成年後見人の仕事はいつまで?辞める場合の条件と手続は?解任もある?

成年後見人等は、一旦選任されると、当初の目的を達成しても仕事を続けることになっており、仕事を終えることができるのは、本人の死亡など特定の条件を満たした場合のみです。

この記事では、成年後見人の仕事の終了(本人の判断能力の回復、本人の死亡、成年後見人の辞任、成年後見人の解任)について解説します。

成年後見人の仕事はいつまで

成年後見制度の目的は本人の財産や権利の保護であり、その目的のために本人について後見等が開始され、成年後見人が選任されます。

そのため、例えば、遺産分割や不動産の処分などを目的として成年後見の申立てを行い、成年後見人がそれらの法律行為を終えたとしても、本人に代わって財産や権利の保護を行う必要性がある(本人の判断能力が低下している)限り、その後も後見事務は続きます。

成年後見人の仕事が終わる、または、成年後見人が交代するのは、以下の4つの場合のみです。

  1. 本人の判断能力の回復
  2. 本人の死亡
  3. 成年後見人の辞任
  4. 成年後見人の解任

関連記事

成年後見制度とは?わかりやすい説明と図で解説

1.本人の判断能力の回復

本人の判断能力が回復し、本人に代わって財産や権利の保護を行う必要がなくなった場合、家庭裁判所は後見開始の審判を取り消すことになります。

通常、家庭裁判所は、成年後見人から報告されて初めて本人の判断能力が回復したことを知りますが、知っただけでは後見開始の審判を取り消すことはできません。

成年後見人等から後見開始の審判の取消しの申立てがされ、審理に必要な書類等が提出された上で、取り消すかどうか判断することになります。

ただし、後見が開始されるのは、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力を欠く常況にある場合であり、完全に回復することはほとんどありません。

判断能力の回復の程度に合わせて、後見開始が取り消されて保佐が開始したり、保佐開始が取り消されて補助が開始したりするなど、類型の変更に留まる場合が多くなっています。

関連記事

認知症とは?原因と種類、症状、対応は?認知症のテストと予防は?

後見開始の審判を取消しの申立て

後見開始の審判の取消しの申立てができる人、申し立てる場所、申立てに必要な書類等は、以下のとおりです。

申立てができる人(申立権者)

  • 成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人、後見監督人、保佐監督人、補助監督人)
  • 本人
  • 本人の配偶者
  • 4親等内の親族等

申し立てる場所(管轄)

後見開始の審判をした家庭裁判所です。

申立てに必要な書類等

  • 申立書
  • 申立人と本人の戸籍謄本(提出済の戸籍謄本に変更がなければ不要)
  • 申立人と本人の住民票または戸籍附票(提出済のものに変更がなければ不要)
  • 診断書
  • 収入印紙:800円分
  • 郵便切手:約2000円分

申立書には、後見開始の審判の取消しを求める理由と具体的な事情を記載します。

診断書は、成年後見用の診断書を本人の主治医に渡し、本人の判断能力が回復したことが明確に分かるよう記載してもらいます。

家庭裁判所は、本人の判断能力について医師の診断書を見て判断するので、本人の判断能力の程度が曖昧だと、取消しが認められないこともあります。

後見開始の審判が取り消された場合

家庭裁判所によって後見開始の審判が取り消された場合は、後見が終了します。

成年後見人は、財産や収支を整理して家庭裁判所に報告し、それらに関する資料を本人に引き渡します。

後見開始は取り消されたものの類型の変更にとどまった場合は、引き続き保佐人または補助人として選任されることが多く、代理権や同意権の範囲内で事務を続けることになります。

2.本人の死亡による成年後見人の仕事の終了

本人が死亡した場合、本人について後見等が終了し、成年後見人が本人の財産や権利を保護する必要がなくなります。

本人が死亡した場合の成年後見人の仕事は、以下のとおりです。

  1. 本人の死亡を家庭裁判所へ報告
  2. 後見終了登記の申請
  3. 財産の清算
  4. 本人の財産を相続人へ引き渡す
  5. 家庭裁判所への終了報告

本人の死亡を家庭裁判所へ報告

成年後見人は、本人の死亡を知った時点ですぐ家庭裁判所に連絡し、速やかに本人の死亡診断書のコピーや除籍謄本を取得して提出します。

後見終了登記の申請

後見開始の審判があると、家庭裁判所が東京法務局の後見登記担当課へ後見登記の嘱託(依頼)し、後見登記がされています。

本人が死亡した場合は、成年後見人が東京法務局へ後見終了登記を申請する必要があります。

関連記事

成年後見登記制度とは?登記事項証明書の申請と手数料は?登記されていない証明は?

