認知症の原因は?認知症の主な原因疾患の割合と症状、治療法は?

認知症は、何らかの原因で脳が障害されて認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態のことで、原因疾患によって種類分けされています。

認知症の原因疾患としてはアルツハイマー病が有名ですが、原因となる病気や障害は他にもたくさんあり、それぞれ症状や治療の方法が異なります。

この記事では、認知症の主な原因であるアルツハイマー病、脳血管障害、レビー小体病、前頭側頭葉変性症の原因、症状、治療法について解説します。

認知症の原因となる主な病気

認知症の原因となる主な病気は、以下のとおりです。

  • アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)
  • 脳血管障害(脳血管性認知症)
  • レビー小体型認知症(レビー小体型認知症)
  • 前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症)

認知症の原因疾患ごとの割合

認知症の原因となる主な病気の割合は、以下のとおりです。

認知症の原因となる主な病気

認知症の原因疾患の約60%がアルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、次いで脳血管障害(脳血管性認知症)が約20%、レビー小体病(レビー小体性認知症)が約10%で、この3つで認知症全体の約90%を占めています。

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アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)

アルツハイマー病は、認知症の原因の約60%を占める病気です。

DSM-5では、「アルツハイマー病による認知症またはアルツハイマー病による軽度認知障害」と名づけられていますが、日本では「アルツハイマー型認知症」、「アルツハイマー病」、「アルツハイマー」と呼ばれています。

※DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版):アメリカ精神医学会が出版する精神疾患や精神障害の分類マニュアル

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の原因

脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質の塊(かたまり)が増えて、脳の正常な神経細胞が年単位で緩やかに減少することで起こると考えられています。

アミロイドβは加齢によって増加しますが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病がリスクとなって、加齢による増加量を超えるレベルで増加し、アルツハイマー病の発症リスクが高まることが分かっています。

その他、特定の遺伝子を持つ人は発症頻度が高い、頭部外傷がアミロイドβを増加させるという研究結果も発表されています。

しかし、アミロイドβが脳内に溜まる原因が特定されているわけではありません。

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の症状

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の症状は、記憶障害からはじまります。

記憶には、記銘(刺激を情報として脳にインプットする)、保持(インプットされた情報を脳に保管する)、想起(インプットされた情報にアクセスして思い出す)という3段階があります。

また、記憶の内容や保持時間によって即時記憶(情報が入ってすぐに思い出す、他の情報に干渉されない記憶)、近似記憶(記銘後、数分から数日程度は脳内で保持した後に思い出す記憶)、遠隔記憶(記銘後、脳内に長時間蓄えられた後に思い出す記憶)の3つに分けることができます。

アルツハイマー病では記銘が障害されて情報が脳内に保持されないため、記憶の中でも近似記憶が特に障害されます。

つまり、経験したことを情報として脳にインプットできず、経験そのものを忘れてしまいます。

初期の頃は、近似記憶の障害による物忘れが顕著に見られ、記憶がないことを作り話でごまかそうとする「取り繕い反応」をする人もいます。

その後、緩やかながら確実に症状が進行し、見当識障害や実行機能障害、判断力の低下など記憶障害以外の認知機能も低下することになり、物盗られ妄想、徘徊、遠隔記憶の障害などが現れます。

さらに症状が進むと、言葉が少しずつ失われ、言葉の理解も難しくなって、会話ができなくなります。

また、歩行がおぼつかなくなり、嚥下障害が見られるようになるなど生活全般に介助が必要になっていきます。

アルツハイマー病の人の約50%が、発症から2~10年程度で寝たきりになり、やがて死に至ります。

アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)の治療

アルツハイマー病の治療は、薬物療法と非薬物療法(リハビリテーション療法)の組み合わせで行います。

日本においては、認知症の進行を遅らせる薬剤が4種類(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチン)認可されています。

いずれも認知症によって減少した神経細胞を回復または増加させることはできませんが、神経細胞が減少しても症状の進行を遅らせることができます。

認知症の進行具合や日常生活に支障を及ぼす症状の内容などによって使い分け、また、副作用を考慮する必要もあるので、医師の判断に従って、処方された薬を用法用量を守って使用することが大切です。

脳血管障害(脳血管性認知症)

脳血管障害とは、脳の血管が障害されることで起こる病気の総称です。

何らかの脳血管障害によって起こる認知症が、脳血管性認知症です。

脳血管障害は、一般的には脳卒中と呼ばれています。

認知症の原因となる病気のうち約20%が脳血管障害です。

脳血管障害(脳血管性認知症)の原因

認知症を起こす脳血管障害には、脳出血(くも膜下出血、脳内出血など)や脳梗塞(脳血栓、脳塞栓など)などがあり、その原因は様々です。

  • 脳出血の主な原因:過労、ストレス、アルコール、喫煙、塩分過多、肥満、運動不足、脳動脈瘤の破裂など
  • 脳梗塞の主な原因:脳血管に血栓が詰まる、脳の血管急性心筋梗塞、心筋症など

脳血管障害は、生活習慣病(糖尿病や高血圧など)が原因で起こることが多く、中でも高血圧は、脳血管性認知症を発症するリスクが高いことが分かっています。

いずれも50歳以降の男性の発症率が高くなっていますが、50歳未満や女性でも発症します。

脳血管障害(脳血管性認知症)の症状

脳血管性認知症は、脳血管障害をきっかけに発症することもありますが、本人も気づかない程度の小さな発作を繰り返すうちに徐々に症状が進行することも多いものです。

脳血管性認知症の症状は、脳のどの部位が障害されるかによって低下する機能が異なっており、健全な機能と障害された機能が混在するため、まだら認知症と呼ばれることがあります。

