成年後見人の仕事内容は?療養監護と財産管理、家庭裁判所への報告とは?

成年後見制度では、本人の財産や権利を守るために、家庭裁判所が成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)を選任します。

この記事では、成年後見人の仕事内容(身上監護、財産管理、家庭裁判所への報告)について解説します。

家庭裁判所の審判後、成年後見人の仕事が始まるまで

家庭裁判所が後見等開始の審判をしてから、成年後見人の仕事が始まるまでの流れは、以下のとおりです。

  1. 家庭裁判所の審判
  2. 審判書が申立人と成年後見人に郵送される
  3. 審判が確定
  4. 東京法務局へ後見登記の嘱託(依頼)
  5. 成年後見人として働き始める

1.家庭裁判所の審判

家庭裁判所は、成年後見の申立てがあった場合、必要な審理を行った上で審判を行います。

審判では、①本人について後見等が開始され、②成年後見人等が選任されます。

2、審判書が申立人と成年後見人に郵送される

審判書とは、審判の結果を記載した書類です。

申立人や成年後見人は、審判書を見て、本人に後見等が開始されたことや、誰が成年後見人に選任されたかを知ることになります。

3.審判が確定

家庭裁判所の審判は、その内容に不満がある場合は即時抗告(不服申立て)できることになっています。

即時抗告の期間は、成年後見人に審判書が届いてから2週間です。

この期間を経過すると、審判が確定します。

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4.東京法務局へ後見登記の嘱託(依頼)

審判が確定すると、審判の内容を東京法務局に登記する必要があります。

審判をした家庭裁判所が、東京法務局へ後見登記を嘱託(依頼)することにより、審判の内容が登記されます。

審判書が成年後見人に届いてから登記が完了するまでは、約1ヶ月間かかります。

登記が完了すると、成年後見人等が請求することにより、登記事項証明書が発行されるようになります。

登記事項証明とは、後見登記された事項を証明する書類です。

成年後見人が、本人に代わって法律行為を行う権限があることを証明するために活用することができます。

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5.成年後見人として働き始める

後見登記が完了すると、成年後見人として働き始めることになります。

審判が確定した時点で成年後見人に選任されているので、一部制限はあるものの、後見事務に取り組むことはできます。

しかし、本人に代わって預貯金口座の管理や各種契約などを行う場合、相手となる銀行や施設などから登記事項証明書の提出を求められることが多くなっています。

銀行や施設などによっては、家庭裁判所の審判書を提示することで手続に応じてくれることもありますが、その場合も、後日、登記事項証明書を提出するよう求められます。

そのため、後見登記が完了してから後見事務に取り組み始めるのが一般的です。

成年後見人の仕事内容(財産管理と身上監護)

成年後見人の仕事内容は、以下の2つに分類することができます。

  • 財産管理
  • 身上監護

成年後見人の仕事内容1:財産管理

財産管理とは、本人の現金、預貯金、不動産、有価証券、FX、ビットコインなどの管理、収入と支出の管理、確定申告や納税など税金の処理など、本人の財産を包括的に管理することです。

財産管理の基本は、投機的な運用は控え、元本が保証された安全な方法で財産を管理することです。

また、本人の財産や権利を保護することが成年後見制度の目的であり、原則、本人に不利な条件で財産を処分することや、成年後見人や本人の親族などへの贈与や貸付など、本人の利益に反する行為は認められていません。

本人の財産から支出できるのは、本人の生活費や施設費用、本人の借金の返済、本人の配偶者や子ども(扶養義務がある場合)の生活費、後見事務にかかる経費などです。

その他、親族や友人の慶弔に関する費用、制度利用前から本人が行っていた支出(孫へのお年玉、毎年の家族旅行の費用など)は、家庭裁判所が許可すれば本人の財産から支出することができます。

ただし、成年後見人の独断で不適切な支出を継続していると、後ほど家庭裁判所から指摘を受け、場合によっては後見人を解任されることもあります。

成年後見人の仕事内容2:身上監護

身上監護とは、医療、介護、施設入所に関する契約など、本人の生活についての法律行為を行うことです。

身上監護というと、本人の身の回りの世話を想像するかもしれませんが、後見事務として行う身上監護はあくまで法律行為であり、介護、家事、身の回りの世話などの事実行為は含まれていません。

なお、本人の財産の範囲内で、本人の収入と支出を適正に管理することは、財産管理でもあり、身上監護でもあります。

本人の身上監護が長期間にわたり、入院や手術など突発的な支出が発生することもあるため、中長期的かつ余裕を持った収支管理を行うことが重要です。

成年後見人の仕事内容(選任直後の具体的な仕事内容)

