認知症の帰宅願望とは?家に帰りたい原因と対応は?

認知症の人が「家に帰りたい」と訴えて家族などを困らせることがあります。

施設入所中の人やデイサービスを受けている人だけでなく、自宅にいる認知症の人が「家に帰りたい」と主張し、「家に帰る」と言い残して行方不明になることも珍しくありません。

この記事では、認知症の帰宅願望の概要、家に帰りたい原因、帰宅願望への対応について解説します。

認知症の帰宅願望とは

認知症の帰宅願望とは、認知症の周辺症状(BPSD)のひとつで、「家に帰りたい」と訴えることです。

認知症の中核症状や慣れない生活環境への不安やストレスによって起こる症状で、自宅に住んでいても、見当識障害の影響で自宅を自宅と認識できずに「家に帰りたい」と訴えることもあります。

また、実際に住んでいるところを出て行き、徘徊して保護されたり行方不明になったりするケースも後を絶ちません。

認知症の中核症状と周辺症状(BPSD)

認知症の症状は中核症状と周辺症状(BPSD)に大別されており、帰宅願望は周辺症状(BPSD)の一つとされています。

中核症状とは、認知症患者に共通して現れる進行性の症状です。

記憶障害、見当識障害、理解や判断力の障害、実行機能障害、失行・失語・失認識などが代表的な中核症状です。

周辺症状とは、中核症状と本人の性格、成育歴、生活環境などが絡み合って起こる症状です。

英語表記「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」を略してBPSDとも呼ばれます。

徘徊、抑うつ、せん妄、暴言・暴力、無気力、睡眠障害、介護の拒否など症状の幅が広く、人によって現れる症状が異なっています。

中核症状と異なり、生活環境の改善などによって症状が和らぐことがあります。

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帰宅願望と夕暮れ症候群

夕暮れ症候群とは、認知症の人が夕方頃に見せる諸症状のことです。

日中は落ち着いて過ごしていた人に、ソワソワして落ち着きが無くなる、イライラした様子を見せる、些細なことですぐ感情的になるなどの症状が現れます。

夕方というのは、夕食の準備、子どもの迎え、帰宅した子どもの世話、職場からの帰宅、買い物など一般家庭でも慌ただしい時間帯で、気持ちが落ち着かないものです。

夕暮れ症候群は、認知症の人が以前の記憶を思い出して慌ただしい気持ちになることで起こると考えられています。

夕暮れ症候群の症状の一つに「夕方頃になると家に帰りたいと訴える(帰宅願望)」があります。

認知症の帰宅願望の原因(家に帰りたい理由)

認知症の帰宅願望の主な原因は、以下のとおりです。

  • 見当識障害
  • 生活環境の不安やストレス
  • 不快な体験

帰宅願望の原因:場所の見当識障害

見当識障害とは、認知症の中核症状の一つで、現在の年月日、今いる場所、他人との関係性などが正しく認識できなくなる障害です。

見当識障害の主な症状は、現在の時間が分からなくなる時間の見当識障害、場所が分からなくなる場所の見当識障害、他人との関係性が分からなくなる人の見当識障害です。

場所の見当識が障害されると、自宅で生活していも自宅であることが認識できなくなります。

自宅と実家を混同して実家に帰ろうとすることもあります。

また、人の見当識が障害された結果、家族が家族であることを認識できずに居心地の悪さを感じ、「家族がいる家に帰りたい」と訴える人もいます。

「ここが自宅ですよ。」と伝えても納得が得られず、本人は帰宅願望を持ち続けることが多いものです。

帰宅願望の原因:生活環境の不安やストレス

転居や施設入所などで生活環境が変化することで帰宅願望が出ることがあります。

認知症の人は、変化に敏感な上に新しい環境に適応するのに時間がかかる傾向があり、生活環境が変化すると強い不安を感じます。

そのため、生活環境がガラッと変わると混乱し、住み慣れた家に帰りたい」と訴えるようになります。

また、自宅で生活していても、リフォームや模様替え、家族構成の変化などが原因で落ち着くことができなくなり、「家に帰りたい」という訴えが始まることがあります。

通い慣れたデイサービスなどでも同様です。

帰宅願望の原因:不快な体験

認知症の人にとって「家は安心して過ごすことができる場所」です。

そのため、自宅でも自宅以外の場所でも、不快な体験が続いて生活環境への不安が大きくなると、帰宅願望が現れる傾向があります。

例えば、自宅で生活していても、家族団らんの場に自分の居場所がなく、家族との会話も乏しい状況では、安心して過ごすことができないでしょう。

「家に帰りたい」という訴えには、「安心できる家に帰りたい」という意味が込められているのです。

帰宅願望への対応

帰宅願望の対応は、以下のとおりです。

  • 本人の話を聞き、気持ちを受け止める
  • 家を出たら、「帰ろう」と伝える
  • 本人の不安を和らげる
  • 居心地の良い環境を整える

本人の話を聞き、気持ちを受け止める

本人に何度も「家に帰りたい」と訴えられると、訴えられた人はしんどさや辛さを感じます。

特に、やむを得ない事情で本人を施設入所させた場合、後ろめたさや自責の念にかられ、どうしようもなくなって「家に帰ることはできない。」、「家では引き取れないから、今後もここで生活して」などと伝えてしまうことがあります。

しかし、家に帰れないことが分かった本人は、不安やストレスを募らせて、より一層強い帰宅願望を抱くことになります。

そのため、家に帰りたいという本人の気持ちを聞いて受け止めてあげましょう。

その上で「ちょっとお茶を飲もうか。」、「外が気持ちよさそうだから散歩に行こうか。」などと話を変えたり、本人が興味のあることに注意を向けさせたりしてください。

なお、本人を安心させるためであっても、「家に引き取る」、「近いうちに家で生活できるようになるよ。」などの嘘や曖昧な返事は禁物です。

本人との関係が悪化し、本人に不信感を植え付けることになってしまいます。

家を出たら、「帰ろう」と伝える

本人が、「家に帰りたい」と訴えて実際に住んでいるところを出て行った場合は、やさしい口調で「帰ろう」と伝えてあげましょう。

「どうして出て行ったの。」、「なぜ自分の家が分からないの。」などと問い詰めることは、本人を不安にさせてしまうので控えてください。

本人の不安を和らげる

場所の見当識障害以外の原因による帰宅願望は、本人の不安に根差していることが多いものです。

まずは、本人から「家に帰りたい理由」を詳しく聞き取り、本人の不安を和らげるような内容を伝えてあげましょう。

例えば、「夕食の準備をしないといけない。」、「窓を閉め忘れた。」などの理由であれば、「今日は私が作るから大丈夫。」、「窓は閉めておくよ。」などと伝えてあげることで、本人を安心させることができます。

施設入所中の本人は、入所理由が分からず混乱し、「家族に見捨てられた」と感じていることが少なくありません。

入所に至った経緯を本人が分かるように説明するとともに、頻繁に面会に来ることや、何かあればいつでも駆けつけることを伝えて安心させてあげましょう。

居心地の良い環境を整える

住んでいる場所の居心地の悪さから帰宅願望を訴える人は多く、できる限り居心地の良い環境を整える工夫をしてあげることも大切です。

自宅であれば、部屋のレイアウトを本人が好むものにする(模様替えする前の状態に戻す)、家族団らんの場に本人の居場所を確保する、家族がこまめに声掛けするなどの方法が考えられます。

施設入所しているのであれば、頻繁に面会に行く、外出や外泊に連れ出す、本人の好きなものを差し入れるなど、できるだけ孤独感や見捨てられ感を抱かずにすむ工夫をしてあげましょう。

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