作業療法とは?認知症のリハビリに有効?プログラムと作業療法士の役割は?

認知症の治療・ケアは、大きく薬物療法と非薬物療法(リハビリテーション療法)の2つに分類することができます。

非薬物療法は、本人の残された認知機能や身体機能、興味関心など一人ひとりの状態に応じたケアを行うもので、作業療法もその一つです。

この記事では、作業療法の概要、作業療法を担う作業療法士の概要、認知症のリハビリ用の作業療法のプログラムについて解説します。

作業療法とは

作業療法とは、作業や活動を通して治療・ケアを行う非薬物療法(リハビリテーション療法)です。

英語では「occupational therapy」と表記し、単語の頭文字をとってOTと略されています。

日本では作業療法という名称が定着していますが、作業療法の実践場面ではOTと呼ばれたり記録されたりしています。

作業療法は、他のリハビリテーション療法と同じく、認知症の人がその人らしく暮らせるようになることを目指す「パーソンセンタードケア(peason centered care)」の理念に基づいて実践されています。

作業療法では、農作業、手芸、料理、掃除、運動、木工、陶芸、印刷など、本人の能力や興味関心に応じた作業を繰り返すことにより、症状の回復・改善や社会復帰を目指します。

作業療法の種類

作業療法は、目標によって以下のとおり分類されます。

作業療法の種類 目標
機能的作業療法 身体機能の障害の改善(筋力、関節の可動域、協調性、手の動き、感覚など)
日常生活動作訓練・生活関連動作訓練 日常生活で必要な動作を自分でできるようにする(食事、入浴、衣服の着脱、トイレ、歯磨き、洗顔など)
心理的あるいは支持的作業療法 精神的・心理的課題の改善(達成感の獲得、社会復帰への意欲増進など)
職業前作業療法 社会復帰や職業参加に必要な心身の状態を整える(仕事で必要なスキル、能率、対人関係など)
認知機能の作業療法 認知機能の維持・改善(記憶力、見当識など)

作業療法のプログラム

各作業療法は、個別プログラムと集団プログラムがあり、本人の能力や状態、興味関心、目標などに応じて組み合わせて実践されることになります。

作業療法の種類 個別プログラム 集団プログラム
機能的作業療法 散歩、体操、身体的リハビリテーションなど

散歩、体操、的当て、輪投げなど

日常生活動作訓練・生活関連動作訓練 食事、入浴、衣服の着脱、トイレ、歯磨き、洗顔の練習など 料理、掃除など
心理的あるいは支持的作業療法

音楽鑑賞、安心できる場所の提供、バリデーション療法など

音楽・映画鑑賞、リラクゼーション、外出、カラオケなど
職業前作業療法 農作業、手芸、運動、木工、陶芸、印刷など 農作業、手芸、運動、木工、陶芸、印刷など
認知機能の作業療法 バリデーション療法、認知刺激療法(五感の刺激)、塗り絵、簡単な計算、漢字の書き取り、写経など リアリティオリエンテーション、回想法、トランプ、カルタ、塗り絵、ちぎり絵、将棋、囲碁、習字など

作業療法の内容は、本人が生活または通所する施設の規模や所有設備、職員の構成などによって異なっており、この記事に記載した作業療法が必ず行われるわけではありません。

バリデーション療法

バリデーション療法とは、認知症の人とのコミュニケーション方法の一つです。

バリデーション療法では、認知症の人の暴言、徘徊、混乱した言動などに意味があると考え、行動の背景にある意味を肯定的に認めて受容と共感の姿勢を示します。

例えば、本人の話を傾聴する、こまめに相槌を打つ、うなづく、相手の言葉を繰り返すなどして受容と共感の姿勢を示し、本人の気持ちを落ち着けてあげます。

リアリティオリエンテーション

リアリティオリエンテーションとは、日常生活に欠かせない人、時間、場所などの情報を繰り返し示し、見当識障害の改善を目指す非薬物療法(リハビリテーション療法)です。

リアリティオリエンテーションを通して、本人が対人関係への意欲や協調性を取り戻したり、治療を行う側の本人への理解や態度が変化したりする効果も期待されています。

英語では「reality orientation」と表記し、日本では現実見当識訓練と訳されていましたが、最近はリアリティ・オリエンテーションまたはROと呼ばれています。

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認知刺激療法

認知刺激療法とは、五感を活用する作業により脳の活性化や認知機能の改善を目指す療法です。

塗り絵、習字、写経、音楽など、見る、聞く、触る、匂う、味わうという五感を使った活動が、脳の活性化につながるとされています。

また、心地よい刺激を与えて心を落ち着かせる認知刺激療法もあります。

回想法

回想法とは、昔の記憶を回想することにより、現在の不安や焦りを緩和させる方法です。

作業療法における回想法では、昔から使い慣れた生活用品や継続してきた趣味などを組み合わせて昔の記憶を引き出し、回想させます。

認知症の初期段階では過去の記憶が維持されていることが多いため、回想法が効果を発揮します。

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作業療法士とは

作業療法士とは、リハビリテーション療法の一つである作業療法を行う専門職です。

作業療法士は、本人の身体機能の維持・改善や心理状態の改善などを図り、社会復帰できる状態に持っていくことを目的として、医師の指導に基づいて作業療法を行います。

作業療法の実践においては中核的な職業であり、認知症や介護関連施設や病院などに配置され、最前線で活躍しています。

作業療法士は、理学療法士及び作業療法士法に規定された国家資格で、作業療法士になるには、専門の養成校を卒業した上で、作業療法士国家試験に合格する必要があります。

認知症の作業療法プログラム

作業療法は、本人の能力や状態、興味関心などを考慮しながら、医師や作業療法士が家族を交えて協議した上で目標を設定し、一人ひとり異なるプログラムを組んで実践します。

したがって、認知症の作業療法プログラムとして固定されたプログラムはなく、この記事では一般的な認知症高齢者の作業療法プログラムを見ていきます。

認知症高齢者向けの作業療法プログラムの具体例

認知症高齢者については、認知症に伴う記憶力や見当識の障害の進行を遅延させる作業療法や、日常生活動作訓練・生活関連動作の作業療法がプログラムに組み込まれることが多くなっています。

個別プログラムでは、散歩、運動、リハビリ、バリデーション療法、五感の刺激、塗り絵、簡単な計算、漢字の書き取り、編み物、陶芸、写経、日常生活の練習(食事、入浴、衣服の着脱、トイレ、歯磨き、洗顔の練習など)などが行われます。

また、集団プログラムでは、リアリティオリエンテーション、散歩、運動、トランプ、カルタ、塗り絵、ちぎり絵、将棋、囲碁、習字、料理、掃除などが行われます。

作業療法の効果

作業療法は、認知症の中核症状の症状進行を遅延させる効果があるとされています。

作業療法により脳が刺激され、達成感や喜び、他人と一緒に作業する楽しさを感じることで、認知症の周辺症状(BPSD)の改善する効果があると考えられています。

うまく作業できたときに周囲から褒められることで自尊心が高まりますし、集団プログラムに参加することで、他人に関わったり日々の生活を前向きに送ったりする意欲も高くなります。

また、認知症の診断を受ける前から作業療法を開始することで、認知機能の維持にも効果を発揮すると考えられており、予防効果も期待されています。

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