認知症の介護拒否の原因と対応、改善策は?

認知症高齢者の中には、介護が必要な状態にもかかわらず、介護を拒否する人が少なからずいます。

介護拒否は、認知症の周辺症状(BPSD)の一つです。

お風呂に入ろうとしない、薬を飲むことを拒否する、着替えたがらない、一切口を利かないなど症状は一人ひとり違いますが、介護する人を悩ませる症状です。

この記事では、認知症の介護拒否の原因、対応、改善策について解説します。

認知症の介護拒否とは

介護拒否とは、介護が必要な認知症高齢者が、介護を嫌がって拒否する症状です。

その場の気分に左右されて拒否しているように見えることもありますが、介護拒否をするには本人なりの理由があり、介護拒否の原因が解消されると介護を受け入れてくれることもあります。

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介護拒否の原因

認知症高齢者による介護拒否の主な原因は、以下のとおりです。

  • 認知機能の低下
  • 生活環境やスタイルの変化
  • 自立心の高さと羞恥心
  • 自尊心
  • 体調が悪い

認知機能の低下

認知症を発症すると、記憶障害や見当識障害が出るようになります。

最近の出来事を記銘(脳にインプット)できなくなり、徐々に過去の記憶も障害されるとともに、時間、場所、人などの見当識が障害されていきます。

その結果、介護を受けることになった経緯、薬を飲む意味、ヘルパーの顔、デイサービスセンターの場所や中での過ごし方などを忘れたり正しく認識できなくなったりし、介護を拒否することがあります。

生活環境やスタイルの変化

施設入所したり、デイサービスやヘルパーなどを利用したりするようになると、従前とは生活環境や生活スタイルが変化することになります。

例えば、朝食を食べる習慣がなかったのに1日3食食べさせられるようになった、嫌いな物も食べさせられる、夜型の生活を送っていたのに起床時間や就寝時間を指示されるようになった、1日おきに入浴して湯船に浸かっていたのに毎日シャワーだけになったなどの変化が挙げられます。

住み慣れた環境を離れることや長年続けてきた生活スタイルを変えることは、多くの人にとって大きなストレスで、新しい状況に順応するまでには相当な時間がかかります。

そのため、新しい生活環境や生活スタイルに馴染めずに拒否をすることがあります。

自立心の高さと羞恥心

認知症を発症するまで自立した生活を送ってきた人は、他人から介護されることを嫌がる傾向があります。

他人に「情けない自分」をさらすことに抵抗を感じたり、自分のことが自分で出来ないことへのいら立ちや焦り、無力さを感じたりして、介護を拒否していると考えられます。

また、トイレや着替え、入浴場面を他人に見られることに羞恥心を抱く人も少なくありません。

自尊心

認知症を発症すると、記憶障害、見当識障害、判断力や理解力の低下などの影響により、それまで当たり前に出来ていたことがうまく出来なくなっていきます。

最初のうちは介護を受け入れていたけれど、介護する人の前で失敗体験を繰り返すうちに自尊心が低下し、これ以上自尊心が低下するのを防ぐために、徐々に介護を拒否するようになる人もいます。

例えば、介護する人の前で食べ物をボロボロとこぼす経験をするうちに、人前で食事をしたがらなくなり、食事の介助を拒否することがあります。

また、トイレの失敗を繰り返すうちに水分摂取を拒否して体調を崩すこともあります。

体調が悪い

認知症を発症すると、症状が進むにつれて、自分の気持ちや主張を言葉でうまく伝えることが難しくなります。

体調を崩しても言葉で伝えることができず、態度で示すしかありません。

例えば、体調を悪く食欲がない時に食事の介助を拒否し、熱っぽい時に入浴の介助を拒否することがあります。

その他、入れ歯の調子が悪い、口内炎ができて口の中が痛い、身体の節々が痛む、痔が悪化したなどが原因で介護を拒否することがあります。

介護拒否の内容と対応・改善策

介護拒否の主な内容は、以下のとおりです。

  • 食事
  • 排泄
  • 入浴
  • 着替え
  • 服薬
  • リハビリ

食事、排泄、入浴、着替えなど日常生活を送る上で欠かせない介護の一部または全部を拒否するため、介護する人を悩ませるだけでなく、本人の生活にも影響を及ぼしてしまいます。

