成年後見制度の不正トラブル!件数や被害額、相談場所は?横領は弁護士が多い?

高齢化が進むにつれて、成年後見制度の利用者数も増加していますが、同時に成年後見人等による不正トラブルが相次いでいます。

この記事では、成年後見制度の不正トラブル(件数、被害額、不正をした人)や相談場所について解説します。

成年後見制度の利用者数

成年後見制度は、認知症高齢者など判断能力の低下した本人について支援する人を選ぶことで、その財産や保護を図る制度です。

2000年に開始された法務省管轄の制度ですが、家庭裁判所が、本人について後見等を開始して成年後見人等を選任するとともに、適切な後見事務がなされるよう監督も行うなど、制度運営の大部分を担っています。

裁判所が発表している「成年後見関係事件の概況」によると、成年後見制度の利用者数は2016年末時点で20万人を超えています。

成年後見制度 利用者数

成年後見制度のうち、利用者数が多いのは法定後見制度の後見類型ですが、同制度の保佐類型や補助類型、任意後見制度の利用者数も増加傾向にあります。

今後、高齢化が進むにつれて、さらに利用者が増加すると予想されています。

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後見人の不正トラブル

成年後見制度の利用者数が増える一方で、毎年、成年後見人等による不正トラブルが数多く明らかになっています。

成年後見制度の不正報告件数と被害額

成年後見制度に関する不正報告件数と被害額は、以下のとおりです。

後見人 不正 不祥事 件数 被害額

  • 2011年:不正報告件数(311件)、被害額(約33億円)
  • 2012年:不正報告件数(624件)、被害額(約48億円)
  • 2013年:不正報告件数(662件)、被害額(約45億円)
  • 2014年:不正報告件数(831件)、被害額(約57億円)
  • 2015年:不正報告件数(521件)、被害額(約30億円)

2011年から2015年までの期間だけでも3000件近い不正が明らかになり、210億円を超える被害が出ています。

なお、2016年は、不正報告件数が502件(うち専門職は30件)、被害額が約26億円(うち専門職は約9000万円)です。

2015年に比べると、不正報告件数も被害額も減っていますが、依然として不正は後を絶たず、被害額も巨額です。

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不正をするのは親族か、専門職か

2011年から2015年までの期間において明らかになった不正について、親族(専門職以外)と専門職(弁護士、司法書士など)で分けると、以下のとおりとなります。

  • 2011年:親族(305件)、専門職(6件)
  • 2012年:親族(606件)、専門職(18件)
  • 2013年:親族(648件)、専門職(14件)
  • 2014年:親族(809件)、専門職(22件)
  • 2015年:親族(484件)、専門職(37件)

成年後見制度の不正トラブルのうち、90%以上が、親族が成年後見人等に選任されたケースで起こっています。

一方で、件数は少ないものの、専門職が成年後見人等に選任された場合でも、不正トラブルは起こっています。

家庭裁判所が成年後見人等に選任する専門職は、弁護士、司法書士、社会福祉士などで、高い職業倫理が求められる職業ばかりですが、横領や使い込みなどの不正が後を絶ちません。

成年後見人等の解任件数

成年後見人等の不正トラブルは、家庭裁判所が、成年後見人等を職権で解任した件数にも表れています。

成年後見人 解任 件数

少し古いデータにはなりますが、制度開始時と比べると、家庭裁判所が成年後見人等を解任する件数は大きく増加しています。

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成年後見等の不正トラブルの内容

成年後見人等による不正で一番多いのは、本人の財産の使い込み(横領)です。

成年後見人等は、仕事として本人の財産を適切に管理・保護する義務があります。

しかし、本人の財産管理を続けるうちに、「本人の財産を自分の財産のように錯覚する」ようになり、使い込みが始まります。

本人の子が成年後見人等に選任されている場合、親の財産を「他人の財産」として管理する必要があるという感覚を持ちにくく、「親の金を子が自由に使って何が悪いのか。」「いずれは自分のものになる財産だ。」などと考えて、使い込みに及んでしまう傾向があります。

最初から本人の財産を使い込む目的で成年後見の申立てを行う人もいます。

専門職後見人の場合も、「本人の財産を自分の財産のように錯覚する」という点では親族後見人と同じです。

社会的地位や職業倫理など、親族後見人と比較すると不正を抑止できる要素は多いものの、一線を踏み外すと不正を繰り返してしまうこともあります。

成年後見人等の不正対策

家庭裁判所では、成年後見人等の不正を予防するとともに、被害を最小限に食い止めるための対策を講じています。

  • 定期的な後見監督
  • 報酬付与の審判申立ての促し
  • 後見監督人等の選任
  • 成年後見人等の解任
  • 専門職後見人の活用
  • 後見制度支援信託の利用活用

