ユマニチュードの意味とは?基本は見る、話しかける、触れる、立つ?

認知症のケアでは、認知症の人との関係性がうまく築けず、暴言・暴行、介護の拒否などを経験することも珍しくありません。

ユマニチュードは、認知症の人との関係性を改善し、円滑にコミュニケーションができるようになるケア技法として注目されています。

この記事では、ユマニチュードとは、ユマニチュードの方法、効果、注意点について解説します。

ユマニチュードとは

ユマニチュードとは、フランス発祥のケア技法の一つです。

イヴ・ジネスト(Yves Gineste)とロゼット・マレスコッティ(Rosette Marescotti)という2人のフランス人が考案したケア技法で、世界各地の介護や医療の現場で実践されており、特に認知症の人のケアに有効だと言われています。

フランス発祥のケア方法で、フランス語では「humanitude」と表記し、「人間らしさ」という意味があります。

日本語ではユマニチュードと呼ばれます。

ユマニチュードの基本

ユマニチュードの基本は、認知症の有無によって人の価値が変わることはなく、認知症の人と介護者は平等であるという考え方です。

この考え方に基づいて、認知症の人を「患者」や「介護対象者」ではなく一人の人間として尊重し、同じ人間として向き合い、接します。

また、私たちが家族や親密な友人と会話する時のような、言葉だけでなく知覚(5感)や感情を交えた包括的なコミュニケーションを徹底します。

こうした関わりにより、認知症の人は、「介護されている。」ではなく、「人間として扱ってもらえている。」、「優しく接してくれている。」と感じることができます。

認知症の人は、はっきりとした病識はなくても、自分の心や身体の変化を敏感に感じ取り、不安や焦りを募らせます。

認知機能の低下によって思ったように行動や意思表示ができなくなり、不満やイライラも募らせていきます。

暴言・暴行、介護の拒否などの周辺症状(BPSD)は、中核症状や本人の性格・生活歴に加え、こうした不快な感情やストレスが影響しています。

そのため、介護者から大切にされ、人間らしく接してもらうことによって不快感が和らぐと、症状が落ち着いていくことがあります。

また、人間らしい振る舞いをしたい、人間らしい生活を続けたいという気持ちも出てきて、大切にしてくれる介護者を信頼して心を開き、それまで拒否していた介護などを受け入れるようになっていきます。

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ユマニチュードの基本

ユマニチュードでは、まず、ケア対象者(認知症の人)の評価を行います。

認知症の人が回復を目指す段階か、現在の機能の維持を目指す段階か、ターミナルケアをする段階か評価します。

その上で、以下の4つを基本を組み合わせた技法を駆使してケアを行います。

  • 見つめる
  • 話しかける
  • 触れる
  • 立つ(立位の援助)

見つめる

「目は口程に物を言う」という諺(ことわざ)のとおり、目は、相手に様々なメッセージを伝えます。

ユマニチュードにおける「見つめる」とは、認知症の人を見る方向、高さ、距離、時間などを意識し、相手にポジティブな印象を与える見つめ方をすることです。

例えば、「相手の目線の高さ」または「少し下」に目線を合わせて正面から顔を近づけることで、やさしさや正直さを伝えることができ、その状態で見つめると、親密さや愛情を伝えることができます。

一方で、相手を見下ろす、正面ではなく、横から見る、遠くからチラッと見るなどは、意識しているか否かに関わらず、認知症の人にネガティブな印象を与えます。

また、認知症の人の姿勢に応じて見つめ方を変えることも大切です。

  • ベッドで寝ている:顔の向きを確認して、なるべく遠くから視界に入り、相手の顔を見て近づく
  • 座っている:目線を同じ高さにして、相手の顔を見ながら近づく
  • 立っている:相手の前に出てから向きを変えて正面から近づき、目線を同じ高さに合わせる

話しかける

話しかけるという行為には、自分と相手の存在を確認する意味があります。

例えば、「こんにちは。今日も良い天気ですね。」と挨拶するだけでも、「私もあなたも、今、ここにいますよ。」ということを確認するメッセージになっています。

認知症の人が返事を返さなくても、発した言葉は相手の耳に達し、「あなたのことに気づいていますよ。」というメッセージは届いています。

言葉や行動で返事が返ってきたら、それがたとえ暴言であっても、言葉で返事をします。

やりとりをするうちに認知症の人の反応が増えていき、気持ちや感情を理解するきっかけになります。

会話が続かなくて黙ってしまう場合は、自分の行動を言語化して実況中継してみる方法(オーとフィードバック)が効果的です。

例えば、昼食の場面では、以下のようになります。

  • 「お昼になったからご飯を食べようね。」
  • 「今日は、お母さんの好きなそうめんを作ったよ。」
  • 「見て見て、そうめん持って来たよ。ちょっと作りすぎたかな。」
  • 「お皿とお箸と薬味を持って来たよ。」
  • 「そうめんを入れるよ。」
  • 「どう?おいしい?」
  • 「おいしいね。あ、もう少し薬味を入れようか。」

触れる

人は、誰かに触れてもらうことで安心します。

ただ触れれば良いのではありません。

「やさしく」、「穏やかに」、「ゆっくりと」、「撫でるように」、「そっと」など、生まれたての赤ちゃんに触れる時のキーワードを意識しながら触れるのがポイントです。

認知症の人に触れる面積が大きくなるように意識することも大切です。

「指でつつく」、「つまむ」などは、認知症の人に「汚いと思われている。」、「いやいや介護されている。」と思わせてしまうので控えましょう。

また、「触れる」と「つかむ」は明確に区別しなければなりません。

つかむという行為は、認知症の人に「攻撃されている」、「強制されている」、「連行される」など、ネガティブなことを連想させてしまい、恐怖や怒りを感じる原因となります。

触る順番は、他人から触られて抵抗の少ない場所(肩、腕、背中、ふくらはぎなど)をまず触り、それから敏感な部位に触れます。

立つ(立位の援助)

元気な人は、一日の多くを「立った状態」か「座った状態」で過ごしています。

しかし、認知症を発症すると、症状が進行するにつれて「寝た状態」で過ごす時間が増えていきます。

寝た状態で見えるのは天井や壁ばかりで、立体的な空間を認知する機会がグッと減ってしまい、空間を認識する機能が低下して、ますます寝て過ごす時間が長くなります。

座ったり立ったりすることで、空間を立体的に認知し、その分だけたくさんの情報が入ってきて、脳が活性化します。

立位の援助は、認知症の人の残存能力を考慮しながら、座ったり立ったりする時間を作ることを目指します。

必ずしも自力で立ち上がったり歩いたりする必要はなく、あくまで残存能力で無理なくできることを、自発的に行うように働きかけます。

ユマニチュードの注意点

ユマニチュードは、4つの基本技法だけが注目され、「見つめるだけ、触れるだけで認知症の人との関係が改善し、円滑なコミュニケーションがとれるようになる。」などと誤解されがちです。

しかし、ユマニチュードの核心は「認知症の人を大切に思う気持ち」であり、その気持ちを認知症の人に分かるかたちで伝えるためにテクニックを使います。

テクニックだけを使っても効果はなく、むしろ、うわべだけの接し方をしていると思われて関係性を悪化させてしまうこともあります。

また、気持ちを伝えるテクニックは、「見る」、「話しかける」、「触れる」、「立位の援助」という4つだけでなく、4つの基本の組み合わせなどで合計150を超えており、それらを認知症の人の状態や症状の進行度などに応じて臨機応変に使い分ける必要があります。

4つの基本だけを覚えて機械的に試してみても、思うような効果は上がりません。

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