脳の前頭葉白質が障害されることが多く、その場合、実行機能障害、精神運動の遅れ、意欲の低下、抑うつ、感情失禁などの症状が現れます。

一般的に、初期段階では、意欲の低下や睡眠障害が現れる他、障害された脳の部位によって様々な特徴が現れます。

その後、発作が起こるたびに段階的に症状が重くなっていきます。

脳血管障害(脳血管性認知症)の治療

脳血管性認知症の治療は、認知症の原因となった脳血管障害の治療と再発防止が何より重要です。

脳血管障害の再発防止には、脳梗塞を予防する薬や血圧をコントロールする薬を服用するとともに、リハビリテーションや生活習慣の改善に取り組みます。

レビー小体病(レビー小体型認知症)

レビー小体病とは、脳内にレビー小体というたんぱく質の塊が溜まることで起こる病気です。

レビー小体病によって起こる認知症がレビー小体型認知症で、認知症の約10%を占めています。

レビー小体は、パーキンソン病の原因にもなることが分かっており、実際、レビー小体型認知症ではパーキンソン病を合併する確率が他の認知症より高くなっています。

レビー小体病(レビー小体型認知症)の原因

レビー小体病の原因は、レビー小体というたんぱく質の塊が脳内に溜まることですが、レビー小体が脳内に溜まる原因は明らかにされていません。

レビー小体が溜まる脳の部位によって、レビー小体病やパーキンソン病を発症し、2つの病気が合併することもあります。

なお、遺伝によってレビー小体病を発症することもありますが、ごくわずかです。

レビー小体病(レビー小体型認知症)の症状

レビー小体型認知症では、存在しないものが見えたり、目の前の人や物が実際とは全く別のものに見えたりする幻視や、それに伴う妄想や幻聴が起こります。

また、手の震える、動きが緩慢になる、転びやすくなるなどパーキンソン病に似た症状も現れます。

「会話による意思疎通ができると思ったら、少し後には、幻視に伴う妄想を口にし始めた。」というように、認知機能が短いスパンで悪化と改善を繰り返し、気分、態度、言動なども頻繁に変わります。

夢と同じ行動をする、夢を見ながら声を出すなど、睡眠時の行動に異常が見られることもあります。

レビー小体病(レビー小体型認知症)の治療

レビー小体型認知症の治療は、薬物療法が中心です。

認知症の薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が、症状の進行を遅らせるのに有効であるとされており、医師の判断で処方されます。

現在、日本では3種類のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が認可されていますが、レビー小体型認知症に適応されるのはドネペジル(商品名:アリセプト)のみです。

レビー小体型認知症は、薬に対して敏感に反応する性質があるため、本人の状態や症状を見ながら慎重に用量を調整する必要があります。

また、非定型抗精神病薬やパーキンソン病の薬を使用することもありますが、副作用によって幻覚などが起こるリスクもあり、医師による慎重な判断が求められています。

前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症)

前頭側頭葉変性症とは、前頭葉や側頭葉を中心に神経変性、萎縮をきたす病気です。

前頭葉とは、大脳の前方に位置する脳の約40%を占める部位で、意思や思考、感情のコントロールなどを担っており、理性的な行動や社会性に影響を及ぼしています。

側頭葉とは、大脳の両側面に位置する部位で、味覚や聴覚、記憶、判断力、感情などを担っています。

前頭側頭葉変性症は、難病指定を受けています。

前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症)の原因

前頭側頭葉変性症の原因は特定されていません。

前頭葉と側頭葉に限定して神経細胞が壊れることや、残った神経細胞にタウたんぱく、TDP-43、FUSなど異常なたんぱくが溜まっていることは分かっていますが、これらの変化が起こる原因は分かっていません。

前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症)の症状

前頭側頭葉変性症の症状は、大きく3つのタイプに分けることができます。

  • 前頭側頭型認知症
  • 意味性認知症
  • 進行性非流暢性失語

前頭側頭型認知症

自分や周りに興味関心を示さなくなり、自発性が低下します。

また、毎日決まったコースを歩く、同じ時間に必ず決まった行動をするなどの常同行動や、社会のルールや他人の目を気にせず欲求や気分のままに犯罪や暴言などを繰り返す反社会的行動が見られます。

意味性認知症

言葉の意味が理解できなくなることが一番大きな症状です。

具体的な症状としては、生年月日、氏名、師走など単語の意味が理解できなくなる語義失語、「七夕をしちゆう」、「正月をせいげつ」などと読み間違える表層性失読などが見られます。

聞いた言葉を復唱することはできますが、ヒントを出しても答えられず、言葉の意味や読み方を教えても初めて聞いたような反応を見せるのが特徴です。

進行性非流暢性失語

対人コミュニケーションのリズムとアクセントが障害されます。

その他

過食や濃い味付けを好むようになる、注意力の低下、刺激に対する過敏な反応や模倣、共感性の低下、発話量の減少と運動性の失語、筋力低下、認知機能障害、運動機能障害などの症状が見られることもあります。

前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症)の治療

前頭側頭葉変性症の治療では、根治療法は確立されていません。

明らかに症状を軽減させる薬は見つかっておらず、非薬物療法(リハビリテーション療法)によって、日常生活に大きな支障を及ぼしている症状を軽減させる対症療法が中心です。

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