認知症の幻覚症状とは?幻視や幻聴の対応、幻覚と錯覚の違いは?

認知症を発症すると、幻覚症状が現れることがあります。

幻覚は、レビー小体型認知症(幻視)やアルツハイマー型認知症(幻聴)に多い認知症の周辺症状(BPSD)の一つです。

この記事では、認知症による幻覚の原因、症状、対応、幻覚と錯覚の違いについて解説します。

認知症による幻覚とは

幻覚とは、現実には存在しない刺激を五感で知覚することです。

幻覚は、認知症の周辺症状(BPSD)の一つで、中核症状と本人の性格等に起因して起こります。

認知症の中核症状

中核症状とは、脳細胞が壊れることで起こる、ほとんどの認知症患者に見られる進行性の症状です。

認知症を発症すると、記憶障害、見当識障害、理解や判断力の障害、実行機能障害、失行・失語・失認識など、日常生活に必要な認知機能の多くが低下していきます。

認知症の周辺症状

周辺症状とは、中核症状に本人の性格や生活環境などが複雑に絡み合って生じる症状の総称です。

英語表記「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の頭文字を並べてBPSDとも呼ばれています。

徘徊、抑うつ、せん妄、暴言・暴力、無気力、睡眠障害、介護の拒否など幅広く、どの症状が現れるかは人によって異なっており、また、複数の症状が同時に現れることも珍しくありません。

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認知症による幻覚の特徴

幻覚には、幻視(視覚)、幻聴(聴覚)、幻臭(嗅覚)、幻触(触覚)、幻味(味覚)など種類がありますが、認知症の症状としては幻視が多く見られます。

認知症による幻視では、人、動物、物などを知覚することが多く、対象が動きや色を伴ったり、会話ができたりすることもあります。

例えば、本人が目の前の壁に亡くなった親を知覚し、会話を始めることがあります。

周囲からは「壁に向かって一人で話している」ように見えますが、本人は目の前の親と違和感なく会話を続けます。

幻覚と錯覚の違い

認知症の症状で幻覚と混同されやすいのが「錯覚」です。

錯覚とは、現実に存在する刺激を誤って知覚することです。

人や物を別の何かと見間違えたり、声や音を別の何かと聞き間違えたりする現象で、認知症の症状では錯視が多くなっています。

例えば、壁のシミが人の顔に見える、布団のしわがうじ虫に見えるなど、本人にとってネガティブな内容の錯視が見られる傾向があります。

幻覚が「現実に存在しない刺激を知覚する現象」なのに対し、錯覚は「現実に存在する刺激を誤って知覚する現象」で、この点が両者の違いです。

なお、錯覚は、認知症の症状の一つですが、加齢に伴う視力や認知機能の低下や注意力が低下した状態で起こることもあります。

幻覚と妄想

認知症の症状の一つ「妄想」も、幻覚と間違われることがあります。

妄想とは、客観的根拠がないのに確信を伴う、主観的で誤った信念や思い込みのことです。

認知症による妄想では、大事な物を盗まれたと訴える「物盗られ妄想」が有名です。

物盗られ妄想では、根拠なく現金や貴金属などが盗まれたと主張し、家族など周囲の人に疑いの目を向けてしまいます。

認知症の記憶障害は「行為そのもの」を忘れます。

そのため、例えば、自分で財布をしまい込んだ場合でも「しまい込んだこと」を忘れてしまい、「財布がない=誰かに取られた」と思い込むのです。

幻覚が続くと、存在しない刺激を現実のものと思い込み、幻覚に基づく妄想が始まることもあります。

例えば、家の中に見知らぬ人の幻覚が見えており、その人が財布や貴金属を盗んでいくと思い込むことなどが挙げられます。

認知症による幻覚の症状

認知症による幻覚で一番多いのは幻視ですが、幻聴、体感幻覚、幻味、幻臭などの症状が現れることもあります。

幻覚の症状:幻視

幻視とは、現実に存在しないものが見えることです。

レビー小体型認知症の人に多く見られる症状です。

例えば、見知らぬ人がジッと自分を見ている、死んだ親がベッドの上に座っている、壁を鼠が這いまわっている、布団の上にとぐろを巻いた蛇がいる、食事の上に虫がたかっている、床上浸水している、地面に物が吸い込まれるなどの幻視が報告されています。

