成年後見制度の質問(Q&A)~不適切な後見事務、不正トラブル~

成年後見制度でよくある質問について、分かりやすい解説と関連記事の案内をしています。

この記事で解説している質問は、以下のとおりです。

  • 本人の財産を成年後見人や親族の生活費として使うことができますか?
  • 本人の財産を成年後見人や親族へ贈与することはできますか?
  • 本人の財産を成年後見人や親族へ貸し付けたりできますか?
  • 本人の財産を成年後見人が使い込んだらどうなりますか?
  • 本人の財産を成年後見人名義の口座で管理できますか?
  • 本人の財産を投資することはできますか?
  • ペイオフ対策で預貯金を分散させることはできますか?
  • 成年後見人による不正はどれくらいあるのですか?
  • 成年後見人による不正が発覚した後はどうなるのですか?

本人の財産を成年後見人や親族の生活費として使うことができますか?

本人との関係によります。

  • 成年後見人が本人の配偶者(夫または妻)
  • 本人の配偶者
  • 本人の未成熟子
  • 上記以外

成年後見人が本人の配偶者(夫または妻)

本人の配偶者が成年後見人に選任されており、本人の財産から成年後見人の生活にかかる費用を出すことができます。

後見開始の審判の前から本人の財産から生活費を出していた場合や、本人の財産がないと生活が成り立たないような場合などには、本人の家族への扶養義務の観点から、本人の財産を配偶者である成年後見人の生活費のために使うことが認められます。

本人の配偶者

配偶者以外の親族や専門職が成年後見人に選任された場合でも、配偶者の生活にかかる費用を本人の財産から出すことが認められています。

本人の未成熟子

本人に未成熟子がいる場合、その生活にかかる費用も本人の財産から出すことができます。

未成熟子とは、経済的に自立できていない子どものことです。

年齢とは関係なく、聖人であっても経済的自立ができていなければ未成熟子です。

ただし、働く能力があるのに親の財産を当てにして生活しているような場合は、拠出できる本人の財産が限定されることがあります。

上記以外

例えば、本人とは本人の姪が成年後見人に選任された後、自分の家庭の生活費や子どもの教育費などを本人の財産から拠出した場合などが考えられます。

成年後見人の生活にかかる費用などを負担する義務が本人にあるとは言えず、後見人を解任される、後見監督人が選任される、費消した本人財産の返還を求められるなどの措置を受けます。

本人と親族後見人(配偶者以外)やその家族が同居している場合、水道光熱費、住居費、食費などを同居者数で割って本人の負担を算出し、本人の財産から支出することが認められることもあります。

本人の財産を成年後見人や親族へ贈与することはできますか?

原則、できません。

贈与は、本人の財産を無償で他人に与える契約です。

つまり、本人の財産を減少させる行為です。

成年後見人は本人の財産管理権を有していますが、他人である本人の財産を贈与するという行為については、合理性や相当性の観点から制限されることが多くなっています。

当然ながら、成年後年人に対する贈与は認められませんし、子どもや他の親族に対する贈与であっても、原則、認められません。

「後見状態で(判断能力が低下して)いなければ本人が贈与していたはずなので、本人の意思を尊重すべき。」と思うかもしれませんが、本人の意思を尊重して後見事務を行う成年後見人であっても、家庭裁判所であっても、判断能力が低下した本人の意思を確定することはできません。

本人の意思が確定できない以上、本人の財産保護の観点から認められません。

また、「相続税額を減らすための贈与なので認められるべきだ。」、「判断能力が低下する前の本人は、親族に財産を贈与してくれていたので、後見開始gも贈与されるべきだ。」などと主張することもできますが、認められないことが多いでしょう。

家庭裁判所に無断で本人の財産を贈与すると、成年後見人を解任され、損害賠償請求を受けることがあります。

本人の財産を成年後見人や親族へ貸し付けたりできますか?

