認知症とは?原因と種類、症状、対応は?認知症のテストと予防は?

最近、認知症という名前はよく見聞きするようになりました。

しかし、認知症がどのような病気なのか、何が原因で発症し、どんな症状があり、診断や治療はどうするのかなどは、あまり知られていません。

この記事では、認知症の「これだけは知っておきたい」という基礎的な内容について解説します。

認知症とは

認知症とは、何らかの原因で脳の働きが低下したり、脳の細胞が死んだりすることによって、一度は獲得された脳の認知機能が継続的に低下することにより、日常生活に様々な支障が出ている状態のことです。

認知機能とは、物事を記憶する、判断する、理解する、計算する、言葉を使う、深く考えるといった頭の働きのことです。

認知症の「認知」とは、認知機能の「認知」です。

なお、英語では「dementia」と表記しますが、日本では認知症という名前で呼ばれるのが一般的です。

認知症は病名ではない

認知症は、脳の機能低下によって様々な障害が起こっているものの、原因がはっきりせず、診断も病名も決められない状態をまとめた症候群です。

認知症という病名はありません。

認知症と痴呆症(ちほうしょう)

認知症は、以前は「痴呆症」と呼ばれていました。

しかし、「痴呆」という言葉に相手を蔑む(さげすむ)差別的な意味があることから、2004年に「認知症」という名称に改められました。

認知症と軽度認知障害(MCI)

軽度認知障害とは、認知機能のうち記憶力など1つが低下しているものの、日常生活への支障が生じていない状態のことです。

英語では「Mild Cognitive Impairment」と表記され、MCIと略して呼ばれるのが一般的です。

軽度認知障害は、年齢相応の認知機能が維持されている状態と認知症の中間にあたり、認知症予備軍やグレーゾーンとされています。

軽度認知障害(MCI)の定義は、以下のとおりです。

  • 本人または家族から記憶障害の訴えが認められる
  • 加齢による影響では説明できない記憶障害がある
  • 日常生活動作は正常である
  • 全般的な認知機能は正常である
  • 認知症ではない

軽度認知障害(MCI)を放置すると認知機能の低下が継続し、認知症へと進行するとされています。

一方で、軽度認知障害(MCI)の段階で、適切な治療や予防を行うことにより、認知機能の低下を遅らせられることができることがあります。

認知症の原因と種類

認知症は、原因となる病気によっていくつかの種類に分けることができます。

  • アルツハイマー型認知症
  • 脳血管性認知症
  • レビー小体型認知症
  • その他の認知症

認知症の原因となる主な病気

認知症の約60%はアルツハイマー病を原因とするアルツハイマー型認知症です。

また、約20%が脳血管障害を原因とする脳血管性認知症、約10%がレビー小体病を原因とするレビー小体型認知症、残り約10%がその他の病気を原因とする認知症です。

認知症の原因となるその他の病気には、前頭側頭葉変性症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、正常圧水頭症などがあります。

病気以外の原因としては、アルコール性の認知症などがあります。

認知症の主な種類と特徴

認知症の主な種類と特徴

認知症の症状

認知症の主な症状は、中核症状と周辺症状の2つに分けることができます。

認知症の中核症状と周辺症状

認知症の中核症状とは

認知症の中核症状とは、認知症の人に必ず見られる症状のことです。

中核症状は、脳の神経細胞が破壊されることで起こります。

中核症状の代表的なものは、記憶障害です。

認知症の記憶障害は、直前に起きたことも忘れてしまう一方で、過去の記憶は良く残るのが特徴です。

ただし、症状が進行するにつれ、過去の記憶も含めて広範囲の記憶が失われていきます。

その他、名前や場所、時間などが分からなくなる見当識障害、理解の障害、判断力の障害、実行機能の障害、失語、失認識、失行などが中核症状に該当します。

認知症の周辺症状とは

周辺症状とは、認知症の人に見られる行動の異常や精神症状のことです。

周辺症状は、英語では「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」と表記し、BPSDと略して呼ばれています。

周辺症状には、不安、抑うつ症状、妄想、無気力、幻覚、幻視、せん妄などの精神症状と、徘徊、暴言、暴力、睡眠障害、失禁、弄便などの行動障害があります。

認知症の中核症状と周辺症状の関係

中核症状と周辺症状の関係を図式化すると、以下のようになります

認知症の中核症状と周辺症状の関係

周辺症状は、脳の病気や障害によって起こる中核症状(認知機能の低下)や、それに伴う日常生活への支障に、本人の性格、生活歴、環境、人間関係などが複雑に絡み合って起こります。

そのため、症状の内容、頻度、日常生活への支障の程度などは一人ひとり異なります。

認知症の人を介護する場合、中核症状よりも周辺症状への対応に悩まされれる傾向があります。

認知症と加齢による物忘れの違い

人は、加齢によって物忘れをすることがありますが、加齢による物忘れと認知症はまったく別ものです。

認知症による物忘れ

認知症の主な症状の一つが記憶障害(物忘れ)です。

認知症の記憶障害は、何らかの原因で脳の神経細胞が破壊されることで起こります。

物事全体がすっぽり抜け落ちてしまい、きっかけを与えても思い出すことができません。

また、本人が物忘れを自覚しておらず、家族や周囲の人と話がかみ合わなくなったり、物盗られ妄想に発展したりすることがあります。

物忘れの症状は時間の経過とともに進行し、日常生活に支障をきたすようになります。

加齢による物忘れ

人は、年齢を重ねるにつれて、物忘れが増えていきます。

加齢による物忘れは、脳の生理的な老化が原因で起こります。

物事の一部を忘れますが、きっかけがあれば思い出すことができることが多いものです。

本人は物忘れを自覚しており、日常生活に大きな支障をきたすことはありません。

認知症による物忘れと加齢による物忘れの違い

認知症による物忘れと加齢による物忘れの違いをまとめると、以下の表のとおりです。

認知症による物忘れと加齢による物忘れ

認知症の対応・治療

認知症を引き起こす原因によっては、手術や薬物療法によって症状を改善できることがあります。

慢性硬膜下血腫が原因で症状が起こっている場合、早期発見し、腫瘍を取り除く手術が成功すれば、症状がなくなったり改善したりします。

しかし、認知症の約60%を占めるアルツハイマー型認知症や、約10%を占めるレビー小体型認知症については、現在のところ原因がはっきり特定できておらず、根本的に治療する方法は見つかっていません。