財産の清算

成年後見人として管理していた本人の財産を清算し、財産目録を作成します。

作成した財産目録は、本人の相続人へ引き継ぐとともに、家庭裁判所への終了報告時にも提出します。

本人の財産を相続人に引き渡す

清算手続が完了したら、本人の財産を相続人に引き渡します。

相続人の代表者と会い、財産目録と管理していた財産関係資料等を照合した上で、資料等を相続人に引渡し、引継書に相続人の住所と氏名を記入してもらい、押印してもらいます。

引継書は、家庭裁判所の窓口でもらうことができる他、裁判所のサイトからデータをダウンロードすることもできます。

家庭裁判所への終了報告の際に提出を求められるので、忘れないよう注意が必要です。

家庭裁判所への終了報告

本人の財産の清算結果と引継結果を家庭裁判所へ報告します。

終了報告は、本人の死亡日から2ヶ月以内に、以下の書類等を家庭裁判所に提出する方法によって行う必要があります。

  • 終了報告書
  • 引継書
  • 財産目録
  • 死亡診断書のコピーまたは除籍謄本(死亡時に提出している場合は不要)

終了報告書と引継書は、家庭裁判所の窓口でもらうことができる他、裁判所のサイトからデータをダウンロードすることもできます。

成年後見人の報酬付与について

成年後見人の報酬付与を求める場合は、報酬付与の申立てをして、家庭裁判所が決定した金額を本人の財産から引き出した上で、財産の清算や相続人への引継ぎを行います。

関連記事

成年後見人の報酬付与申立ての方法は?申立書・事情説明書の書き方、基準、相場は?

3.成年後見人の辞任

成年後見人は、正当な事由があり、家庭裁判所の許可した場合に限って、辞任することができます。

正当な事由とは、成年後見人自身の判断能力の低下、治療に長い期間を要する病気やケガ、遠方への転居など、後見事務を適切に行うことが困難になるような事情のことです。

成年後見人を辞める場合、家庭裁判所に「成年後年人の辞任」の申立てをします。

また、家庭裁判所からは、成年後見人を辞めた後の新しい成年後見人の候補者を挙げるよう促されるとともに、「成年後見人の選任」の申立てをするよう求められます。

成年後見人の辞任と選任の申立て

成年後見人辞任と選任の申立てができる人、申し立てる場所、申立てに必要な書類等は、以下のとおりです。

申立てができる人(申立権者)

成年後見人の辞任:成年後見人等

成年後見人の選任:成年後見人、本人、配偶者、4親等内の親族等

申し立てる場所(管轄)

後見開始の審判をした家庭裁判所です。

申立てに必要な書類等

  • 申立書
  • 本人の登記事項証明書
  • 申立人と本人の戸籍謄本(提出済の戸籍謄本に変更がなければ不要)
  • 申立人と本人の住民票または戸籍附票(提出済のものに変更がなければ不要)
  • 新しい成年後見人の候補者の住民票
  • 候補者事情説明書(候補者が作成)
  • 陳述書(候補者が作成)
  • 辞任を求める事情を記載した書面
  • 辞任を求める事情を証明する資料(医師の診断書など)
  • 親族の同意書
  • 財産目録と記載内容を証明する資料
  • 収入印紙:1600円分(辞任(800円)+選任(800円)=1600円)
  • 収入印紙(登記用):1400円(成年後見人に関する登記事項の変更にかかる費用)
  • 郵便切手:約2000円分

成年後見人の辞任が許可された場合

成年後見人の辞任が許可され、新しい成年後見人が選任された場合、管理していた本人の財産を整理して財産目録を作成し、財産関係資料等と一緒に新しい成年後見人に引き継ぎます。

4.成年後見人の解任

成年後見人に不正な行為、著しい不行跡、その他後見の任務に適さない事由がある場合、家庭裁判所が成年後見人の解任の審判をすることがあります。

  • 不正な行為:本人の財産の横領など
  • 著しい不行跡:本人の財産の投機的運用による減少、本人に不利な契約など
  • その他後見の任務に適さない事由:ずさんな財産管理、職務懈怠など

成年後見人の解任の手続は、本人、4親等内の親族、後見監督人などの申立てに加え、家庭裁判所が職権で行うこともあります。

解任と同時に新しい成年後見人も選任し、本人の財産や権利の保護に空白期間が生じないよう配慮されています。

また、不正な行為によって本人に損害を与えた場合は、それを賠償しなければならず、悪質な場合には業務上横領などで刑事告訴されることもあります。

成年後見人は、本人の財産や権利を保護する仕事であり、親族後見人が不正な行為に及んだ場合も、専門職後見人と同様、解任、損害賠償請求、刑事告訴の対象となります。

関連記事

成年後見制度の不正トラブル!件数や被害額、相談場所は?横領は弁護士が多い?

