免許更新の認知機能検査とは?テスト内容と採点は?点数が悪いと高齢者講習?

認知機能検査は、75歳以上の高齢者が運転免許を更新をする場合などに受ける認知機能の検査です。

以前から実施されていましたが、2017年3月12日に道路交通法が改正され、運転免許制度が変更されたことにより、75歳以上の高齢者の運転免許更新が以前よりも厳格になっています。

この記事では、免許更新時の認知機能検査の概要、テスト内容、採点基準について解説します。

認知機能検査とは

認知機能検査とは、75歳以上の高齢者が、①運転免許の更新や②一定の違反行為をした時に受検することが義務づけられている、認知機能を測定する検査です。

認知機能検査を受ける時期

認知機能検査の対象となるのは75歳の高齢者です。

認知機能検査を受けるのは、運転免許の更新時または一定の違反行為をした時です。

75歳以上の高齢者が運転免許を更新する時

運転免許証の更新期間が満了する6ヶ月前から、認知機能検査を受けることができます。

75歳以上の高齢者が一定の違反行為をした時

信号無視、一時不停止など一定の違反行為をした時は、通知書を受領してから1ヶ月以内に認知機能検査を受検することが義務付けられています。

認知機能検査が義務付けられた背景

日本においては、急速な高齢化に伴って、交通事故全体に占める高齢者による事故の割合が増加しています。

認知機能検査が義務付けられる前は、75歳以上の高齢者による死亡事故が10年間で約2倍にまで急増しており、その事故の中には、認知症が影響しているとされるものが少なからず報告されていました。

一方で、加齢に伴う視力、体力、判断力、記憶力の低下に関する研究や、認知症に関する研究が進み、その知識や情報が社会一般にも浸透するようになってきました。

こうした状況を踏まえて、75歳以上の高齢者について、運転免許の更新や一定の違反行為をしたときに、認知機能検査の受検が義務付けられるようになりました。

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運転免許制度変更後の認知機能検査

以前は、認知機能検査の結果が悪くても注意喚起でとどまっていました。

しかし、2017年3月12日の道路交通法改正による運転免許制度の変更の結果、より厳しい対応がとられるようになりました。

認知機能検査

認知機能検査の結果、「認知症のおそれ」または「認知機能低下のおそれ」があると判定された場合、長時間の高齢者講習受講や、臨時適性検査または診断書の提出を課されるようになりました。

また、認知症と診断された場合は、免許の取消しまたは免許停止の措置がとられます。

なお、一定の違反行為をした後、正当な理由がないのに受検期間内に受検しなかった場合も、免許の停止または取消しとなることがあります。

認知機能検査のテスト

認知機能検査の事前説明と準備、テスト内容について見ていきましょう。

認知機能検査の事前説明と準備

認知機能検査を受ける前に、以下の内容がアナウンスされます。

  • メガネ、補聴器など補助器具を使用する場合は着用すること
  • 携帯電話は電源をオフにするかマナーモードにすること
  • 時計を荷物の中にしまうこと
  • 検査の必要性
  • 検査の所要時間(30分程度)
  • 検査結果の通知方法
  • 検査用紙の表紙に氏名、生年月日、性別、運転頻度を記入すること
  • 受検に当たっての注意事項

認知機能検査のテスト内容

認知機能検査の内容は、大きく3つに分かれています。

  • 時間の見当識
  • 手がかり再生
  • 時計描写

時間の見当識(所要時間:3分程度)

時間の見当識とは、自分が置かれた状況における時間についての認識のことです。

回答する内容は、検査を受けた年月日、曜日、時間です。

  • 今年は何年ですか?
  • 今月は何月ですか?
  • 今日は何日ですか?
  • 今日は何曜日ですか?
  • 今は何時何分ですか?

