若年性認知症とは?初期症状・主な症状、原因は?年齢は20代から?

認知症は、高齢者だけの病気ではなく、若いうちから発症することがあります。

65歳未満で発症した認知症を若年性認知症といい、症状や原因は高齢者の認知症と同じですが、若いうちに発症することで仕事や家庭において様々な問題が生じます。

この記事では、若年性認知症の概要、好発年齢、原因、症状(初期症状と主な症状)について解説します。

若年性認知症とは

若年性認知症とは、65歳未満で発症した認知症のことです。

一般的に、認知症は高齢者の病気だと思われがちですが、実際は若いうちに発症することもあります。

しかし、物忘れがひどくなる、見当識が障害されるなど認知症の症状が出ていても、若さを理由に認知症を疑わず放置してしまいがちです。

また、認知症の専門医でないと、若年性認知症とうつ病をはじめとする精神疾患などを区別することが難しく、誤診や診断に時間を要することがあります。

そのため、若年性認知症の診断を受けた時には、すでに日常生活に深刻な支障を及ぼすレベルまで症状が進行していることが少なくありません。

若年性認知症の患者数と男女比

厚生労働省が2009年3月に発表した調査結果では、以下のとおりです。

  • 日本全国の若年性認知症の患者数:約3万7800人
  • 18~64歳人口における人口10万人あたりの患者数:47.6人
  • 男女比:男性の方が女性より多い

若年性認知症の好発年齢

若年性認知症の好発年齢は、40~60歳頃です。

厚生労働省が2009年3月に発表した調査結果では、推定発症年齢は平均51歳±9.8歳となっています。

年齢ごとの認知症有病率

年齢階層別(5歳ごと)の若年性認知症有病率は、以下のとおりです。

若年性認知症 有病率

出展:厚生労働省:若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について

推定ですが、10代や20代の頃から発症する可能性があることが分かります。

若年性認知症の原因

若年性認知症の原因疾患は、アルツハイマー病、脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)、レビー小体病、前頭側頭葉変性症など高齢者の認知症と同じです。

しかし、高齢者の認知症と比較して脳血管性障害とアルツハイマー病による発症が多く、また、頭部外傷の後遺症や多量のアルコール摂取など様々な原因で発症します。

若年性認知症 原因

出展:厚生労働省:若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について

若年性認知症の原因疾患のうち、上位3つについて見ておきましょう。

若年性認知症の原因1:脳血管障害(脳血管性認知症)

脳血管障害とは、病気やけがなどにより脳の血管が障害されて生じる病気の総称です。

脳血管障害によって起こる認知症を脳血管性認知症といいます。

認知症を引き起こす脳血管障害には、脳内出血やくも膜下出血などの脳出血、脳血栓や脳塞栓などの脳梗塞などがあり、これらの発作によって意識の低下、睡眠障害、麻痺、言語障害などの症状が現れます。

発作が治まった後も麻痺や言語障害などが残存する他、意欲の低下、記憶障害、注意力や集中力の低下などの症状が現れ、日常生活に支障を及ぼすようになります。

脳血管性認知症の治療では、原因疾患を治療して発作の再発を予防するとともに、リハビリテーションや生活習慣の改善に取り組むことになります。

若年性認知症の原因2:アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)

アルツハイマー病とは、高齢者の認知症の代表的な原因疾患です。

脳にアミロイドβというたんぱく質の塊(かたまり)が過剰に増えることで脳の神経細胞が壊れ、脳が委縮することで起こると考えられています。

なお、アルツハイマー病を原因とする若年性認知症は、ごく低確率ではあるものの遺伝により発症することがあります。

アルツハイマー型認知症の症状は、まず記憶障害からはじまり、見当識障害、実行機能障害、判断力の低下などが起こります。

初期の頃は仕事や家事に対する意欲が低下し、感情表出も乏しくなりますが、「疲れ」や「ストレス」が原因だと考えて放置してしまいがちです。

薬物療法と非薬物療法(リハビリテーション療法)を組み合わせて治療しますが、失われた認知機能を回復させたり症状をなくしたりすることはできず、症状の進行を遅らせるとともに、日常生活の支障を和らげるにとどまります。

若年性認知症の原因3:頭部外傷後遺症

頭部を強打するなどして脳が損傷し、後遺症として認知症を発症します。

頭部外傷は、交通事故、スポーツ中の事故、ケンカ、事件に巻き込まれるなど様々な原因によって起こり得ますが、損傷された部位によっては認知症を発症するリスクがあります。

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若年性認知症の症状

認知症の症状は、中核症状と周辺症状(BPSD)の2つに分けることができます。

若年性認知症の場合も、中核症状と周辺症状(BPSD)が現れます。

若年性認知症の中核症状

中核症状とは、脳が障害されることで起こる、認知症の人に必ず見られる症状です。

記憶障害

若年性認知症の初期から時期から見られるのが症状の一つが記憶障害です。

ほんの少し前にした約束を覚えておけなかったり、ずっと前から予定されていた大切な予定を忘れたりするようになります。

物忘れやいわゆる「ど忘れ」は「記憶しているけれど、うまく思い出せない状態」なので、ヒントを与えると思い出すことができます。

しかし、認知症の記憶障害は、約束や予定を入れたこと自体を忘れている(記憶できていない)ため、ヒントを与えられても思い出すことができず、周囲の人と話がかみ合いません。