幻視によって見えるものは人によって異なりますが、人、動物、虫などが知覚されやすく、多くの場合、動きや色を伴います。

人を知覚した場合、相手がはっきり特定できることもあれば、「顔がぼんやりしている」など特定できないこともあります。

しかし、いずれにしても本人は対象をはっきり知覚しており、驚くほどリアルな会話を始めて周囲を驚かせることも珍しくありません。

幻視が続く時間は、一瞬~数十分程度が一般的で、長期的に見え続けることは稀です。

幻覚の症状:幻聴

幻聴とは、現実に存在しない声や音が聞こえることです。

アルツハイマー型認知症の人に多い症状です。

例えば、「夜な夜な亡くなった妻の声が聞こえる」、「遠方に住む娘の声がした」など、具体的な声や音が聞こえます。

幻覚の症状:体感幻覚

体感幻覚とは、現実に存在しない刺激を皮膚などで感じ取ることです。

例えば、「触られている」、「冷たい」、「痛い」、「ミミズが背中をはい回っている」など現実に存在しない刺激を感じ取ることがあります。

また、不快な間隔を和らげようとして、身体をゆすったり、背中をかきむしったりする人も少なくありません。

幻覚の症状:幻味

幻味とは、口の中に何もないのに味を知覚することです。

「変な味」などと漠然とした訴えもあれば、「苦い」、「辛い」など具体的に表現されることもあります。

幻覚の症状:幻臭

幻臭とは、現実にはない臭いを知覚することです。

一般的に、不快な臭いを知覚することが多くなっています。

認知症による幻覚の原因

認知症による幻覚の主な原因は、以下のとおりです。

  • レビー小体型認知症
  • ストレスや不安感
  • 薬の副作用
  • 精神疾患

幻覚の原因:レビー小体型認知症

認知症を引き起こす病気や障害は複数ありますが、幻聴の症状が起こりやすいのはレビー小体型認知症です。

レビー小体型認知症とは、レビー小体というたんぱく質の塊が脳内に溜まることで起こる認知症です。

レビー小体型認知症を発症すると、初期から中期にかけて幻覚症状、特に、存在しないものを知覚する「幻視」の症状がよく現れます。

人や物とその動きを認知する機能や空間認識機能が低下することが原因と考えられています。

幻覚の原因:ストレスや不安感

私たちは、加齢による身体機能や認知機能の低下にストレスや不安感を抱くものです。

認知症の人は、明確な病識はないことが多いものの、「以前できたことができなくなった。」、「周囲の人と話がかみ合わなくなった。」などの変化を敏感に察知し、認知症ではない人よりもストレスや不安感を抱えやすいものです。

認知機能が通常よりも低下した状態で大きなストレスや不安を抱えると、幻覚が起こりやすくなると考えられています。

ただし、ストレスや不安と幻覚の関係について明確な根拠を示している研究結果は見当たらず、今後の研究が待たれるところです。

幻覚の原因:薬の副作用

薬の副作用として幻覚が生じることもあります。

幻覚を生じさせる薬には、パーキンソン病薬、三環系抗うつ剤、抗不安薬など、認知症の周辺症状の治療のために処方されるものもあります。

幻覚の原因:精神疾患

精神疾患がある場合も、幻覚が生じることがあります。

例えば、統合失調症では存在しない声が聞こえる幻聴の症状が高い確率で現れます。

認知症による幻覚の対応・対策

認知症による幻覚は、ストレスや不安に起因することが多いため、本人が安心して過ごせる環境を整備することが症状を和らげる対応・対策となります。

衣食住を安定させる、室内を明るくしておく、足元ランプを設置するなど、本人が過ごしやすい環境作りを目指しましょう。

また、本人の話にじっくり耳を傾けることも大切です。

話を聞いてもらうことで、本人は「大切にされている」と感じることができ、ストレスや不安を和らげることができるからです。

ただし、家庭内だけで幻覚症状を和らげるのは限界があり、幻覚が頻繁に起こる、幻覚により日常生活や他人とのコミュニケーションに支障が起こっている場合は、早めに医師に相談して適切な治療を受けられるようにしてあげましょう。

幻覚が見られる認知症の人への接し方

幻覚が見られる認知症の人には、頭ごなしに叱ったり間違いを指摘したりせず、まずは受容し、それから客観的な事実を確認することが大切です。

本人の主張を否定しない

周囲の人からすると明らかに幻覚でも、本人にとっては現実です。

本人の主張を頭ごなしに否定すると、本人がストレスを感じて様々な周辺症状が現れるきっかけになるリスクがあります。

幻覚の内容を聞いて受容する

幻覚症状は、肯定すると本人の思い込みが強化され、否定するとストレスを与えるリスクがあります。

本人から幻覚の内容を詳しく聞き取り、本人の気持ちや感情を受容した上で、客観的な事実を本人と一緒に確認することが大切です。

幻覚以外のことに注意を向ける

本人の幻覚症状を治まらせたい場合は、幻覚以外のことに注意を向けてあげる方法が効果的です。

話しかける、好きなことをさせるなど、本人の注意を幻覚から逸らす工夫をしてみましょう。

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