時間の見当識は、認知症の初期段階から低下することが多く、他の認知機能検査でも必ず確認するものです。

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手がかり再生(所要時間:15分程度)

記憶力を確認するテストです。

記憶は、記憶する時間によって感覚記憶、短期記憶、長期記憶に分類されますが、手がかり再生で確認するのは、少し前の刺激を一時的に記憶しておく記憶(短期記憶)です。

テスト全体の点数の約60%が手がかり再生に配分されており、ここのでき次第でテスト結果が大きく変わります。

手がかり再生テストの流れは、以下のとおりです。

  1. テストの説明を受ける(1分)
  2. パネルを見てイラストを覚える(1枚の紙に4つの絵が描かれたパネルが合計4枚表示されるので、ヒントと一緒に1枚につき約1分間で覚えていく。4分)
  3. テストとは関係のない作業をこなす(試験管の指示に従って、数字が並んだ表の特定の数字を斜線で消す。2分)
  4. パネルに表示されていた絵を思い出す(ヒントなし。説明1分と回答時間3分)
  5. パネルに表示されていた絵を思い出す(「動物の絵がありました。何でしたか。」などとヒントあり。説明1分と回答時間3分)

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時計描写(2分程度)

アナログ時計の文字盤を描き、その中に指定された時刻を記入するテストです。

車の運転で必要になる空間認知能力や、構成能力、数の概念などを確認するための行います。

時計描写テストの流れは、以下のとおりです。

  1. アナログ時計を描く(円を描き、1から12までの数字を書き入れる。1分)
  2. 時計の針を描く(試験管の指示に従って、短針と長針を書き入れる。1分)

認知機能検査のテスト内容については、テストの概要、使用されるイラスト、解答用紙などが警察庁のホームページに公開されています。

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認知機能検査の採点

認知機能検査の採点は、以下の流れで行われます。

  1. 各テストの採点
  2. 総合点の算出
  3. 結果の判定

各テストの採点

認知機能検査の各テストの採点基準は、警察庁のホームページに掲載されています。

基準が細かく設定されていますが、一度は内容を確認しておきましょう。

総合点の算出

各テストの点数を以下の式に当てはめて、総合点を算出します。

  • 総合点(100点満点)=1.15×時間の見当識の点数(最大15点)+1.94×手がかり再生の点数(最大32点)+2.97×時計描写の点数(最大7点)

結果の判定

総合点によって受験者を、①記憶力・判断力が弱くなっている者(第1分類)、②記憶力・判断力が少し弱くなっている者(第2分類)、③判断力に心配のない者(第3分類)に分類します。

  • 総合点が49点以下:記憶力・判断力が弱くなっている者(第1分類、認知症のおそれ)
  • 総合点が49点以上76点未満:記憶力・判断力が少し弱くなっている者(第2分類、認知機能低下のおそれ)
  • 総合点が76点以上:判断力に心配のない者(第3分類、認知症・認知機能低下のおそれなし)

認知機能検査の結果

認知機能検査の結果については、①検査会場で即日通知されるか、②後日、結果通知書面が郵送で自宅へ届くことによって知ることができます。

検査の結果が第1分類(総合点が49点以下で認知症のおそれあり)または第2分類(総合点が49点以上76点未満で認知機能低下のおそれあり)の場合、長時間の高齢者講習、臨時適性検査、診断書の提出などが課されることになります。

また、認知症の診断を受けた場合は、聴聞などの手続の上で、免許取消しまたは停止の措置がとられます。

認知機能検査は受検回数に制限がないので、何度でも受検することができます。

なお、認知機能検査の結果は、個人情報として警察に管理されます。

認知機能検査の結果が第1分類(認知症のおそれ)だった場合

認知症の診断は、問診、身体検査、脳検査、脳画像診断検査、認知機能検査などの結果を総合して行われます。

認知症検査の結果が第1分類(認知症のおそれ)であっても、認知症だと確定したわけではありません。

しかし、「認知症のおそれ」があるという結果が出た以上、病院を受診して認知症を発症しているか否かを確認し、発症している場合は必要な治療を受けるようにしてください。

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参考:認知症検査について|警察庁Webサイト

認知機能検査と成年後見制度

認知機能検査の結果が第1分類(認知症のおそれ)または第2分類(認知機能低下のおそれあり)であった場合、運転だけでなく日常生活における様々な場面で支障が出る可能性があります。

その一つが財産管理です。

認知機能が低下すると適切に自分の財産を管理することが困難になり、詐欺被害に遭ったり、物盗られ妄想が始まったりして本人や家族の生活に支障が出る可能性が高くなります。

したがって、認知症と診断された場合や認知機能の低下を指摘された場合には、運転免許について検討するだけにとどまらず、本人の財産管理や身上監護についても考慮することになります。

本人の財産管理や身上監護を保護するための制度として、成年後見制度があります。

成年後見制度とは、精神上の障害によって判断能力が低下した人について後見などを開始し、その人について後見人を選任することによって財産や権利を保護する制度です。

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