定期的な後見監督

家庭裁判所は、成年後見人等による後見事務が適切に行われているかどうかを定期的に確認しています。

これを後見監督といいます。

後見監督では、成年後見人等から、後見事務報告書、財産目録、収支予定表などの書面と、それらの記載を裏付ける資料を提出させることで、不正の有無を確認しています。

また、定期的に監督することで、成年後見人などが不正に及ぶのを抑止する効果が期待されています。

報酬付与の審判申立ての促し

成年後見制度では、家庭裁判所に対して後見事務に対する報酬付与の審判を申し立てることにより、家庭裁判所が決定した報酬額を本人の財産から支出できます。

通常、6ヶ月~1年ごとに成年後見人等が自ら申し立てを行いますが、長期間報酬付与の申立てがなされない場合、家庭裁判所が報酬付与の審判の申立てを促すことがあります。

報酬付与の申立てをする場合、後見監督と同様、本人の財産目録や収支予定表とそれらを裏付ける資料を提出する必要があるため、家庭裁判所が本人の財産や収支を確認することができ、不正行為発見の端緒とすることができます。

後見監督人などの選任

後見監督人等とは、成年後見人等の後見事務が適切に行われているかどうかを監督する仕事です。

成年後見人には成年後見監督人、保佐人には保佐監督人、補助人には補助監督人がそれぞれ選任されます。

後見監督人等は、成年後見人等から定期的に後見事務の報告をさせ、必要な助言や指導を与えるとともに、それらを家庭裁判所に報告します。

成年後年人等に不正が疑われる場合には家庭裁判所に報告することになっており、後見監督人等による報告で不正が明らかになる場合もあります。

後見監督人等の選任件数は、2005年には282件でしたが、2015年には4882件まで増加しています。

以前は、本人や成年後見人等の要望によって選任されていましたが、現在は、親族や専門職を問わず成年後見人等の不正を予防する目的で、家庭裁判所が職権で選任することが多くなっています。

成年後見人等の解任

家庭裁判所は、成年後見人等の不正が疑われる情報を得た場合、被害を最小限に食い止めるために、必要に応じて後見人の解任手続を行います。

解任まで至らなくても、不正が疑われる成年後見人等の財産管理権のみ剥奪することもあります。

不正への対処は、最優先事項として取り扱われており、不正発生時の事務フローや役割分担も作成されています。

専門職後見人の活用

成年後見人等の不正の90%以上が親族後見人によるものであることから、家庭裁判所は、以下の事情がある場合には、専門職後見人を積極的に選任しています。

  • 親族間に争いがある(候補者が他の親族と仲が悪いなど)
  • 本人の財産(流動資産)が多い
  • 本人の収支の変動が大きく、定期的に収支を確認する必要がある
  • 申立て時の情報のみでは、本人の財産が明らかでなく、調査が必要である
  • 申立て時に提出する財産目録や収支目録の記載から、候補者の財産管理能力に不安がある
  • 申立ての理由が重大な法律行為(生命保険金の受領、預貯金の解約、不動産の売買など)である
  • 本人と候補者との間で利益相反が生じる可能性がある(遺産分割協議など)
  • 本人と候補者との間に多額の金銭の貸し借りがある
  • 本人と候補者の家計が同一である
  • 本人と候補者が疎遠であった
  • 候補者が、本人の財産を、自分や親族のために使用することを希望している
  • 候補者が、本人の財産を投機的に運用したいと希望している
  • 候補者の健康状態が悪く、成年後見人等の職務遂行に不安がある
  • 候補者が多忙で、成年後見人等の職務遂行に不安がある
  • 候補者にはなっているが、実質は別の人が本人の財産管理等を行う予定がある

しかし、専門職後見人等による不正については、不正を起こした専門職が所属する団体と再発防止策を協議して対策が検討されているものの、不正は未だになくなりません。

また、今後ますます高齢者が増えていくと、専門職後見人の数が不足するという指摘もあります。

後見制度支援信託の活用

後見制度支援信託とは、本人の財産のうち、日常生活に必要な金銭を預貯金等として十分に確保した上で、残りの財産を信託銀行等に信託する制度です。

後見制度支援信託では、信託財産が元本保証されており、預金保険制度の対象にもなり、本人の財産を安全に管理することができます。

また、後見制度支援信託の利用を開始した後は、信託財産の払戻しや信託契約の解約には家庭裁判所の指示書が必要になるため、成年後見人等の不正を予防する方法としても注目されています。

なお、後見制度支援信託が利用できるのは法定後見制度の後見類型と未成年後見のみで、法定後見制度の保佐類型と補助類型、任意後見制度では利用できません。

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成年後見制度の不正トラブルの相談場所

成年後見人等の不正が疑われる場合は、本人の後見等開始の審判をした家庭裁判所に相談します。

相談を受けた家庭裁判所は、被害を最小限に食い止めるため、銀行等への出勤停止協力依頼、成年後見人等の解任、財産管理権の剥奪、新後見人の選任などの手続を行います。

また、悪質な不正の場合には、損害賠償請求や刑事告訴といった厳しい対処がなされることもあります。

まず成年後見人等に直接確認したいと思うかもしれませんが、不正の証拠を隠滅されたり、本人の財産を持って行方をくらましたりするといった可能性があるため、注意が必要です。

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