そのため、これらの認知症の治療は、症状を軽くする対症療法や、進行を遅らせる薬物療法が中心になります。

認知症のテスト

日本における認知症のテストとしては、長谷川式認知症スケール(旧長谷川式簡易知能評価スケール)が有名です。

長谷川式認知症スケールは、どこでも短い時間で認知機能の低下を見ることができるテストで、医療機関で認知症の診断に利用されています。

ただし、あくまで簡易なテストであり、テストの結果のみで認知症と診断されることはありません。

また、認知症の人は脳に変化が現れるため、脳画像診断検査も実施されています。

認知症の予防

現在の医学では、認知症を100%予防できる方法は見つかっていません。

しかし、認知症になりにくい生活習慣を身につけるとともに、認知機能を鍛えるトレーニングを継続することにより、認知症になりにくくなることが分かってきました。

いずれも、認知機能が低下してから始めても効果は薄く、早いうちから始めて継続することが大切です。

認知症になりにくい生活習慣

認知症に関する研究結果から、アルツハイマー型認知症の発症には、日々の生活習慣や環境の要因が関係していることが分かってきました。

具体的には、バランスの良い食事や適度な運動が脳の状態を良好に保ち、他人との交流、知的な行動、良好な睡眠が認知機能の維持に効果があるとされています。

認知機能を鍛えるトレーニング

認知症患者は、認知症になる前に、記憶力(エピソード記憶)、判断力(分割注意力)、遂行力(計画力)という3つの認知機能が低下することが分かっています。

そのため、3つの認知機能を意識して鍛えることにより、認知機能の低下を予防する効果があるとされています。

エピソード記憶

エピソード記憶とは、体験したこと(エピソード)を記憶し、思い出す力のことです。

エピソード記憶を鍛えるには、数日遅れで日記をつける、数日前の食事や服装を思い出すといった方法があります。

分割注意力

分割注意力とは、同時に複数の作業を行うときに、それぞれに適切に注意を配る力のことです。

分割注意力を鍛えるには、複数の家事を同時にこなす、人の話を聞きながら作業する、同時に複数のメニューを作るといった方法があります。

計画力

計画力とは、新しい物事に取り組むときに、段取りを考えて行動する力のことです。

計画力を鍛えるには、仕事の段取りを組む、旅行や買い物の計画を立てる、新しいことにチャレンジするといった方法があります。

認知症患者の数と人口に占める割合

厚生労働省は、65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人は、2012年時点で推計約462万人(約15%)いるという調査結果を発表しました。

また、2025年には、認知症患者が700万人を超えるという推計も発表しています。

つまり、認知症患者は、2012年から2025年までの13年でほぼ倍増すると考えられているのです。

認知症患者の数と割合の推移※グラフは、各年齢の認知症患者数が上昇すると仮定した場合の推計人数と割合

なお、軽度認知障害(MCI)の高齢者については、2012年時点で約400万人いると推計されていますが、2025年には約600万人に増加すると推計されています。

認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)

新オレンジプランとは、高齢化に伴う認知症患者の急激な増加への対策として、厚生労働省が指針として示した総合戦略です。

正式名称は、「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」です。

団塊の世代が75歳を超える2025年に向けて、「認知症の人が住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現する」ために策定されました。

新オレンジプランでは、7つの柱に沿って、総合的に施策を推進することとされています。

  1. 認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進
  2. 認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
  3. 若年性認知症施策の強化
  4. 認知症の人の介護者への支援
  5. 認知症を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進
  6. 認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進
  7. 認知症の人やその家族の視点の重視

新オレンジプランは、2017年7月に改訂されており、目標設定年度が新たに2020年末と定められた他、数値目標の変更や具体的な施策が示されています。

認知症と成年後見制度

認知症高齢者の権利や財産を保護する制度として、日本には成年後見制度が整備されています。

成年後見制度とは、精神上の障害によって判断能力が低下した人について、財産管理や身上監護を担う後見人を選任することにより、その財産や権利を保護するという制度です。

本人の判断能力が低下すると、詐欺被害に遭ったり、適切に財産管理できず日常生活に支障が出たり、介護・福祉・医療などの必要な契約が締結できなかったりするリスクが高くなります。

成年後見制度を利用することにより、家庭裁判所に選任された後見人が、本人が安心・安全に日常生活を送れるよう本人の財産を適切に管理するとともに、本人のために必要な契約を代わりに締結してくれます。

後見人による本人財産の使い込み、後見人への報酬の支払い、親族間で対立がある場合の対応など課題も散見される制度ではあります。

しかし、現在の日本において、認知症高齢者の権利や財産を法的に保護できる制度として成年後見制度以上のものはありません。

したがって、認知症高齢者と関わる家族や支援者としては、成年後見制度の概要は把握しておきたいものです。

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