成年後見人や親族への貸し付けは、原則、できません。

貸し付ける金額、貸し付けた金銭の使途、貸し付ける相手、担保の内容などによっては貸し付けが認められることがありますが、例外的なケースです。

家庭裁判所に無断で本人の財産を貸し付けた場合、不正な行為として成年後見人を解任されたり、貸し付けて戻ってこなかった金額について損害賠償請求を受けたりすることがあります。

本人の財産を成年後見人が使い込んだらどうなりますか?

成年後見人による本人財産の使い込みは、れっきとした犯罪行為です。

成年後見人を解任され、損害賠償を請求される上、業務上横領などで刑事訴追を受けることもあります。

本人の財産を成年後見人名義の口座で管理できますか?

できません。

本人の預貯金口座の名義等は、本人の財産であることが他人から見ても分かるように、「本人の氏名」または「本人の成年後見人であることが明らかな名義」でなければなりません。

「本人の成年後見人であることが明らかな名義」の例としては、「成年被後見人・本人氏名・成年後見人・成年後見人氏名」という名義が挙げられます。

成年後見人名義の口座などで本人財産を管理していることが発覚すると、家庭裁判所から是正を求められ、成年後見人を解任されることもあります。

本人の財産を投資することはできますか?

できません。

成年後見人は、本人の財産を適切に管理するのが仕事であり、投資などによって増やすことは想定されていません。

後見開始時の本人の財産に、株式など元本割れの恐れがある財産がある場合、解約を求められることもあります。

ペイオフ対策で預貯金を分散させることはできますか?

原則、できます。

ペイオフとは、預金の全額保護をせず、金融機関が破たんした場合に一定額だけを預金者に払い戻す制度です。

ペイオフのリスクを防止する保存行為として、成年後見人の判断で本人の財産を分散して預けても問題はありません。

ただし、本人の預貯金については、家庭裁判所が書面で確認できる方法で保管しておく必要があるため、自宅の貸金庫などで保管することは認められていません。

成年後見人による不正はどれくらいあるのですか?

高齢化による認知症患者の増加などに伴って、成年後見制度を利用する人は増加しています。

同時に、成年後見人による不正トラブルが多数発覚するようになっています。

最近の不正トラブル発覚件数と被害額は以下のとおりです。

  • 2011年:不正報告件数(311件)、被害額(約33億円)
  • 2012年:不正報告件数(624件)、被害額(約48億円)
  • 2013年:不正報告件数(662件)、被害額(約45億円)
  • 2014年:不正報告件数(831件)、被害額(約57億円)
  • 2015年:不正報告件数(521件)、被害額(約30億円)
  • 2016年:不正報告件数(502件)、被害額(約26億円)

わずか6年の間に3500件近い不正が明らかになり、約240億円の被害が出ています。

なお、不正を働くのは親族後見人だと思われがちですが、専門職後見人による不正も相次いでいます。

  • 2011年:親族(305件)、専門職(6件)
  • 2012年:親族(606件)、専門職(18件)
  • 2013年:親族(648件)、専門職(14件)
  • 2014年:親族(809件)、専門職(22件)
  • 2015年:親族(484件)、専門職(37件)
  • 2016年:親族(472件)、専門職(30件)

家庭裁判所は、親族後見人による不正トラブル対策として専門職を選任する方向にシフトしていますが、今後は、専門職の不正に対する措置も検討されなければならない状況となっています。

関連記事

成年後見制度の不正トラブル!件数や被害額、相談場所は?横領は弁護士が多い?

成年後見人による不正が発覚した後はどうなるのですか?

家庭裁判所は、成年後見人による不正を発見すると、新しい成年後見人(専門職)を選任して権限分掌させるなど、発覚時点から被害が拡大しないよう対処します。

その上で、不正の調査と被害の特定、不正を働いた後見人の解任、損害賠償請求などの手続(実際の手続は、家庭裁判所の指示を受けた専門職後見人が行う)を進めます。

不正の内容が悪質な場合は、不正を働いた後見人が刑事訴追されることもあります。

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