そのため、介護拒否の内容に応じて原因を探り、本人が介護を拒否しなくても済むような対応を検討しなくてはなりません。

食事の介護拒否の対応・改善策

食事を拒否する場合、まず、本人の体調を確認しましょう。

体調不良による食欲不振の他、口内炎が悪化して口が痛い、入れ歯の調子が悪い、唇の端が切れたなどの原因で食事を嫌がっていることがあります。

この場合、体調が改善すれば食事を摂ることができるようになります。

口に入れた物をうまく飲み込めないことが原因で食事を拒否している場合、誤嚥のリスクが高いため、早急に病院を受診させてあげましょう。

認知症の症状が進行して箸、スプーン、フォークなどの使い方が分からなくなったり、食事を食事と認識できなくなったりしている場合は、介護する人が一緒に食事し、食べ方を見せてあげる方法が効果的です。

また、介護を受け始める前と後で食事の味付け、具材、量、時間、回数などが変化したことで食事を拒否する人もいるため、本人に食事を拒否する理由を尋ねたり、できるだけ従前の本人の食事に近い料理を作ったりしてみても良いでしょう。

排泄の介護拒否の対応・改善策

排泄の介護拒否の原因は、人前で排泄することへの羞恥心、自尊心の低下を防ごうとしている、加齢等の影響によって排便感覚がなくなっていることが挙げられます。

羞恥心や自尊心が原因の場合は、本人が納得するまで介護の必要性を説明し、根気強く対応してあげることが大切です。

無理強いすると余計に拒否するようになるため、注意してください。

尿意や便意を感じなくなっている場合、便が肌に付着したりおむつの中が蒸れたりする不快さは感じているので、それを指摘して介護を受ける気持ちを引き出してあげましょう。

入浴の介護拒否の対応・改善策

羞恥心が原因で入浴の介護を拒否する場合、家族が一緒に入浴することで拒否しなくなることがあります。

介護する人も服を脱いで一緒に入浴することで、羞恥心が和らぐのです。

また、入浴時間帯、回数、シャワーかかけ湯か、湯船に浸かるか否かなど、本人の従前の入浴スタイルにできるだけ近い方法で介助してあげることも大切です。

着替えの介護拒否の対応・改善策

認知症の症状が進んで認知機能が低下することにより、着替えをすることの意味を理解できなくなることがあります。

その結果、たとえ家族であっても、いきなり服を脱がそうとすると、本人は不安を感じて拒否します。

「洗濯するから新しい服に着替えましょうね。」、「外に出かけるからパジャマから服に着替えましょうね。」などと声をかけ、着替える理由を教えてあげることで、着替えを拒否しなくなることが多いものです。

服薬の介護拒否の対応・改善策

認知症の薬は勝手に中断すると症状が急速に進行するリスクがあります。

本人が服薬を拒否した場合、早急に医師と相談し、対応を検討してください。

食事や飲み物に薬を混ぜる方法もありますが、味が変わって食事を拒否したり、薬の効果が薄くなったりすることがあるため、事前に医師に相談してください。

リハビリの介護拒否の対応・改善策

認知機能の維持や身体機能の維持・回復のためのリハビリテーション療法も、本人にとっては実践する理由が分からず、苦痛の原因になることがあります。

まず、本人にリハビリの効果や楽しさをしっかり説明し、納得させてあげましょう。

リハビリを始めた後に拒否した時は、拒否の原因を聴き取り、原因を取り除いてあげるようにしてください。

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