成年後見人に選任された後は、本人の財産管理や身上監護に関する事務を幅広く行うことになります。

  • 本人やその関係者と会う
  • 本人の財産や収支に関する資料の引き渡しを受ける
  • 銀行や施設への連絡
  • 登記事項証明書の申請、取得
  • 財産目録、収支予定表の作成
  • 家庭裁判所への報告

本人やその関係者と会う

成年後見人に選任されたら、まず、本人やその関係者と会い、今後について話し合うことになります。

本人以外に会う相手としては、後見開始前に本人の財産管理や身上監護をしていた親族や施設関係者などが考えられます。

本人が病気の場合は、主治医にも会って話を聞いておくと、本人の病状やその後の経過の見込みなどが分かり、中長期的な計画が立てやすくなります。

本人の財産や収支に関する資料の引き渡しを受ける

後見前に本人の財産管理や身上監護をしていた人から、本人の財産や収支に関する資料を引き渡してもらい、管理を始めます。

本人の印鑑も引き渡しを受けておきます。

銀行や施設への連絡

成年後見人に選任されたことを、本人に関わりがある銀行や入所施設、医療機関などに連絡しておきます。

直接訪問して担当者と会い、家庭裁判所の審判書を見せておくと、その後の手続や契約を円滑に進めることができます。

登記事項証明書の申請、取得

成年後見人として、本人に代わって手続や契約をするためには、登記事項証明書を提出する必要があります。

登記事項証明書は、家庭裁判所の審判書が届いてから約1ヶ月経過すれば、東京法務局や地方法務局で取得できます。

財産目録、収支予定表の作成

成年後見人は、審判の確定から1ヶ月以内に、家庭裁判所へ本人の財産と収支予定表を提出する義務があります。

本人の財産や収支に関する資料の引き渡しを受けたら、整理した上で財産目録と収支目録の作成に取りかかります。

家庭裁判所への報告

財産目録、収支目録、それらの記載を証明する資料を家庭裁判所に提出します。

詳しい内容は、次の項目で解説しています。

成年後見人の仕事内容(家庭裁判所への報告)

成年後見人は、本人の財産管理と身上監護を適正に行い、それを定期的に家庭裁判所へ報告する義務があります。

家庭裁判所への報告のタイミングは、以下のとおりです。

  • 成年後見人に選任された直後
  • 家庭裁判所の後見監督(家庭裁判所から求められた場合)
  • 重要な法律行為を行った場合

成年後見人に選任された直後

成年後見人は、家庭裁判所の審判が確定してから1ヶ月以内に、本人の財産を調査して財産目録を作成するとともに、本人の年間の収支予定を立て、資料を添付して家庭裁判所に報告する必要があります。

成年後見人は、選任直後の財産目録とそれに関する資料の提出が終わるまでは、急を要する要件以外の後見事務はできないことが、法律で定められています。

家庭裁判所の後見監督(家庭裁判所から求められた場合)

家庭裁判所の後見監督とは、成年後見人が適切に後見事務を行っているかどうかや、後見事務を行う上で支障はないかについて家庭裁判所が確認し、必要に応じて指導や助言をする手続です。

家庭裁判所は、定期的に後見監督を行うことにより、成年後見人の不正を防止し、不適切な後見事務の是正を図っています。

後見監督の時期は家庭裁判所が判断するため、6ヶ月ごとや1年ごとというように定期的に行われることもあれば、突然、後見監督の連絡が入ることもあります。

家庭裁判所から後見監督の連絡があった場合、成年後見人は、後見事務の報告書、財産目録、収支予定表、それらの書面の記載を証明する資料を家庭裁判所に提出する必要があります。

そのため、普段から本人に関する資料をこまめに整理し、いつでも提出できるように準備しておくことが求められます。

なお、家庭裁判所が成年後見監督人を選任した場合、成年後見監督人に報告することになります。

重要な法律行為を行った場合

本人に関する重要な法律行為を行い、本人の財産や生活が大きく変動する可能性がある場合は、家庭裁判所へ事前に連絡して許可をもらい、事後に資料を添付して報告する必要があります。

重要な法律行為の例としては、以下のような行為を挙げることができます。

  • 多額の預貯金の解約、預け替え、引き出し
  • 遺産分割の協議、調停、審判
  • 不動産の売却
  • 住所や入所施設の変更

これらの行為を成年後見人の独断で行い、事後報告もしくは報告せずにいた場合、家庭裁判所から指導を受けたり、成年後見人を解任されたりする可能性があります。

また、本人の財産を著しく損なった場合には損害を賠償しなければなりませんし、悪質な場合は業務上横領などで刑事告訴されることもあります。

不正があった場合

成年後見人による不正が明らかになった場合、家庭裁判所が成年後見人を解任し、新しい成年後見人を選任します。

その上で、新成年後見人が旧成年後見人に損害賠償を請求したり、刑事告訴したりすることになります。

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