ピックアップ記事

  1. 認知症 離婚
    配偶者が認知症になると、介護負担、経済的困窮、夫婦関係の変化、老後の不安など様々な課題や問題が生じる…
  2. 認知症かなと思ったら,気づく,ポイント,チェック
    認知症を根治させる方法は見つかっていませんが、症状の進行を遅らせたり、日常生活の支障を和らげたりする…
  3. 障害者手帳 精神障害者保健福祉手帳 認知症
    認知症の人は、障害者手帳を取得することができます。 障害者手帳を取得していると、税金の控除・減免、…
  4. 認知症は、高齢者だけの病気ではなく、若いうちから発症することがあります。 65歳未満で発症した認知…
  5. 認知症カフェ
    認知症を発症すると、日常生活の様々な場面で支障が出て不安や焦りが募り、孤立しがちです。 また、認知…
  6. 新オレンジプラン 認知症施策推進総合戦略
    厚生労働省は、65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人が2012年時点で約462万人おり、20…
  7. 認知機能の減衰
    軽度認知障害(MCI)は、認知症予備軍やグレーゾーンと呼ばれる状態です。 放置すると症状が進行して…
  8. 認知症による物忘れと加齢による物忘れ
    認知症の主な症状の一つである記憶障害(物忘れ)は、加齢による物忘れと混同されやすいものです。 しか…
  9. 認知症の中核症状と周辺症状
    認知症の症状は、中核症状と周辺症状の2種類に分類されます。 認知症の中核症状と周辺症状は、起こる原…
  10. 認知症 基礎知識
    最近、認知症という名前はよく見聞きするようになりました。 しかし、認知症がどのような病気なのか、何…

特集記事

  1. 遺産分割 認知症

    認知症と遺産分割!相続人に認知症の人がいると成年後見人が必要?

    遺産分割は、亡くなった人(被相続人)の財産を相続人に移す法律行為であり、相続人には意思能力が備わって…
  2. 成年後見 申立て 申立人 申立費用 必要書類

    成年後見の申立て準備!申立人(申立権者)、申立費用、必要書類は?

    すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申…
  3. 成年後見 申立て 審判 鑑定

    成年後見の手続の流れ!申立てから面接調査、鑑定、審判までの期間は?

    すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申…
  4. 成年後見 審判 確定 後見人になれる人

    成年後見の手続の流れ!審判で後見人になれる人は?確定までの期間と登記は?

    すでに判断能力が低下した人(本人)の支援のために法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に成年後見の申…
  5. 成年後見登記制度 登記されていないことの証明書

    成年後見登記制度とは?登記事項証明書の申請と手数料は?登記されていない証明は?

    成年後見制度では、ある人が制度を利用しているかどうかについて、第三者が知ることができるよう登記の制度…
  6. 成年後見人 報酬 基準 相場

    成年後見人の報酬付与申立ての方法は?申立書・事情説明書の書き方、基準、相場は?

    成年後見人等は、本人の権利や財産を守るため、療養監護や財産管理の事務を行った報酬を受け取ることができ…
  7. 後見人 仕事 いつまで

    成年後見人の仕事はいつまで?辞める場合の条件と手続は?解任もある?

    成年後見人等は、一旦選任されると、当初の目的を達成しても仕事を続けることになっており、仕事を終えるこ…
  8. 後見 保佐 補助 呼び方

    成年後見監督人とは?職務と報酬、選任手続は?

    本人の親族等が成年後見人等に選任された場合、家庭裁判所が成年後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人…
  9. 成年後見人 仕事

    成年後見人の仕事内容は?療養監護と財産管理、家庭裁判所への報告とは?

    成年後見制度では、本人の財産や権利を守るために、家庭裁判所が成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人…

Facebookページ

ページ上部へ戻る