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見当識障害

見当識とは、人、場所、時間、季節、年月日など自分が置かれた状況や自分のことを認識する力です。

記憶障害と同じく、若年性認知症の初期から障害されることが多くなっています。

例えば、年月日が分からなくなって書類の年月日欄に記入できなくなる、今いる場所が分からなくなって出張先から会社へ戻れなくなる、得意先の職員を認識できなくなり初対面であるかのように振る舞うなどの行動が見られることがあります。

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理解の障害

物事を理解するのにかかる時間が長くなります。

会議の内容が理解できない、電話で買い物を頼まれたけれど何をどこで買うのか覚えられないなど、日常生活の様々な場面で影響が出てきます。

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判断力の障害

理解力の低下とともに判断力も低下します。

例えば、散らかった部屋の片づけ方が分からなくなる、複数のメニューを同時に料理できなくなる、新しい場面に遭遇すると混乱する、お釣りの計算ができなくなるといった症状が現れます。

また、「外出の準備をして」と言われても何をして良いか分からなくなるなど、抽象的な表現を理解して実行することも困難になります。

実行機能障害

実行機能とは、計画を立て、計画に基づいて実行し、目的を達成することです。

実行機能が障害されることにより、例えば、献立を決めて必要な食材を買うことができなくなる、作り慣れた料理を失敗する、複数のメニューを同時に料理できなくなる、複数の家事を同時にこなせなくなるなどの症状が現れます。

失語・失認識・失行

症状が進行すると、失語(獲得した言葉をうまく使えなくなる)、失認識(五感で得た情報を正しく認識できなくなる)、失行(日常生活動作がうまくできなくなる)などの症状も現れます。

若年性認知症の周辺症状(BPSD)

周辺症状とは、中核症状やそれに伴う日常生活上の支障に、本人の性格、生活歴、周辺環境、他人との交流などが絡み合って生じる、行動の異常や精神症状です。

いわゆる二次症状ですが、家族や介護者にとっては中核症状よりも対応に苦慮することが多いものです。

不安

若年性認知症の人は、はっきりとした病識はなくても、記憶障害や見当識障害による失敗が重なり、当たり前にできていた仕事や家事がこなせなくなる現実を目の当たりにするうちに、「何となくおかしい。」という不安を感じるようになります。

しかし、不安を払しょくすることは困難で、引きこもる、抑うつ的になる、暴言や暴力で発散する、妄想に浸るなど、個人の性格や置かれた環境などによって様々な周辺症状を引き起こします。

幻覚

幻覚とは、実際には存在しない刺激を五感で知覚することです。

幻覚には、幻視(視覚)、幻聴(聴覚)、幻臭(嗅覚)、幻触(触覚)、幻味(味覚)などがあり、認知症の症状としては「そこにないもの」が見える幻視が多くなっています。

妄想

妄想とは、根拠のない誤った想像や信念、判断のことです。

認知症の症状として多いのは、大切な物が見当たらなくなった際に「誰かに盗まれた。」と妄想する物盗られ妄想です。

また、記憶障害などの影響で周囲の人と話がかみ合わなくなった状況について、「周囲の人が自分を陥れようとしている。」などと妄想することもあります。

暴言・暴行

感情をあらわにして暴言を吐く、暴力を振るうなどの症状が見られることもあります。

感情をコントロールする脳の部位が障害されることが主な原因と考えられています。

失語などの影響で不満や怒りを適切に表現できないことや、日々の不安や焦りを吐き出す先がないことが原因で、暴言や暴力に至ることもあります。

徘徊

徘徊とは、認知症の影響により、ウロウロと歩き回って帰ることができなくなる症状です。

若年性認知症の徘徊の原因は、妄想や幻覚によるものや場所の見当識障害によるものなど複数あります。

いずれの場合も本人は何らかの目的を持って徘徊していますが、目的地まで自力で辿り着くことはほぼなく、体調を崩したり、交通事故に遭ったり、行方不明になったりすることも少なくありません。

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若年性認知症と成年後見制度

若年性認知症を発症すると、本人が自身の財産管理や身上監護を行うことが困難になるため、家族やその他の人が本人を支援する必要が生じます。

成年後見制度とは、精神上の障害で判断能力が低下した人に後見人を選任し、本人の財産管理や身上監護を代わりに行わせることで財産や権利を保護する制度です。

後見人による本人財産の使い込みや後見人に対する報酬の発生など課題が残る制度ではありますが、判断能力が低下した本人の保護に有用なところも多く、本人の支援のために選択肢の一つとして検討することはできる制度です。

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