなく弁護士などの専門職を成年後見人に選任し、本人の財産や収支の調査と報告を指示することが多くなっています。

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